教材1 AI×Web制作 基礎概論
1章 AI時代のWeb制作者サバイバル術
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目次

1章 AI時代のWeb制作者サバイバル術

この章の目安学習時間:50分

この章で到達できるゴール:

  • AIの登場によってWeb制作者の仕事がどのように変化したかを理解できる。
  • AI時代に市場価値の高いWeb制作者になるために、どのようなスキルが必要かを説明できる。

【1-1】AIの登場でWeb制作はこう変わった!

目安の学習時間:20分

もう戻れない?AI登場「前」のWeb制作

数年前まで、Webサイト制作は多くの時間と労力を要する作業の連続でした。
従来のWeb制作フローを振り返ってみましょう。
  • ヒアリング・要件定義:クライアントの要望を整理し、サイトの目的を明確にする。
  • 設計:サイトマップやワイヤーフレームを作成し、ページの構造を決める。
  • デザイン:配色やレイアウトを考え、デザインカンプを作成する。
  • コーディング:HTML、CSS、JavaScriptを記述し、デザインをブラウザで表示できるようにする。
  • テスト:様々なブラウザやデバイスで表示崩れやエラーがないか確認する。
  • 公開・運用:サーバーにファイルをアップロードし、公開後のメンテナンスを行う。
これらの各工程には、多くの「単純作業」や「調べ物」が潜んでいました。
例えば、コーディング中の閉じタグの確認、ブラウザごとのCSSの挙動の違いの調査、お客様に提案する文章の作成など、一つ一つは小さくても積み重なると膨大な時間になります。
これらが、私たちの創造的な時間を奪っていたのです。
かつてのボトルネック
  • 単純なコードの繰り返し入力
  • エラーの原因究明のための長時間にわたる調査
  • 競合サイトの構成やデザインの広範なリサーチ
  • キャッチコピーや説明文など、テキストコンテンツの作成

これらの作業が、制作スピードとコストに大きく影響していました。

AI登場「後」のWeb制作と制作者の役割

AIの登場は、Web制作の風景を一変させました。特に生成AIは、私たちの作業を劇的に効率化してくれます。

まず、AIの得意なことと苦手なことを理解しておくことが重要です。
AIが得意なこと
AIが苦手なこと
具体例
  • コード生成・補完
  • 文章や画像の生成
  • データ分析・整理
  • 単純なパターンの繰り返し
  • クライアントの抽象的な想いの汲み取り
  • 0から1を生み出す独創的な発想
  • 倫理的・道徳的な判断
  • 最終的な品質への責任
この特性を理解すると、これからのWeb制作者の役割が見えてきます。AIが単純作業や時間のかかる調査を肩代わりしてくれることで、私たちはより本質的で付加価値の高い仕事に集中できるようになります。

つまり、Web制作者の役割は、手を動かす「作業者」から、AIというアシスタントを的確に使いこなし、プロジェクト全体を成功に導く「監督・司令塔」へと変化していくのです。
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考えてみよう!

あなたがこれまでWeb制作の学習や実務で「時間がかかるな」「難しいな」と感じた作業は何ですか?それはAIの力でどのように効率化できるか、想像してみましょう。
解答例
  • 例1:コーディング中のタイプミスや閉じタグの忘れ。
    → GitHub CopilotのようなAIがリアルタイムでコードを補完・修正してくれるため、ケアレスミスが減り、開発スピードが格段に向上する。
  • 例2:ブログ記事やサービス説明文の文章作成。
    → ChatGPTにキーワードや伝えたい概要、ターゲット読者を伝えることで、質の高い文章の骨子や複数のパターンを短時間で作成できる。ゼロから考えるストレスが大幅に軽減される。

【1-2】これからの制作者に求められるスキルセット

目安の学習時間:20分

AIに仕事を奪われないために

「AIに仕事が奪われる」という話を耳にすることがあるかもしれません。確かに、AIの登場によって、一部の作業の価値は相対的に低下します。

AIに代替されやすいのは、明確なルールやパターンに基づいて行われる「再現性の高い作業」です。例えば、指示書通りにHTMLとCSSを書くだけの単純なコーディング作業や、決まったテンプレートに沿った画像作成などは、AIの得意分野です。

しかし、悲観する必要は全くありません。むしろ、これからは人間にしかできない、より付加価値の高い仕事に集中できるチャンスです。
人間にしかできない付加価値とは?
  • 課題発見と提案力:クライアントとの対話の中から、本人も気づいていない真の課題を引き出し、Webサイトを通じた解決策を提案する。
  • 創造性とディレクション能力:AIというツールを駆使して、どのようなWebサイトを作るかというコンセプトを考え、全体のアートディレクションを行う。
  • 品質管理と最終責任:AIの生成物を評価し、プロジェクト全体の品質に責任を持つ。倫理的、法的な観点から最終的なGO/NO-GOを判断する。
これからのWeb制作者は、単なる「作り手」ではなく、クライアントのビジネスを成功に導く「パートナー」としての役割がより一層求められるのです。

市場価値が上がる「AI活用スキル」

AI時代に市場価値の高いWeb制作者になるためには、従来のWeb制作スキルに加えて、AIを賢く使いこなすための新しいスキルセットが必須となります。特に重要な3つのスキルを紹介します。

1. 的確な指示でAIの力を引き出す「プロンプトエンジニアリング」
AIは、与えられた指示(プロンプト)に基づいて生成物を作ります。曖昧な指示からは、ありきたりな結果しか得られません。AIの能力を最大限に引き出すためには、具体的で、意図が明確なプロンプトを作成するスキルが不可欠です。
プロンプトエンジニアリング

AIに対して、望む出力を得るために最適な指示(プロンプト)を設計し、改良していく技術やスキルのこと。AIとの対話術とも言える。

2. AIの生成物を鵜呑みにしない「クリティカルシンキング」
AIは時に、事実と異なる情報(ハルシネーション)を生成したり、文脈に合わない不自然な表現を使ったりすることがあります。生成されたコードや文章、画像を鵜呑みにせず、「これは本当に正しいか?」「もっと良い表現はないか?」と批判的な視点で検証し、改善する思考法が重要です。
クリティカルシンキング(批判的思考)

物事を無条件に受け入れるのではなく、多角的な視点からその情報が本当に正しいのか、その結論は妥当かを客観的、論理的に分析・検討する思考法のこと。

3. 著作権やセキュリティを守る「リスク管理能力」
AIの活用は、効率化という大きなメリットをもたらす一方で、著作権侵害や情報漏洩といったリスクも伴います。AIの生成物を商用利用する際のライセンスの問題や、クライアントの機密情報をAIに入力しないといったセキュリティ意識など、潜在的なリスクを理解し、適切に対処する能力は、プロとして活動する上で絶対に欠かせません。この点については、3章で詳しく解説します。
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【1-3】1章 -章末課題- [未来の自分をデザインしよう]

目安の学習時間:10分

問題

本章の学びを踏まえ、「AI時代のWeb制作者として、あなたはどのようなスキルを武器に、どのような価値を提供していきたいか」を300字程度で記述し、あなたの「制作者宣言」を作成してください。

解答

これはあなた自身の未来を描く課題なので、正解はありません。以下に解答例を示しますので、ぜひ自分の言葉で、これからの目標を宣言してみてください。

解答例
私は、AIによる高速な実装スキルを武器に、これまでWebサイト制作を諦めていた小規模な事業者様にも、低コストで高品質なサイトを提供したいです。
単にAIに作業させるだけでなく、お客様との対話を通じて真の課題を発見し、それを解決するための最適なサイト構成を提案できる「ビジネスパートナー」のような存在を目指します。
AIが生成したものをそのまま使うのではなく、著作権や倫理観を常に意識し、責任を持って最終的な品質を担保できる制作者になります。

この章のまとめ

これで「1章:AI時代のWeb制作者サバイバル術」の解説を終わります。

AIの登場による変化と、それに伴い求められる新しいスキルセットについて理解いただけたでしょうか。漠然とした不安が、具体的な目標に変わっていれば幸いです。

次の章では、いよいよWeb制作の各工程で具体的にどのようなAIツールが使えるのか、その全体像(マップ)を見ていきます。お楽しみに!
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