教材2-① AIによるアイデア発想と素材作成フロー:発想支援編
2章 実践:リサーチとコンセプト定義
INDEX
目次

2章 実践:リサーチとコンセプト定義

この章の目安学習時間:1時間30分

この章で到達できるゴール:

  • AIを活用して、市場や競合に関する情報を効率的に収集・分析できる。
  • AIの支援を受けながら、具体的なターゲットユーザー像(ペルソナ)を作成できる。
  • リサーチ結果を基に、AIと協業してデザインの軸となるコンセプトを言語化できる。

【2-1】AIによる市場・競合リサーチ

目安の学習時間:30分

AIをリサーチアシスタントにする

この章から、いよいよ本格的な実践に入ります。

1章で設定したプロジェクトテーマに基づき、デザインの根幹となる「リサーチ」と「コンセプト定義」のプロセスを、AIを活用しながら進めていきます。

デザインプロジェクトの成功は、質の高いリサーチから始まります。
このパートでは、テキスト生成AIを優秀なリサーチアシスタントとして活用し、市場のトレンドや競合の動向を効率的に調査する方法を学びます。

AIに的確な指示を与えることで、膨大な情報の中から必要なインサイトを短時間で引き出すことが可能になります。
プロンプトの型
  • AIに特定のタスクを依頼する際、毎回ゼロから指示を考えるのは大変です。そこで役立つのが「プロンプトの型」です。
  • 例えばリサーチでは、「あなたは優秀な〇〇です。△△について、□□の形式で教えてください」といった型を覚えておくと、安定して質の高い回答を得やすくなります。
  • 練習問題

    問題
    1章で設定した自身のプロジェクトテーマについて、AIに「主な競合となりそうなサービスやブランドを3つ挙げ、それぞれの特徴を要約してください」と指示するプロンプトを作成し、実行してみましょう。

    AIの回答も一緒に記録しておいてください。
    解答例
    • AIを活用して、市場や競合に関する情報を効率的に収集・分析できる。
    あなたは優秀なマーケティングリサーチャーです。
    これから立ち上げる「サステナブルな素材を使ったファッションブランド」について、
    競合となりそうなブランドを3つ挙げてください。
    それぞれのブランドのコンセプト、ターゲット層、Webサイトの特徴を簡潔にまとめてください。
    解答例
    出力結果例
    • 1.Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)
      • コンセプト:動物由来素材を一切使用せず、ラグジュアリーとサステナビリティを融合したファッションを展開。高品質なオーガニックコットン、再生素材、革新的な植物由来レザーなどを採用。
      • ターゲット層:30〜50代の富裕層/意識の高いエシカル志向の女性。ハイエンドなライフスタイルを大切にし、ファッションと環境への配慮を両立させたい層。
      • Webサイトの特徴:
        • 洗練されたミニマルデザイン
        • サステナビリティへの取り組み専用ページあり
        • 商品詳細に「素材の出所」「リサイクル情報」など透明性のある記載
        • https://www.stellamccartney.com/
    • 2.PACT(パクト)
      • コンセプト:フェアトレード認証のオーガニックコットンを使い、「手が届く価格帯のサステナブルファッション」を追求。肌にも環境にも優しいカジュアルウェアを展開。
      • ターゲット層:20〜40代のナチュラル志向の男女。育児世代やZ世代にも人気で、価格とサステナビリティの両立を求める消費者。
      • Webサイトの特徴:
        • 商品ページで「CO₂削減量」や「水の使用削減量」を明示
        • フィルターで「素材別」「フェアトレード有無」などが選べる
        • 教育的なブログコンテンツも充実
        • https://wearpact.com/
    • 3.Reformation(リフォーメーション)
      • コンセプト:スタイリッシュでトレンド感のあるデザインを、エコ素材と持続可能な生産体制で実現。リサイクル素材やデッドストックを使い、CO₂削減にも積極的。
      • ターゲット層:20〜30代のファッション感度が高く、サステナビリティにも興味のある女性。Z世代・ミレニアル世代の都市生活者。
      • Webサイトの特徴:
        • 商品ごとに「RefScale(製品ごとの環境影響指標)」を表示
        • スマートでモダンなUI/UX
        • トレンド性の高い商品写真と着用スタイル例が豊富
        • https://www.thereformation.com/

    【2-2】AIによるターゲットペルソナ作成

    目安の学習時間:30分

    ユーザー像を具体的に描く

    優れたデザインは、常に「誰のためか」を明確に意識することから生まれます。
    このパートでは、リサーチ結果を基に、AIにペルソナ(サービスや商品の典型的なユーザー像)を作成させる方法を学びます。
    ペルソナ
  • 架空のユーザー像を、あたかも実在する人物かのように詳細に設定したものです。
  • 年齢、職業、ライフスタイル、価値観、悩みなどを具体的に定義することで、チーム内でのユーザーイメージの共有を助け、デザインの方向性を決める上での重要な判断基準となります。
  • AIを活用することで、データに基づいた、より解像度の高いペルソナを効率的に作成できます。
    AIが生成したペルソナに対し、追加で質問を重ねて深掘りしていくのが効果的です。

    練習問題

    問題
    前のパート【2-1】で得られた競合リサーチの結果を踏まえ、自身のプロジェクトのターゲットユーザー像をより具体的にするため、AIに「このプロジェクトの典型的なユーザーペルソナを1人、詳細なプロフィール(名前、年齢、職業、価値観、悩み、ファッションへの関心など)を含めて作成してください」と指示するプロンプトを作成し、実行してみましょう。
    解答
     (26627)

    ・プロンプト例(テーマAの場合)
    先ほどの競合リサーチの結果と、サステナブルファッションの市場トレンドを踏まえ、
    私たちの新しいブランドのターゲットとなるペルソナを1人作成してください。
    名前、年齢、職業、ライフスタイル、価値観、
    ファッションに関する悩み、このブランドに期待することなどを、
    物語を読むように具体的に記述してください。
    
    入力例
    出力結果例
    • ペルソナ設定:安藤 美咲(あんどう みさき)
      • 年齢:32歳
      • 職業:PR会社勤務の広報マネージャー(都内在住)
      • 家族構成:一人暮らし、たまに猫と実家の母のもとを行き来
      • 年収:550万円程度
      • 趣味:ヨガ、ヴィーガンレシピ集め、旅先でのローカルブランド探し
      • SNS:Instagram(主にライフスタイルやファッション投稿)、Threadsもチェックする派
    • ライフスタイル・価値観
      • 「私らしく、でも地球にやさしく生きたい」と考えるZ世代後半〜ミレニアル前半の代表格。
      • 平日はオフィスと取材先を行き来しながら忙しく働き、週末には青山や代官山で展示会を見たり、ビーガンカフェでブランチを楽しむ。
      • 「量より質」を重視し、大量生産品は避け、長く使えるアイテムを厳選。
      • 大学時代に観たドキュメンタリー『The True Cost』がきっかけでファストファッションを避けるようになった。
      • 洋服は「トレーサビリティ」や「素材背景」などを確認して購入するのが習慣。
    • ファッションに関する悩み
      • サステナブルなブランドは「ナチュラル過ぎる」か「高価すぎる」ことが多い。
      • オフィスでも浮かず、センスを感じさせるアイテムが見つかりにくい。
      • 身体に合った美しいシルエットを諦めたくない。
      • 「環境に配慮しているけれど、ちゃんとおしゃれ」な服を着たい。
      • ブランドのストーリーに共感できないと買う気が起きない。
    • このブランドに期待すること
      • 環境配慮とファッション性の両立:再生素材や植物由来の素材でありながら、着心地・デザイン性が高く、「それどこの?」と聞かれるような洗練されたスタイル
      • 透明性のあるストーリー:生産背景や素材情報を、Webやタグでわかりやすく伝えてほしい(例:「この服は水の使用量を50%削減して生まれた」など)
      • 適正価格:高級ブランドまではいかずとも、“価値を感じられる価格”で提供されること
      • スタイリング提案:着回しや季節ごとのコーデ例が豊富だと、自分のワードローブにも取り入れやすい
    • ブランドとの関わり方
      • ブランドが発信するサステナビリティの取り組みや社会的メッセージに共感すれば、SNSで自然とシェアする。
      • 単なる「洋服」としてではなく、ライフスタイルの一部としてファッションを楽しむ。
      • このブランドは、美咲にとって「価値観を可視化してくれるパートナー」のような存在になる。

    【2-3】AIによるコンセプトの言語化

    目安の学習時間:30分

    デザインの「軸」を言葉にする

    リサーチとペルソナ作成で得た情報をもとに、いよいよデザインの軸となるコンセプトを言語化していきます。
    コンセプトは、プロジェクト全体の方向性を決定づける羅針盤の役割を果たします。
    このパートでは、AIとのブレインストーミングを通じて、デザインの核となるキーワードを抽出し、最終的にプロジェクトを象徴する「コンセプトステートメント」としてまとめるプロセスを体験します。
    考えてみよう!
    AIにコンセプトキーワードのブレインストーミングを依頼する際、どのような情報を提供すれば、より質の高いアイデアが出てくるでしょうか?
    解答例
    • これまでの工程で作成した「リサーチ結果」と「ペルソナ情報」をAIに提供する。
    • デザインで伝えたい「雰囲気」や「価値観」(例:「温かみ」「誠実さ」「未来感」など)をキーワードとして含める。
    • 「他のブランドとは違う、ユニークな切り口で」といった制約条件を加える。

    練習問題

    問題
    これまでのリサーチ結果と作成したペルソナをAIに提示し、「これらの情報に基づき、このブランドの魅力を伝えるコンセプトキーワードを10個、ブレインストーミングしてください」というプロンプトを作成し、実行してみましょう。
    解答
    • プロンプト例(テーマAの場合):
    あなたは優れたブランドストラテジストです。
    以下のペルソナとリサーチ結果を基に、新しいサステナブルファッションブランドの
    コンセプトキーワードを10個提案してください。
    
    【ペルソナ情報】
    (【2-2】で作成したペルソナのテキストを貼り付け)
    
    【リサーチ結果】
    (【2-1】で得た競合の情報を要約して貼り付け)
    プロンプト例
    出力結果例
    No.
    キーワード
    解説
    1
    Conscious Elegance(意識ある上質さ)
    サステナビリティと洗練された美しさの両立。ミニマルで上品なトーンにマッチ
    2
    Traceable Beauty(たどれる美しさ)
    素材の出自や生産背景を明らかにし、透明性を美しさと結びつける
    3
    Wear with Intention(意図ある装い)
    「なぜこの服を選ぶのか」を明確にする、選択の美学を反映
    4
    Sculpted by Nature(自然にかたちづくられる)
    天然素材のしなやかさや質感を活かしたデザイン性を象徴
    5
    Everyday Ethical(日常に根ざした倫理性)
    過度にラグジュアリーに寄りすぎず、普段着としてのリアリティを訴求
    6
    Modern Ritual(現代の儀式)
    “服を選ぶ=自分を整える”という、現代人の生活の儀式化を表現
    7
    Soft Power(やわらかな意志)
    女性らしさと力強さを併せ持つ、しなやかな自己表現を支援
    8
    Eco-Intelligent Design(エコ×知性の融合)
    機能性・素材選び・デザイン美の三位一体が感じられるワード
    9
    Quiet Confidence(静かな自信)
    主張しすぎないけれど芯がある、ミニマル派ペルソナに響くトーン
    10
    Re:Form Your Wardrobe(ワードローブを再構築)
    自身の装いを、環境意識とともに“再定義”する提案型メッセージ

    【2-4】2章 -章末課題- [コンセプトシートの作成]

    目安の学習時間:30分

    問題

    この章で学んだことを総動員し、自身が選んだプロジェクトテーマの「コンセプトシート」を作成してください。
    以下の項目を全てAIを活用して埋め、1枚のドキュメントとしてまとめましょう。
    1. ターゲットペルソナ(詳細なプロフィール、悩み、ニーズ)
    2. 競合分析の要約(主要な競合2社の特徴)
    3. コンセプトキーワード(5つ以上)
    4. デザインコンセプトステートメント(150字程度)

    解答手順・解答例

    1.テキスト生成AI(ChatGPTなど)を起動します。
     (26651)

    2.【2-2】の練習問題で作成した、自身のプロジェクトのペルソナをAIに提示します。
    3.【2-1】の練習問題で作成した、競合分析の結果をAIに提示します。
    4.上記2と3の情報を基に、「このプロジェクトのコンセプトキーワードを10個、ブレインストーミングしてください」と指示します。
     (26655)

    5.生成されたキーワードの中から、特に重要だと感じるものを5つ以上選びます。
     (26657)

    出力結果例
    1. エフォートレス・エシカル(Effortless Ethical)
      「頑張りすぎず、でも妥協しない」現代女性の生き方を体現。サステナブルを自然体で取り入れるスタイル。
    2. 未来をまとう(Wear the Future)
      単なる服ではなく、次世代の価値観を身にまとう体験。先進素材や生産背景に意識の向く層へ響く表現。
    3. トランスペアレント・ビューティ(Transparent Beauty)
      素材の背景、生産地、環境影響などが可視化されているからこそ、より美しく感じるという価値観。
    4. ミニマル・シック(Minimal Chic)
      オフィスでも浮かず、洗練された雰囲気。ナチュラル過ぎず、「都会的なサステナブル」を叶えるスタイル。
    5. 感性で選ぶサステナビリティ(Sustainability by Instinct)
      理屈ではなく「これ、いいな」と思って手に取ったら、実は環境にも優しかった。共感と直感が交差する選択。
    6. 共鳴する物語(Resonant Story)
      ストーリーに心が動いて購入に至る女性たちにとって、ブランドは「共感できる物語の発信者」である必要がある。
    7. クローゼットの定番進化(Next Essentials)
      「着回せる」「長く着られる」だけでなく、“今の私”の価値観に寄り添う新時代の定番服。
    8. やさしさ設計(Kindness Engineered)
      素材・工程・着心地すべてにやさしさが設計されている、という内側からの美意識に響く言葉。
    9. 美しい責任(Beautiful Responsibility)
      環境配慮を「義務」ではなく、「美しさの一部」と捉える先進的マインドにマッチ。
    10. 選択が未来になる(Your Choice, Your Future)
      ファッションの選択が社会的意志表明となる時代に、現代女性の価値観が共鳴するメッセージ。
    6.選んだキーワードをAIに提示し、「これらのキーワードを軸にして、このプロジェクトのデザインコンセプトステートメントを150字程度で作成してください」と指示します。
     (26661)

    出力結果
    感性と倫理性を自然体で纏う、エフォートレス・エシカルな日常服。
    ミニマルで洗練された佇まいに、肌にも地球にもやさしい高機能素材と設計思想が融合する。
    一着の選択が価値観と未来への意志を語り、社会と共鳴するライフスタイルを育む。
    今の私らしさを大切にしながら、持続可能な明日を共につくる。
    出力結果
    7.これまでにAIと作成した「ペルソナ」「競合分析の要約」「コンセプトキーワード」「コンセプトステートメント」を、デザインツール(FigmaやCanvaなど)を使い、1枚のドキュメントに美しくレイアウトして完成です。
     (26665)

    コーチにフィードバックを貰おう!
    • 完成した課題は、コーチに提出してフィードバックをもらいましょう!
    • 思いもよらない新しいアイデアや、別の切り口のヒントがもらえることもあります。
    【ポイント】
    • 「コンセプトシート」の各項目について、AIにどのような情報を与え、どのような形式で出力されたかを具体的に記述しましょう。
    • AIの回答をどのように評価し、自身の判断で調整したかを説明すると、より実践的な学びになります。
    • コーチに、作成したコンセプトシートに対する客観的なフィードバックや、さらに深掘りすべき点、今後のデザインプロセスにおけるAIの活用方法について質問してみましょう。
    これで「2章 実践:リサーチとコンセプト定義」の解説を終わります。
    次の章に進みましょう。
    WEBCOACH | キャリアチェンジまでの全てを学ぶマンツーマンWEBスクール
    © 2020 by WEBCOACH