AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本
3章 【実践編②】より高度な指示でAIを誘導する(主にChatGPTを使用)
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3章 【実践編②】より高度な指示でAIを誘導する(主にChatGPTを使用)

この章の目安学習時間:45分

AIから期待通りの回答を引き出すには、より高度な「誘導技術」が必要です。
この章では、AIを思い通りにコントロールする強力な技術を実践形式で習得します。

この章で到達できるゴール

  • プロンプトにおける「文脈」「制約条件」「ステップ指示」の重要性を理解し、これらを効果的に使ってより複雑で質の高い回答をAIから引き出せるようになる
  • 複数の構成要素を組み合わせた、より実践的なプロンプトを設計し、実行できるようになる
  • 架空のクライアント要望に対し、AIを使って具体的な提案資料の骨子を作成する体験をする

【3-1】「文脈(Context)」がAIの理解度を左右する

目安の学習時間:15分

AIは「空気を読めない」?

人間同士のコミュニケーションでは、言葉にしなくても相手の意図を察したり、その場の雰囲気から状況を理解したりすることがあります。いわゆる「空気を読む」という能力です。

しかし、現在のAIは、残念ながらこの「空気を読む」能力は持っていません。AIは、与えられた情報(プロンプト)に基づいて忠実に処理を行いますが、書かれていない背景情報や暗黙の了解を勝手に推測することは苦手です。

そのため、AIに的確なアウトプットを出させるためには、私たち人間が、必要な情報を「文脈(Context)」として明確に与える必要があります。
文脈とは?

プロンプトにおける「文脈」とは、AIが指示をより深く、正確に理解するために必要な補足情報全般を指します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 前提知識: そのタスクを理解する上でAIが知っておくべき専門知識や業界用語、過去の経緯など。
  • 背景情報: なぜそのタスクが必要なのか、どのような状況で使われるのか、など。
  • 目的: そのタスクを通じて何を達成したいのか、最終的なゴールは何か。
  • ターゲット読者/利用者: 生成されるアウトプットを誰が見るのか、誰が使うのか。(例:小学生向け、専門家向け、社内向け資料など)
  • 関連情報: 参考にしてほしい資料、データ、ウェブサイトのURLなど。

これらの文脈を適切に与えることで、AIは指示の意図をより正確に汲み取り、期待に近い、あるいは期待以上の成果物を生み出す可能性が高まります。

【実践】同じ指示でも、「文脈」次第で結果が変わる体験

では、文脈がAIの出力にどれほど影響を与えるのか、具体的な例で見てみましょう。

共通の指示:
「新しいスマートフォンのキャッチコピーを考えて」

この指示に対して、文脈の有無でChatGPTの回答がどう変わるか比較します。

パターン1:文脈なし
まずは文脈を与えずに、指示だけを伝えます。
新しいスマートフォンのキャッチコピーを考えて
AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本3-1
パターン2:文脈あり
次に、ターゲット顧客や商品の特徴といった「文脈」を加えて指示します。
あなたは経験豊富なコピーライターです。

ターゲットは最新技術に敏感な20代男性で、商品の特徴はバッテリー持続時間が従来比2倍、かつ超軽量であることです。

このスマートフォンのキャッチコピーを3つ提案してください。
AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本3-2
いかがでしたか?

文脈なしの場合、AIはどのようなスマートフォンなのか、誰に向けたものなのか分からないため、非常に一般的で当たり障りのないキャッチコピーを提案してきたのではないでしょうか。
一方で、文脈ありの場合は、「20代男性」「バッテリー長持ち」「超軽量」といった具体的な情報があるため、AIはそれらの特徴を活かした、よりターゲットに響きやすく、魅力的なキャッチコピーを提案できたはずです。

このように、文脈はAIの思考の方向性を定め、アウトプットの質を大きく左右する重要な要素です。AIに「空気を読ませる」のではなく、私たちが明確な文脈を提供することで、AIはその能力を最大限に発揮してくれるのです。

コラム:効果的な文脈の与え方

効果的な文脈の与え方のヒント
  • 5W1Hを意識する: 「誰に(Who)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を明確にすることで、AIは状況をより具体的に理解できます。
  • 箇条書きで情報を整理する: 複数の情報を伝える場合は、箇条書きで整理して提示すると、AIが情報を処理しやすくなります。
  • 参考資料やURLを提示する: AIが参照できる情報源(※AIの機能による)を提供することで、より専門的で正確な回答が期待できます。(例:WEBCOACH先生の場合はファイルアップロード機能など)
  • 「あなたは〇〇の状況を完全に理解しています」と念押しする: 長い文脈を与えた場合や、特に重要な前提条件がある場合に、AIにその文脈を確実に認識させるための一言として有効なことがあります。
  • 区切り文字を使う: プロンプト内で文脈情報、指示、制約条件などを明確に区別するために、`---` や `###` のような区切り文字を入れると、AIが構造を理解しやすくなることがあります。

これらのテクニックを参考に、AIが最大限のパフォーマンスを発揮できるような、分かりやすい文脈を提供する練習をしてみましょう。

【3-2】「制約条件」と「ステップ指示」でAIを名アシスタントに

目安の学習時間:15分

「制約条件」でアウトプットをコントロールする

AIは時に、自由すぎる発想で、私たちの期待とは少し離れた回答を返してくることがあります。創造性はAIの魅力の一つですが、ビジネスシーンなどでは、ある程度の枠組みの中で成果を出してもらう必要があります。

そこで役立つのが「制約条件(Constraints)」の設定です。制約条件とは、AIが生成するアウトプットに対して、守ってほしいルールや制限のことです。
  • 制約条件とは: AIの出力内容や形式に特定の制限やルールを設けること。
  • なぜ重要か: AIの自由な発想を活かしつつ、期待する範囲内にアウトプットを収め、品質をコントロールするため。的外れな回答や、冗長すぎる回答を防ぐ効果もあります。
具体的な制約条件の例:
制約条件の種類
具体例
文字数・単語数
  • 300字以内で要約してください。
  • 各アイデアは50単語以内で記述してください。
含めるべき/含めてはいけないキーワード
  • 必ず「イノベーション」という言葉を含めてください。
  • 「難しい」「複雑」といったネガティブな言葉は使用しないでください。
表現のトーン
  • フォーマルな言葉遣いでお願いします。
  • フレンドリーで親しみやすい口調で書いてください。
  • ユーモアを交えて説明してください。
視点・立場
  • 顧客の視点からメリットを説明してください。
  • 経営者の立場で課題を分析してください。
情報源の制限
  • 2023年以降の情報のみを参考にしてください。
  • Wikipediaの情報は参照しないでください。
これらの制約条件をプロンプトに盛り込むことで、AIはよりこちらの意図に沿った、質の高いアウトプットを生成しやすくなります。

【実践】制約付きキャッチコピー生成

それでは、ChatGPT(またはWEBCOACH先生)に制約条件を付けたプロンプトで指示を出してみましょう。
プロンプト例:
あなたはプロのコピーライターです。

新発売の「AI搭載コーヒーメーカー」のキャッチコピーを5つ提案してください。
ただし、以下の制約条件を守ってください。

#制約条件
- 各キャッチコピーは30文字以内
- 「簡単」「便利」という言葉は使わない
- ターゲットは忙しいビジネスパーソン
- 必ず「未来」というキーワードを入れる
- 出力は箇条書きでお願いします
AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本3-3
このプロンプトをAIに入力し、生成されたキャッチコピーがすべての制約条件を満たしているか確認してみましょう。
AIは、指定された制約条件を考慮してキャッチコピーを生成したはずです。もし、いくつかの条件が守られていなかった場合は、プロンプトの表現をより明確にしたり、条件の優先順位を伝えたりすることで改善できる場合があります。

「ステップ・バイ・ステップ指示」で複雑なタスクも実行可能に

AIに一度に多くのことや複雑なタスクを依頼すると、AIが混乱してしまったり、指示の一部を見落としてしまったりすることがあります。人間でも、たくさんの指示を一度に受けると混乱しますよね。

そんな時に有効なのが「ステップ・バイ・ステップ指示(Step-by-step instruction)」です。これは、AIに実行してほしいタスクを複数の小さなステップに分解し、順番に処理させる方法です。
  • ステップ・バイ・ステップ指示とは: 複雑なタスクや複数の要求を、論理的な順序で段階的に実行させる指示方法。
  • なぜ重要か:
    • AIが一度に処理する情報量を減らし、混乱を防ぐ。
    • 各ステップで期待するアウトプットが明確になり、指示の見落としを減らす。
    • 長い文章の生成や、複数の要素を組み合わせる企画立案、問題解決のプロセスなど、複雑な思考を伴うタスクで特に効果的。
    • AIに「思考のプロセス」を意識させることで、より論理的で質の高い回答を引き出しやすくなる。
AIに「まず〇〇をして、次に△△を分析し、最後に□□を提案してください」といった形で、思考の道筋を具体的に示すことで、より高度な要求にも応えてくれるようになります。

【実践】ステップ指示でブログ記事構成案を作成

ステップ・バイ・ステップ指示を使って、ChatGPT(またはWEBCOACH先生)にブログ記事の構成案を作成してもらいましょう。

プロンプト例:
あなたはSEOに詳しいブログ記事の専門家です。

以下のステップで、「プロンプトエンジニアリング入門」というテーマのブログ記事構成案を作成してください。

#ステップ
ステップ1:この記事のターゲット読者を定義してください。(例:AIに興味はあるが、プロンプトは書いたことがない初心者)
ステップ2:この記事を読むことで読者が得られるメリットを3つ挙げてください。
ステップ3:上記の読者とメリットを踏まえ、記事全体の構成(導入、主要な見出し3~5つ、まとめ)を提案してください。各見出しには、どのような内容を書くかの簡単な説明も加えてください。
ステップ4:各主要な見出しで解説すべき、あるいは含めるべき重要なキーワードを3つずつ挙げてください。
ステップ5:この記事の結論として、読者に最も伝えたいメッセージを記述してください。

出力はMarkdown形式で、各ステップの回答が明確に分かるように記述してください。
AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本3-4
このプロンプトをAIに入力し、各ステップに対して的確な回答が得られているか確認しましょう。
AIは、指定された各ステップに従って、ブログ記事の構成案を具体的に提案してくれたはずです。

・ターゲット読者は明確か?
・読者のメリットは魅力的か?
・ 記事の構成は論理的か?
・キーワードは適切か?
・結論のメッセージは心に響くか?

このように、複雑なタスクもステップに分解して指示することで、AIは一つ一つの処理に集中でき、最終的により質の高い、網羅的なアウトプットを生成しやすくなります。もし、いずれかのステップの出力が不十分な場合は、そのステップの指示をより具体的に修正することで改善が期待できます。

【3-3】3章-章末課題- AIと作る!「夢の旅行プラン」プレゼン資料

目安の学習時間:15分

問題

問題
あなたは、友人グループ(3~4人)で行く「最高の卒業旅行」を企画し、そのプランを皆にプレゼンするための資料(の骨子)を作成することになりました。
1章で学んだ「プロンプトの4大構成要素」と、この3章で学んだ「文脈」「制約条件」「ステップ・バイ・ステップ指示」「Markdown出力」をすべて盛り込んだ最強のプロンプトを設計し、ChatGPT(またはWEBCOACH先生)にプレゼン資料の骨子(アウトライン)を作成してもらいましょう。

資料に含めるべき項目(AIへの指示内容):

1. 旅行のコンセプト(例:一生の思い出に残るアドベンチャー体験、美食と癒しのリラックス旅など)
2. 行き先の候補地(国内または海外から3ヶ所、それぞれの選定理由も簡潔に)
3. 各候補地の魅力と、そこで体験できる代表的なアクティビティや見どころ(各候補地3つずつ)
4. 3泊4日の場合の、各候補地でのモデルコース概要(箇条書きで、午前・午後・夜の主な行動を示す)
5. おおよその予算感(1人あたり、各候補地ごと。「約〇〇円~〇〇円」のような幅でOK)
6. 旅行の成功を祈る、参加を促すような締めのメッセージ

解答手順

操作手順
  1. 上記の「資料に含めるべき項目」を参考に、プロンプトに必要な「役割」「指示」「文脈」「制約条件」「出力形式(Markdown)」を詳細に設計します。以下は設計のヒントです。
    • 役割の例: 「あなたは経験豊富で、若者のトレンドにも詳しいカリスマ旅行コンサルタントです。」「あなたは学生の気持ちをよく理解し、最高の思い出作りをサポートする旅行プランナーです。」
    • 文脈の例: 「私たちの大学の卒業旅行(3泊4日、時期は来年の3月頃を想定)のプランを考えています。参加者はアクティブなことが好きな男女3-4名です。予算は1人あたり最大15万円以内を希望します。」
    • 制約条件の例: 「治安が良い場所を優先」「移動時間が片道〇時間以内」「学生でも楽しめる価格帯のアクティビティを含める」「候補地はそれぞれ異なるタイプの魅力を持つ場所にすること」「各説明は簡潔に、箇条書きを多用すること」
    • ステップ指示の活用: 上記「資料に含めるべき項目」の1から6までを、そのままステップ・バイ・ステップ指示としてプロンプトに組み込むのが効果的です。「以下のステップに従って、プレゼン資料の骨子を作成してください。ステップ1: 旅行のコンセプトを提案してください。ステップ2: ...」のように記述します。
    • 出力形式の指定: 「Markdown形式で、各項目を見出しやリストを使って分かりやすく構造化して出力してください。」「各候補地のモデルコースは、日付ごとの見出しを立て、箇条書きで記述してください。」
  2. 完成した「最強のプロンプト」をChatGPT(またはWEBCOACH先生)に入力します。
  3. 生成されたプレゼン資料の骨子(Markdown形式)を確認し、指示通りに情報が構造化されているか、内容は魅力的か、友人たちに提案したくなるようなものになっているかなどを評価します。
  4. もし期待通りでなければ、プロンプトのどの部分(役割設定?文脈の不足?制約が厳しすぎた?ステップの指示が曖昧だった?)を改善すれば良いか考え、修正して再度試してみましょう。この試行錯誤がプロンプトスキル向上の鍵です!

作成した「最強のプロンプト」と、AIが出力した「夢の旅行プラン」の骨子を、ぜひ担当コーチに共有し、アドバイスをもらいましょう。実際に友人にプレゼンするつもりで、内容をブラッシュアップしてみるのも面白いかもしれません。

プロンプト作成のヒント

いきなり完璧なプロンプトを作るのは難しいものです。まずは思いつく要素を書き出し、徐々に肉付けしていくと良いでしょう。以下のテンプレートを参考に、自分なりにアレンジしてみてください。


#役割
あなたは[役割]です。

#指示
以下のステップと制約条件に基づいて、「最高の卒業旅行」のプレゼン資料の骨子をMarkdown形式で作成してください。

#文脈
[旅行の基本情報:誰と、いつ、どこへ(未定ならその旨も)、予算、目的など]

#ステップ
ステップ1:[資料に含めるべき項目1]
ステップ2:[資料に含めるべき項目2]
...
ステップ6:[資料に含めるべき項目6]

#制約条件
- [制約1]
- [制約2]
- ...

#出力形式
Markdown形式で、見出し、リスト、太字などを効果的に使って、プレゼン資料として分かりやすいように構造化してください。
                        
解説:
この章末課題は、これまで学んできたプロンプトの構成要素(役割、指示、文脈、出力形式)と、より高度な指示方法(制約条件、ステップ・バイ・ステップ指示)を総動員して、実践的なアウトプットをAIに生成させる集大成とも言えるものです。

役割設定でAIの専門性を引き出し、
明確な指示でタスクを伝え、
詳細な文脈でAIの理解を助け、
制約条件でアウトプットの方向性をコントロールし、
ステップ・バイ・ステップ指示で複雑な要求を整理し、
Markdown形式で分かりやすい出力を得る。

これらの要素を組み合わせることで、AIはまるで優秀なアシスタントのように、こちらの意図を汲み取った質の高い提案をしてくれるようになります。

最初はうまく指示が伝わらなかったり、期待と違うアウトプットが出てきたりするかもしれません。しかし、そこで諦めずに、プロンプトのどの部分を改善すれば良いかを考え、試行錯誤を繰り返すことが非常に重要です。そのプロセスを通じて、AIとの対話能力、すなわちプロンプトエンジニアリングのスキルが磨かれていきます。

これで「3章 【実践編②】より高度な指示でAIを誘導する」の解説を終わります。
次の章に進みましょう。
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