AIってそういうこと?AIキホンと未来
1章 「AI」ってそもそも何? ~基本のキ~
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1章 「AI」ってそもそも何? ~基本のキ~

この章の目安学習時間:20分

この章で到達できるゴール

  • AIと生成AIの違いと関係性を、図や簡単な言葉で説明できるようになる
  • AI技術が、すでに私たちの身近なところで活用されていることを実感できる

【1-1】AI(人工知能)の正体

目安の学習時間:10分

AIってどういう意味?

最近よく耳にする「AI」という言葉。ニュースやインターネット、さらには映画や小説の中でも登場し、私たちの生活に身近な存在になりつつあります。
では、この「AI」とは一体何なのでしょうか?

AIとは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。
難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、「人間のように物事を考えたり、学んだりするコンピュータのプログラム」のことです。
重要語句:AI(人工知能)
  • AI (Artificial Intelligence):人間の知的な振る舞い(学習、推論、判断など)をコンピュータプログラムによって人工的に再現したもの。
  • ポイントは「人間のように」という部分です。ただし、一口にAIと言っても、その能力や目指す方向性によって様々なレベルや種類があります。
例えば、SF映画に出てくるような、人間と全く同じように感情豊かに対話し、自分で考えて行動するロボットを想像するかもしれません。
これは「強いAI」と呼ばれる、人間と同等以上の知能を持つAIのイメージです。

しかし、現在私たちの周りで実際に活用されているAIの多くは、「弱いAI」と呼ばれるものです。
これは、特定のタスク(例えば、画像を認識する、文章を翻訳する、迷惑メールを仕分けるなど)に特化して能力を発揮するAIです。

この教材では、主にこの「弱いAI」、特にその中でも新しいものを創り出す能力を持つ「生成AI」について学んでいきます。

コラム:AIはいつからあるの?

「AI」という言葉は最近よく聞くようになりましたが、実はその研究の歴史は古く、1950年代にまで遡ります。
これまでにAIの研究は、大きく分けて3回のブームがあったと言われています。
  • 第1次AIブーム(1950年代後半~1960年代)
    • 「AI」という言葉が誕生し、迷路の解き方やパズルなど、特定のルールに基づいた問題を解く「推論」や「探索」の研究が中心でした。しかし、複雑な現実の問題を解くことは難しく、ブームは下火になりました。
  • 第2次AIブーム(1980年代)
    • コンピュータに専門家の知識を覚えさせ、その知識に基づいて判断を行う「エキスパートシステム」が注目されました。特定の分野では実用化も進みましたが、知識を大量に集めて管理する難しさなどから、再び停滞期を迎えます。
  • 第3次AIブーム(2000年代~現在)
    • 「機械学習」という技術、特にその中の一分野である「ディープラーニング(深層学習)」の登場が大きなブレイクスルーとなりました。
では、なぜ「今」こんなにもAIが盛り上がっているのでしょうか?
その背景には、主に以下の3つの要因があります。
  1. 計算能力の向上:コンピュータの処理速度が飛躍的に向上し(特にGPUの進化)、大量の計算を高速に行えるようになった。
  2. ビッグデータの普及:インターネットやスマートフォンの普及により、AIが学習するための元となる膨大な量のデータ(テキスト、画像、音声など)が手軽に入手できるようになった。
  3. アルゴリズムの進化:ディープラーニングをはじめとする、より効率的で高性能なAIアルゴリズムが開発された。
これらの要素が組み合わさることで、AIは目覚ましい進化を遂げ、私たちの生活の様々な場面で活用されるようになったのです。

実は身近なAI技術

  • お掃除ロボット:部屋の形や障害物の位置をセンサーで感知し、効率的な掃除ルートを自分で考えて動きます。これは、AIが「学習」し「判断」している一例です。
  • スマートフォンの顔認証:カメラに顔を向けるだけでロックが解除される機能。AIが顔の特徴を記憶し、登録された人物かどうかを「認識」しています。
  • ECサイトのおすすめ機能:オンラインショッピングサイトで、「この商品を買った人はこんな商品も見ています」と表示される機能。AIが過去の購買履歴や閲覧履歴などの膨大なデータを分析し、個々のユーザーに合った商品を「予測」して提案しています。
  • 検索エンジン:Googleなどでキーワード検索すると、関連性の高い情報が瞬時に表示されます。AIが世界中のウェブサイトの情報を収集・整理し、検索キーワードの意図を理解して最適な結果を「判断」して表示しています。
  • 迷惑メールフィルター:受信したメールが迷惑メールかどうかを自動で「分類」し、専用フォルダに振り分けてくれます。
  • 翻訳アプリ:入力した外国語の文章を、瞬時に日本語に翻訳してくれます。AIが言語のパターンを学習し、自然な翻訳文を「生成」に近い形で出力します。
これらの例からもわかるように、AIは決して遠い未来の話ではなく、すでに私たちの生活を便利で豊かにしてくれる、身近なテクノロジーなのです。

【1-2】AIと「生成AI」の関係

目安の学習時間:10分

「生成AI」はAI界のニュースター

ここまで「AI(人工知能)」という大きな枠組みについて見てきました。では、最近特に注目を集めている「生成AI(Generative AI)」とは何なのでしょうか?
そして、従来のAIとは何が違うのでしょうか。

AIと生成AIの関係は、大きな円(AI全体)の中に、比較的小さな円(生成AI)が含まれているイメージで捉えると分かりやすいです。
つまり、生成AIはAIの一種なのです。
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では、従来のAIと生成AIの得意なことは、具体的にどう違うのでしょうか。
  • 従来のAI:主に、既存のデータの中から特定のパターンを見つけ出し、それに基づいて「答えを見つける」こと(分類予測)が得意です。
    • 例:迷惑メールの判定(迷惑メールか否かを分類)、明日の天気予報(過去の気象データから天気を予測)、株価の予測、工場での不良品検知など。
  • 生成AI:既存のデータから学習したパターンを元に、これまで世の中になかった全く新しいデータやコンテンツを「創り出す」こと(生成)が得意です。
    • 例:新しいブログ記事の作成、オリジナルのイラストや画像の生成、作曲、プログラムコードの生成など。
この違いを料理に例えてみましょう。
    従来のAI
    • たくさんのレシピ(データ)を読み込んで、特定の料理(例えばカレー)を完璧に再現する(分類・予測)のは得意です。
    • 材料を見て「これはカレーの材料だ」と判断したり、「この手順なら美味しいカレーができる」と予測したりします。
    • しかし、レシピにない全く新しい料理を創り出すことは基本的にはしません。
    生成AI
    • たくさんのレシピや料理の知識(データ)を学習し、それらを組み合わせて、今までにない独創的なオリジナルレシピ(新しいコンテンツ)を考え出す(生成)ことができます。
    • 「和風とイタリアンを融合させた新しいパスタを作って」とお願いすると、それっぽいレシピを提案してくれるイメージです。
このように、生成AIは「創り出す」という点で、従来のAIとは一線を画す能力を持っていると言えます。
これが、生成AIが「AI界のニュースター」として注目されている理由の一つです。

考えてみよう!

普段使っているスマートフォンの「天気予報アプリ」。
これは、ここまで学んだ「従来のAI」と「生成AI」のどちらの働きに近いと思いますか?
理由もあわせて考えてみましょう。
解答例:

従来のAIに近い働きをしていると考えられます。
理由:

天気予報アプリは、過去の膨大な気象データ(気温、湿度、風向き、気圧配置など)を分析し、そこから未来の天気がどうなるかを「予測」しています。
例えば、「過去の似たような気象パターンの時、翌日は晴れた確率が高い」といった学習結果に基づいて、明日の天気を教えてくれます。
これは、新しい雲の画像を「生成」したり、オリジナルの天気のことわざを「生成」したりするのとは異なり、既存のデータから特定の答え(明日の天気)を導き出す働きがメインだからです。

【1-3】1章-章末課題- AIと生成AIの分類ゲーム

目安の学習時間:5分

問題

以下の具体例は、「従来のAI」の働きがメインになっているか、「生成AI」の働きがメインになっているか、それぞれ分類してみてください。
そして、なぜそう考えたのか理由も簡単に説明してみましょう。
  1. クレジットカード会社が、カードの利用履歴から不正利用の可能性が高い取引を検知するシステム。
  2. 「宇宙を旅する猫」というテーマで、新しい物語のあらすじを5つ提案する機能。
  3. 工場で製品の画像を撮影し、それが良品か不良品かを自動で判定するシステム。
  4. ユーザーが入力した歌詞のイメージに合わせて、オリジナルのメロディを自動で作曲する機能。

解答解説

具体例
分類
理由(例)
1. クレジットカードの不正利用検知システム
従来のAI
過去の不正利用パターンを学習し、現在の取引がそれに合致するかどうかを「予測・検知」しているため。新しい不正の手口を「生成」しているわけではない。
2. 「宇宙を旅する猫」の物語あらすじ提案機能
生成AI
与えられたテーマに基づいて、これまで存在しなかった新しい物語のアイデアを「生成」しているため。
3. 工場の製品品質判定システム
従来のAI
良品と不良品の画像データを学習し、新しい製品画像がどちらのパターンに近いかを「分類」しているため。新しい製品デザインを「生成」しているわけではない。
4. 歌詞に合わせた自動作曲機能
生成AI
入力された情報(歌詞のイメージ)を基に、オリジナルの新しいメロディ(音楽データ)を「生成」しているため。
解説:

AIと生成AIの分類、いかがでしたか?
ポイントは、そのAIが主に「既存のデータから答えを見つけ出す(分類・予測など)」ことを目的としているのか、それとも「既存のデータにはない新しいものを創り出す(生成)」ことを目的としているのか、という点です。
この章で学んだように、生成AIもAIという大きな枠組みの一部ですが、その「創り出す」能力に大きな特徴があります。
もし分類に迷った場合は、そのAIが「何か新しいものをゼロから生み出しているか?」を考えてみると良いでしょう。
これで「1章 「AI」ってそもそも何? ~基本のキ~」の解説を終わります。
次の章では、いよいよ主役である「生成AI」について、その仕組みなどをさらに詳しく見ていきましょう。
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