企業研究とは
企業研究とは、求職活動やビジネス提携において特定の企業について詳しく調査する活動です。この調査は、企業の事業内容、他社との違い、業界での立ち位置、動向など多岐にわたります。企業研究は自分の目指す方向性と企業がどれだけマッチしているかを見極める重要なステップとなります。
さらに、企業研究は企業のウェブサイトを訪れるだけでなく、SNSでの評判、従業員の口コミ、業界レポート、そしてメディアでの報道など、多角的に情報を収集することができます。そうして得られた情報は、面接での質問に対する答えを準備する際や、自分がその企業でどのように貢献できるかを考える際にも役立ちます。ここでは企業研究の目的と方法について見ていきましょう。
企業研究の目的
企業研究の目的は多岐にわたりますが、その核心は「最適な企業とのマッチングを実現すること」です。以下では、その主要な目的を5つ紹介します。
- 自分に合う企業を見つける
- 採用選考で有利になる
- 志望意欲を明確にする
- 自己分析との連動
- 将来ビジョンの明確化
①自分に合う企業を見つける
②採用選考で有利になる
③志望意欲を明確にする
④自己分析との連動
⑤将来ビジョンの明確化
企業の成長戦略やビジョンを理解することで、自分がその企業でどのようなキャリアを積むことができるのか、将来像を描く手助けになります。
そして企業研究は単なる前段階の作業ではなく、自分自身のキャリア形成において非常に重要なプロセスです。効率的かつ効果的に行うことで、よりよいキャリア選択が可能になります。
企業研究の方法
企業研究を行う際の方法には多くのポイントがあります。以下はその主要な方法を5つ紹介します。
- 企業研究シートを活用する
- 企業のホームページを閲覧する
- インターンシップ・1day仕事体験、会社説明会へ行く
- 企業情報が掲載された書籍を読む
- 業界地図を読む
企業研究シートを活用する
企業ごとに比較がしやすいように、企業研究シートを活用することが推奨されています。 企業シートのフォーマットは統一した方が会社間で比較がしやすいのでおすすめです。
- 売上高
- 売上成長率
- 営業利益
- 営業利益成長率
- 従業員数
- 平均年齢
- 給与
- 福利厚生
- 企業理念
- 事業内容
- 企業風土
などを見るとよいでしょう。
企業のホームページを閲覧する
インターンシップ・仕事体験、会社説明会へ行く
企業情報が掲載された書籍を読む
業界地図を読む
いくつかの出版社から「業界地図」と名付けられた書籍が出版されています。これらの資料は、特定の業界内で各企業がどのような位置にいるのかを把握する手助けとなります。志望する企業に関しては、競合他社との差別化も明らかにできるため、志望理由を整理する際にも有用です。
企業研究や求人選定を行うポイント
企業選びの基準を設ける
また、面接の際に企業側から企業選びの基準について聞かれることもあります。企業は自社の価値観と合うかを知るため、そして意欲を持って長く働けるか確かめるために企業選びの基準について質問をしてきます。具体的にどの業務に興味を持っているのか、どのように貢献できるのかを知りたいと考えています。
業界を研究する
業界研究は就職や転職活動において非常に重要なステップです。この研究を通じて、希望する業界の特性、市場規模、将来性などを理解することができます。最初は業界全体の概要を掴むことからはじめます。それから業界ごとの特長や事業内容を理解して、特に興味を持った業界についてより細かく情報を集めます。このステップで重要な要素となるのは、ビジネスモデル、市場規模、将来性です。ビジネスモデルを理解することでどのように利益を生むのか、その仕組みを明らかにします。そして業界の市場規模やターゲット層を把握し、業界の成長性や将来の展望を考慮します。
情報を多角的に収集する
目標を明確に設定することで効率的な情報収集を可能にします。例えば、面接で質の高い質問ができるようになることを目標に設定する、などが挙げられます。そして以下の3つの視点で多角的に情報を集めると、より効率的に情報収集ができるでしょう。
- 主体:対象の企業が発信している情報(例:企業HP、時事ネタ)
- 客体:対象企業に対する別視点での評価情報や競合の情報(例:転職サイトの口コミ)
- 俯瞰:業界・社会のトレンド(例:ビジネス系メディアの記事)
このように、多角的な視点から情報を集めることで、より深い理解と有用な質問を形成することが可能です。
同業他社を比較する
同業他社との比較は企業研究や求人選定において重要なステップです。まず、対象の企業が市場でどのような位置にいるのかを把握することができます。
これはその企業の強みや弱み、さらにはどのような人材を求めているかを明確にするために必要です。また、同業他社はしばしば採用競合となり、同じような人材を求めている場合が多いです。この採用競合を理解することで、より効果的な戦略を練ることが可能になります。
企業研究から志望動機を作成してみる
企業研究から志望動機を作成することは、自分がどのようなキャリアを築きたいのか、そしてその企業がそのキャリアにどのように貢献できるのかを明確にする重要なステップです。企業研究を通じて、企業のビジョン、ミッション、文化、製品やサービス、業績などについて深く理解することができます。
これらの情報は、志望動機を具体的かつ説得力のあるものにするための基盤となります。例えば、企業のビジョンに共感した場合、そのビジョンに貢献したいという点を志望動機として挙げることができます。また、企業が提供する製品やサービスに興味を持った場合、それに関わる仕事をしたいという志望動機につながります。さらには、企業文化や働き方に魅力を感じた場合、その環境で働きたいという強い動機になるでしょう。
このようにして作成した志望動機は、面接やエントリーシート、履歴書などで使用することができ、自分自身の考えや希望を明確に伝える手段となります。企業研究から志望動機を作成することで、自分自身のキャリアビジョンと企業の方向性が一致するかどうかを確認する貴重な機会にもなります。
最低限抑えておくべき企業情報のチェック項目
求人票
求人票(求人情報)は企業がどのような人材を求めているのか、どのような条件で働くのかといった基本的な情報が詰まっています。以下では求人票をチェックする際に最低限確認すべき項目をいくつか紹介します。
- 人材像: 企業がどのような人材を求めているのかを理解することで、自分がその要件に合致するかどうか、またどのようにアピールすればよいかが明確になります。
- 仕事内容: 仕事の具体的な内容を知ることで、自分がその業務に興味を持てるか、または適性があるかを判断できます。
- 必要なスキルや資格: これを確認することで、自分が持っているスキルや資格が求められているものと一致するか、またはこれから何を学ぶべきかが明確になります。
- 給与: 給与情報は生活設計をする上で非常に重要です。また、業界標準と比較して妥当な額かどうかもチェックしましょう。
- 勤務地と勤務時間: 通勤時間や勤務形態も働く上での大きな要素です。自分のライフスタイルに合ったものか確認が必要です。
- 福利厚生: 保険、退職金、休暇制度など、長期的に働く場合に重要な要素です。
これらの項目をしっかりと確認し、自分にとって働きやすい環境かどうかを判断することが、成功する就活の第一歩となります。
企業HP
企業の公式ホームページ(HP)は、その企業に関する多くの基本情報が掲載されている重要なリソースです。企業研究や求人選定の際には、以下のようなポイントを特に注意深くチェックすることが推奨されます。
- 企業のビジョン・ミッション:企業が目指している方向性や価値観が明示されている場合が多いです。これを理解することで、自分のキャリアビジョンと企業の方向性が合致するかを評価できます。
- 事業内容:どのような事業を展開しているのか、その規模や市場でのポジションなどを把握することが重要です。
- 採用情報:求人票とは別に、企業HPには独自の採用情報が掲載されている場合があります。これにより、求人票にはない詳細な情報を得られることがあります。
- ニュースリリース・ブログ:企業が発表するプレスリリースやブログは、最新の事業動向や業績などを知る手がかりになります。
- お問い合わせ・FAQ:よくある質問(FAQ)やお問い合わせフォームを通じて、自分が気になる点を直接企業に問い合わせることも可能です。
企業HPはその企業の「顔」です。しっかりと内容を確認し、自分が求める情報を得ることで、より確実な企業選定が可能になります。
新卒向け採用ページ
新卒向け採用ページは、企業が新卒者に対してどのような価値を提供しているのか、また、新卒者に何を求めているのかを理解するための重要な情報源です。以下は、新卒向け採用ページで特に確認しておくべき項目です。
- 採用プロセス:新卒採用の選考フロー、エントリー時期、選考ステップなどが明示されている場合が多いです。これを理解することで、選考に臨む準備が整います。
- 企業文化・働き方:企業の文化や働き方についての情報が掲載されている場合があります。これは、自分がその企業で働く場合の日常をイメージする上で役立ちます。
- 福利厚生・給与:福利厚生や給与に関する情報も、新卒者にとって非常に重要です。これにより、自分がどの程度の待遇を受けられるのかが明確になります。
- 育成・研修プログラム:新卒者に対する研修や育成プログラムがどのように行われているのかも確認ポイントです。これにより、自分がどのようにスキルを磨いていけるのかが見えてきます。
新卒向け採用ページをしっかりと確認することで、企業選定においてより明確な判断ができるようになります。また、新卒者が企業に入社する前に知っておくべき基本的な情報が集約されている場所なので、確認しておきましょう。
転職フェア
転職フェアは、求職者と企業が直接対話できるイベントの一つです。このフェアは、多くの企業がブースを設け、求職者がそれぞれの企業に直接質問や情報交換をする場となっています。参加者は、企業の採用担当者と直接対話できる貴重な機会を得られます。転職フェアは、求職者が自分に合った企業を見つけるため、また企業が優秀な人材を確保するための有用な場と言えるでしょう。
参考:日本最大級の転職フェア
企業見学
企業見学は企業の人事担当者を訪問し、企業の仕事内容、働き方、福利厚生、業界に関する話などを聞く機会です。この活動は業界研究や企業研究、自己分析に役立つものとされています。企業見学は、求人選定や企業研究において非常に有用な手段です。
そして、企業説明やオフィス案内の後には、質問タイムが設けられています。事前に用意した質問や、会社見学を通して出てきた質問ができるとよいです。企業見学のマナー、その日の流れ、持ち物などをしっかりと確認して、企業見学という貴重な機会を最大限活用しましょう。
口コミ
企業情報をチェックするツールとして、口コミは非常に重要な要素です。以下にその理由をいくつか挙げてみましょう。
- 信頼性の確認:企業が自分で発信する情報には限界があります。そのため、実際にその企業で働いている、または働いたことがある人々の意見や評価を参考にすることで、企業の信頼性をより正確に把握することができます。
- 企業文化の理解:口コミには、企業の文化や働き方、社員間の人間関係など、公式な情報では得られないようなリアルな情報が含まれている場合が多いです。これらの情報は、自分がその企業で働くことを考えたときに非常に重要です。
- 隠された問題点の発見:企業は自らの弱点や問題点を公にすることは少ないですが、口コミならではの匿名性によって、そういった情報が出てくることもあります。これにより、企業選びで後悔するリスクを減らすことができます。
口コミは企業研究において多角的な視点から企業を評価する上で非常に有用なツールです。ただし、口コミには個々の主観が色濃く反映されている場合も多いため、一つ一つの口コミを鵜呑みにするのではなく、多くの口コミを総合的に評価することが重要です。
会社四季報
会社四季報は、日本の企業に関する財務データや業績予測、経営者のコメントなど、多岐にわたる情報を提供しています。以下に、その重要性をいくつかのポイントで説明します。
- 財務状況の把握:会社四季報には企業の財務データが詳細に掲載されています。これにより、企業の健全性や成長性を数値で確認することができます。
- 業績予測と戦略:企業の将来に対する見通しや戦略も記載されています。これを参考にすることで、企業が目指している方向性を理解し、自分がその中でどのように貢献できるかを考えることができます。
- 経営者の考え:会社四季報には経営者のインタビューやコメントが掲載されている場合もあります。これにより、経営層の考えや企業文化をより深く理解することができます。
- 業界情報:会社四季報は企業だけでなく、業界全体の動向についても報じています。業界のトレンドや市場環境を把握することで、より効果的な企業研究が可能です。
以上のように、会社四季報は企業研究において多角的な視点から企業を評価するための重要な資料です。特に、財務データや業績予測は他の情報源ではなかなか手に入らない貴重な情報であり、これを基にした分析が企業選定において非常に有用です。
参考:会社四季報オンライン
ネットニュース
業界地図
業界地図は、各業界の勢力図を一覧で示したマップです。この地図を用いることで、業界の特性、市場規模、将来性などを一目で把握することが可能です。特に、就職や転職、投資、ビジネスにおいて、業界研究を行う際に非常に有用なツールとされています。また、業界ランキングで比較することも可能で、国内業界規模、自己資本比率、総合力、設備投資額など多角的な視点から業界を評価できます。
参考:業界地図デジタル
求人選定のコツ
自己分析を行う
多くの人が求人情報に目を通し企業の条件や福利厚生に注目する一方で、自分自身が何を求め、何ができるのかを明確にしていない場合があります。以下では、自己分析が必要な理由をいくつか挙げていきます。
- 適性と興味の確認: 自己分析を行うことで、自分がどのような仕事に興味を持ち、どのようなスキルや資質を持っているのかを理解することができます。これが明確になれば、その情報を基に適切な求人を選ぶことができます。
- キャリアビジョンの明確化: 長期的なキャリアパスを考慮することで、単に今が楽な仕事や高給与の仕事だけでなく、将来的に自分を成長させることができる仕事を選ぶことができます。
- 自分自身の価値を知る: 自己分析を通じて、自分自身の強みや弱み、価値観を明確にすることで、それを求人選定や面接でしっかりとアピールすることができます。
自己分析は求人選定において非常に有用なステップです。自分自身をよく理解し、それを基に求人を選定することで、より充実した職業生活を送ることができるでしょう。
就活・転職の軸を決める
就職活動や転職を考える際、多くの人が多数の求人情報に目を通します。しかし、情報量が多すぎると、どの求人が自分に合っているのか判断が難しくなることもあります。そこで重要なのが、就活や転職の「軸」をしっかりと決めることです。軸を自分の中にしっかり持つことによって、以下のような効果が期待できます。
- 方向性の明確化: 自分が何を重視するのか(例:給与、働き方、キャリア成長など)を明確にすることで、求人選定がスムーズになります。
- 効率的な情報収集: 軸が決まっていると、関連する求人情報だけに焦点を当てられるため、効率よく情報収集ができます。
- 後悔の防止: 自分自身で優先順位をつけ、それに基づいて求人を選ぶことで、後で「こんなはずじゃなかった」という後悔を減らすことができます。
軸をしっかりと決めることで、求人選定はより明確かつ効率的に行えます。このプロセスを通じて自分自身のキャリアに対するビジョンが明確になり、より適切な求人選定が可能になるでしょう。
軸を基に優先順位をつける
優先順位を明確にすることで、求人情報を効率よくフィルタリングし、自分に最も合った職を見つける確率が高まります。以下では、優先順位をつけるための具体的なステップをいくつか紹介します。
- 条件を整理する: まず、自分が現在の仕事でどのような条件があるのか、そして企業に何を求めるのかをリストアップします。
- 条件を具体化する: リストアップした条件を更に具体的な言葉や数値で表現します。例えば、年収が重要な場合、具体的な金額を記入します。
- 優先順位をつける: 最後に、これらの条件に優先順位をつけます。何が絶対条件で、何が譲れる条件なのかを明確にし、それに基づいて優先順位を設定します。
このようにして、自分自身の求める条件と優先順位を明確にすることで、求人選定がスムーズに行えるようになります。
基準に沿って求人を選定する
優先順位が決まったら、それに基づいて求人を選定します。自分が設定した基準と求人情報を照らし合わせます。例えば、地域が最も重要であれば、その地域に特化した求人サイトや情報を参考にすることが有用です。また、業種や職種が重要であれば、専門の求人サイトや紹介会社を利用すると良いでしょう。そして、基準に合致する求人が見つかった場合、さらに詳細な情報を確認します。これには、企業文化、福利厚生、昇給・昇格制度などが含まれます。基準に沿って求人を選定することで、後悔の少ない転職や就職が可能です。自分自身の基準をしっかりと設定し、それに基づいて行動することが成功の鍵となります。