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目次
1章 なぜエンゲージメントが重要?AIができること・人がすべきこと
この章で到達できるゴール
この章の目安学習時間:30分
- SNSにおけるエンゲージメントの重要性を、その定義や要素から他者に説明できるようになる
- 人の心を動かすコンテンツの4つの要素を理解し、自身の投稿分析に活かせるようになる
- コンテンツ制作の各段階で、AIに何を任せ、人間が何をすべきかを判断できるようになる
【1-1】エンゲージメントの正体と重要性
目安の学習時間:20分
エンゲージメントとは何か?
SNS運用において頻繁に耳にする「エンゲージメント」という言葉。具体的には何を指すのでしょうか?
エンゲージメントとは、SNSの投稿に対してユーザーが行う反応や関与の総称です。これには、以下のようなものが含まれます。
エンゲージメントとは、SNSの投稿に対してユーザーが行う反応や関与の総称です。これには、以下のようなものが含まれます。
- いいね(Like):投稿への共感や好意を示す最も手軽な反応です。
- コメント(Comment):投稿に対する意見や感想、質問などを書き込む行為です。
- シェア(Share)/ リポスト(Repost):投稿を自身のフォロワーにも共有する行為で、情報の拡散に繋がります。
- 保存(Save):後で見返したい、役立つ情報だと感じた投稿をブックマークする行為です。
- その他、プラットフォームによってはクリック数、インプレッション数(表示回数)、プロフィールへのアクセス数などもエンゲージメントの指標として扱われます。 重要語句:エンゲージメント
- SNSの投稿に対するユーザーの反応や関与の度合いを示す指標。
- 「婚約」や「約束」といった意味を持つ英単語 "engagement" が語源で、ユーザーとアカウント(またはブランド)との間の「深いつながり」や「関係性」を表します。
では、なぜこのエンゲージメント率が重要なのでしょうか?
主な理由は2つあります。
主な理由は2つあります。
-
アルゴリズムへの影響:
多くのSNSプラットフォームでは、エンゲージメント率が高い投稿を「質の高いコンテンツ」と判断し、より多くのユーザーのフィードに表示させる傾向があります(いわゆる「おすすめ」に載りやすくなる)。つまり、エンゲージメントを高めることは、投稿の露出を増やし、より多くの人に情報を届けるために不可欠です。 -
ファンの育成:
エンゲージメントは、単なる数字以上の意味を持ちます。コメントでのやり取りや、役立つ情報の提供を通じてユーザーとの良好な関係を築くことで、彼らは単なるフォロワーから熱心な「ファン」へと変わっていきます。ファンは、継続的にコンテンツを消費してくれるだけでなく、口コミで新たなファンを呼び込んでくれる可能性も秘めています。
主要なSNS(Instagram, X, TikTok)では、重視されるエンゲージメント指標やその特徴に少し違いがあります。
SNS |
主なエンゲージメント指標 |
特徴 |
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Instagram |
いいね、コメント、保存、シェア、ストーリーズリアクション(スタンプ、クイズ回答など)、プロフィールアクセス、ウェブサイトクリック |
ビジュアルコンテンツが中心。「保存」は特にアルゴリズムで重要視される傾向があり、ユーザーが後で見返したいと思う価値の高い情報と判断されやすいです。ストーリーズでのアンケートや質問スタンプなど、インタラクティブな機能を通じたエンゲージメントも活発です。 |
X (旧Twitter) |
いいね、リポスト(旧リツイート)、返信(リプライ)、引用リポスト、プロフィールクリック、リンククリック、投票参加 |
リアルタイム性と情報の拡散力が特徴。リポストや引用リポストによる情報の拡散、返信を通じたユーザー間のコミュニケーションが活発に行われます。速報性のある情報や意見交換に適しています。 |
TikTok |
いいね、コメント、シェア、保存、フォロー、平均視聴時間、動画の視聴完了率、デュエット/リミックス作成 |
ショート動画プラットフォームであり、ユーザーがどれだけ動画に没入したかを示す指標(平均視聴時間、視聴完了率)が非常に重要です。「おすすめ」フィードのアルゴリズムは、これらの指標に基づいてパーソナライズされたコンテンツを強力に推薦します。 |
人の心を動かす4つのコンテンツ要素
エンゲージメントを高めるためには、ユーザーの「心を動かす」コンテンツを作成することが重要です。では、具体的にどのような要素が人の心を動かすのでしょうか?ここでは代表的な4つの要素を紹介します。
これらの4つの要素は、単独で使われることもあれば、組み合わせて使われることもあります。例えば、「共感できる悩み」を提示し(共感)、その「意外な解決策」を紹介し(興味・価値提供)、「試してみてね」と促す(行動喚起)といった流れです。
考えてみよう!
問題:
最近「いいね!」や「保存」をしたSNS投稿を思い出してみてください。それは「人の心を動かす4つの要素」のうち、どれに当てはまりましたか? 複数当てはまる場合は、特に強く感じた要素を考えてみましょう。
最近「いいね!」や「保存」をしたSNS投稿を思い出してみてください。それは「人の心を動かす4つの要素」のうち、どれに当てはまりましたか? 複数当てはまる場合は、特に強く感じた要素を考えてみましょう。
解答例:
- 〇〇さんの料理動画を保存した。作り方が分かりやすく、自分でも作れそうだと思ったから「価値提供」に当てはまる。動画の冒頭で「レンジだけで作れる時短レシピ!」と紹介されていて「興味・好奇心」も刺激された。
- 友人が投稿したペットの写真に「いいね!」した。可愛い姿に癒やされたので「共感」が強い。コメントで「うちの子も同じ寝方します!」と書いたら、友人と会話が弾んだ。
【1-2】(復習)コンテンツ制作におけるAIの役割分担
目安の学習時間:10分
テキスト生成AIは、SNSコンテンツ制作において非常に強力なアシスタントとなります。しかし、AIにも得意なことと不得意なことがあります。AIと人間の役割をうまく分担することで、より効率的かつ効果的なコンテンツ制作が可能になります。教材0の1章でも触れた内容ですが、本セクションでもう一度確認しましょう。
AIが得意なこと:アイデアの壁打ちと効率化
AIは、特に以下のようなタスクでその能力を発揮します。
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アイデアの大量生成(ブレインストーミング):
特定のテーマやキーワードに基づき、多様な切り口の投稿アイデアやキャッチコピー案を短時間で大量に生み出すことができます。人間だけでは思いつかないような斬新な視点を提供してくれることもあります。 -
投稿文の骨子作成と複数パターン展開:
伝えたい内容の要点を指示すれば、それを基にした投稿文の骨子(基本的な構成)を作成したり、同じ内容でも異なる表現やトーンの文章を複数パターン生成したりできます。 -
定型的な文章(リプライなど)の自動生成:
よくある質問への回答や、感謝のメッセージなど、ある程度パターン化できるコメント返信文案の作成を効率化できます。 -
データに基づく客観的な分析補助:
(本教材の範囲外ですが)将来的には、大量のテキストデータからキーワードのトレンドを抽出したり、コメントの感情を分析したりするなど、データに基づいた客観的な示唆を得る手助けも期待されます。
人間にしかできないこと:戦略的意思決定と最終判断
一方で、以下のようなタスクは、依然として人間の判断や感性が不可欠です。
-
ブランドの世界観(トンマナ)の最終的な維持:
AIは指示されたトーン&マナーをある程度模倣できますが、ブランドが持つ独自の雰囲気や価値観、細かなニュアンスを完全に理解し、表現することはまだ難しい場合があります。最終的な調整は人間が行う必要があります。 -
ターゲットの深いインサイトに基づいた共感の創造:
ターゲットユーザーが抱える真の悩みや願望を深く理解し、心に響く言葉で共感を呼ぶコンテンツを生み出すには、人間の洞察力や経験が重要です。 -
炎上リスクなど、文脈を読んだ繊細なニュアンスの判断:
AIが生成した文章が、意図せず誤解を招いたり、特定の層を不快にさせたりする可能性がないか、社会的な文脈や倫理観に基づいて判断するのは人間の重要な役割です。 -
どのAI生成案を採用するかの戦略的な意思決定:
AIが複数の案を出してきた場合、どの案が最も目的に合致し、効果的かを判断するのは人間です。SNS運用の戦略全体を見据えた上での意思決定が求められます。
AIはあくまで強力な「ツール」です。最終的なコンテンツの質と成果に責任を持つのは人間であるという意識を持ち、AIを賢く活用していくことが重要です。
【1-3】1章 -章末課題- [AI活用プランニング]
問題
ある地域密着型のパン屋さんのSNS運用担当者になったと仮定します。店長から「もっと多くの若い女性に新商品の『自家製フルーツサンド』を知ってもらい、お店に来てほしい」と相談されました。
この章で学んだ「人の心を動かす4つの要素」と「AIと人間の役割分担」を踏まえ、どのようなコンテンツを作るか、そしてAIをどのように活用するかの簡単なプランを立ててみてください。
この章で学んだ「人の心を動かす4つの要素」と「AIと人間の役割分担」を踏まえ、どのようなコンテンツを作るか、そしてAIをどのように活用するかの簡単なプランを立ててみてください。
解答例
-
コンテンツの方向性(人の心を動かす4つの要素を意識):
-
共感:
- フルーツサンドの断面の美しさや、作っている過程の楽しそうな様子、シズル感のある動画や写真で「食べたい!」「可愛い!」という気持ちを引き出す。
- 「頑張った自分へのご褒美に」「休日の楽しみに」といった、ターゲットが共感しやすい利用シーンを提案する。
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興味・好奇心:
- 「〇〇農園直送のシャインマスカット使用!」など、季節限定の特別なフルーツを使っていることをアピールし、「今しか食べられない」という特別感を出す。
- 「実はパンにも秘密が…?」など、隠れたこだわりを小出しにして興味を引く。
-
価値提供:
- 使っているパンや自家製クリームへのこだわり(例:北海道産生クリーム100%)、フルーツの鮮度管理について語り、商品の質の高さを伝える。
- 「美味しいフルーツサンドの見分け方3つのポイント」など、お役立ち情報を発信する。
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行動喚起(CTA):
- 「週末限定発売です!ご予約はお早めに」「お取り置きはDMまたはお電話でどうぞ!」など、具体的な来店や予約を促す言葉を入れる。
- 「フルーツサンドと一緒に買うとドリンク50円引き」といったセット購入を促すキャンペーンを告知する。
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共感:
-
AIの活用プラン(AIと人間の役割分担):
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AIに任せること(効率化・アイデア支援):
- 上記の4つの要素を盛り込んだInstagram投稿文のキャッチコピー案や本文案を複数パターン生成させる。
- 例:「『自家製フルーツサンド』の魅力を若い女性に伝える投稿文を5パターン作ってください。共感、興味、価値提供、行動喚起の要素を入れてください。」
- 関連性の高いハッシュタグ案(例:#フルーツサンド #パン屋巡り #カフェスタグラム #〇〇市グルメ #自分へのご褒美スイーツ など)をリストアップさせる。
- フルーツサンドの魅力を伝えるショート動画の簡単な構成案(冒頭のフック、紹介ポイント、BGM候補など)を出してもらう。
- 上記の4つの要素を盛り込んだInstagram投稿文のキャッチコピー案や本文案を複数パターン生成させる。
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人が判断し、行うこと(戦略・最終判断・創造):
- AIが生成した複数の投稿文案の中から、お店の温かい雰囲気やブランドイメージに最も合う言葉を選び、最終的な文章として編集・仕上げる。特に、ターゲットである若い女性に響くような言葉遣いや絵文字の使い方は人が調整する。
- 投稿に使用する写真や動画は、実際に最も美味しそうに見えるもの、お店の雰囲気が伝わるものを人間が選定・撮影・編集する。
- AIが出したハッシュタグ案を参考にしつつ、実際に効果の高そうなものを人間が最終選定する。
- 顧客からのコメントやDMには、AIが生成した返信文案を参考にしつつも、一人ひとりに寄り添った温かみのある言葉で人間が対応する。
- 全体的なキャンペーンの企画(例:フルーツサンドフォトコンテストなど)は人間が主体となって立案する。
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AIに任せること(効率化・アイデア支援):
これで「1章 なぜエンゲージメントが重要?AIができること・人がすべきこと」の解説を終わります。次の章に進みましょう。