教材2 AIによる要件分析と技術設計
2章 AIと読む!要件定義書の深掘り術
INDEX
目次

2章 AIと読む!要件定義書の深掘り術

この章の目安学習時間:90分

この章で到達できるゴール:

  • 提供された要件定義書をAIに読み込ませ、要点を正確に抽出できる。
  • AIの力を借りて、要件の不明点や確認事項をリストアップできる。

【2-1】AIでプロジェクトの核心を見抜く

目安の学習時間:30分

今回のミッション:架空の要件定義書

この章から、いよいよ本格的な実践に入ります。
今回の教材では、以下の架空クライアントからWebサイト制作を請け負ったという想定で、一連の設計フローを体験していきます。
まずは、クライアントから提示された要件定義書を読み込むところから始めましょう。
この要件定義書が、私たちの設計の出発点です。

資料まるごと読込み!AI要約術

実務では、より長く複雑な資料を渡されることも少なくありません。
そんな時、まずAIに要約させてプロジェクトの全体像を掴むのが効率的です。

AIに要件定義書の内容をコピー&ペーストし、次のプロンプトを入力してみましょう。
ここでのコツは、AIに特定の役割(ロール)を与えることです。
これにより、AIはより専門的な視点で回答を生成してくれます。
プロンプト例:要約

あなたは優秀なWebディレクターです。以下の要件定義書の内容を分析し、このプロジェクトの「目的」「ターゲット」「主要な要望」を簡潔に箇条書きでまとめてください。

---

(ここに要件定義書の内容を貼り付ける)

この指示により、AIは長文の中から重要な要素だけを抽出し、プロジェクトの骨格を明確にしてくれます。

AIが見抜く!プロジェクトの不明点

要件定義書は、クライアントが書いたものであるため、Web制作のプロから見ると情報が不足していたり、表現が曖昧だったりすることがよくあります。
これらを事前に洗い出すことが、後の手戻りを防ぐ鍵となります。
ここでもAIが活躍します。
要約をさせた同じチャット内で、続けて次のように指示してみましょう。
プロンプト例:不明点の洗い出し

ありがとう。では次に、この要件定義書の内容だけでは仕様を確定できない、情報が不足している点や、定義が曖昧な点をリストアップしてください。

AIは、人間がうっかり見落としがちな観点を客観的に指摘してくれます。
例えば、「『Instagramとの連携を強化したい』とありますが、具体的にどのような連携を想定していますか?(例:投稿の埋め込み、アカウントへのリンクなど)」といった、具体的な仕様に落とし込むために必要な質問の種を見つけてくれるのです。

【2-2】クライアントへの「完璧な質問」をAIと作る

目安の学習時間:30分

これで聞き逃さない!AI質問生成術

AIに洗い出させた「不明点」のリストは、そのままではクライアントに聞きにくい抽象的なものも含まれます。
そこで、次のステップとして、このリストを基に、クライアントへのヒアリングでそのまま使える具体的な質問リストをAIに作成させましょう。
プロンプト例:質問リストの生成

素晴らしいリストです。では、先ほど洗い出してくれた不明点を基に、クライアントへの初回ヒアリングで確認すべきことを、具体的な質問形式のリストとして作成してください。質問は丁寧な言葉遣いでお願いします。

これにより、「通販の将来的な展望について、具体的な時期や規模感のイメージはありますでしょうか?」といった、プロフェッショナルかつ丁寧な質問リストが完成します。
このリストがあれば、クライアントへのヒアリングで聞き漏らしがなくなり、プロジェクトをスムーズに進めることができます。

練習問題

問題
提供された短いテキスト(例:「新しくオープンするペットホテルのサイト。目的はネット予約の受付。ターゲットは30-40代の犬の飼い主。」)をAIに渡し、「このプロジェクトを進める上で、クライアントに確認すべき質問を3つ考えてください」と指示してみましょう。

解答例
AIは以下のような、より具体的な仕様を確認するための質問を生成するはずです。
  1. 予約システムについてですが、自社で独自のシステムを開発するご希望はありますか?それとも、既存の外部予約サービス(例えばSTORES予約やAirリザーブなど)を導入する形がよろしいでしょうか?
  2. サイトに掲載するホテルの内装や、お預かりするペットの様子の写真素材は、ご提供いただけますでしょうか?もしくは、こちらでカメラマンを手配する必要はありますか?
  3. 予約のキャンセルポリシーについてお伺いできますでしょうか?(例:何日前までキャンセル無料、当日のキャンセル料など)

【2-3】2章 -章末課題- [AIと完璧な質問リストを作ろう]

目安の学習時間:30分

問題

本章で扱った「焼きたてパン屋さん」の要件定義書を基に、AIと協力して、クライアントへの初回ヒアリングで確認すべき「質問リスト」を10個作成してください。

解答手順

操作手順
  1. AIを開き、新しいチャットを開始します。まずAIに「あなたは経験豊富なWebディレクターです。」と役割(ロール)を与えます。
  2. 教材で提供された「焼きたてパン屋さん」の要件定義書全文をコピーし、プロンプトに貼り付けます。
  3. 続けて、「この要件定義書の内容を基に、仕様を確定させるためにクライアントへの初回ヒアリングで確認すべき質問を10個、具体的なリストとして作成してください。質問は、相手への配慮が感じられる丁寧な言葉遣いでお願いします。」というプロンプトを入力し、送信します。
  4. AIが生成した10個の質問リストが、要件定義書の内容に沿っており、かつ的確かを確認します。もし内容が不十分な場合は、「ありがとうございます。特に決済方法や商品の更新方法について、もっと深掘りした質問を追加してください。」のように、対話形式で修正を依頼します。
  5. 完成した質問リストを、課題として提出します。

この章のまとめ

これで「2章:AIと読む!要件定義書の深掘り術」の解説を終わります。

クライアントから渡された情報(要件定義書)を鵜呑みにせず、AIというパートナーと共に多角的に分析し、不明点を明確にするプロセスを体験しました。この「質問力」こそが、プロジェクトを成功に導く土台となります。

次の章では、明確になった要件を基に、いよいよWebサイトの骨格となる「サイトマップ」や「ワイヤーフレーム」の設計に入っていきます。
WEBCOACH | キャリアチェンジまでの全てを学ぶマンツーマンWEBスクール
© 2020 by WEBCOACH