Illustrator
実践課題1:コーポレートロゴデザイン
INDEX
目次

実践課題1:コーポレートロゴデザイン

この章の目安学習時間: 240分

この章で到達できるゴール

  • クライアントの要望に応じたロゴデザインができる
  • 適切なファイル形式での納品データが作成できる
いよいよ実際の案件を想定した実践的な課題に取り組む時がやってきました。

この章ではコーポレートロゴデザインの制作を通して、クライアントの要望を形にするスキルと、プロとして適切な納品データを作成する方法を身につけていきましょう。

【1-1】要件定義

目安学習時間: 60分

パート1 クライアントブリーフの理解

クライアントからのブリーフ(依頼内容)を正確に理解することは、ロゴデザイン成功の第一歩です。
今回は以下の架空のクライアントブリーフを題材に進めていきます。

クライアントブリーフ例

会社名:エコスマート株式会社(架空の会社名)
業種:環境に配慮した家電製品の販売
ターゲット層:20〜40代の環境意識の高い都市部の家族

会社の特徴:
- 従来の家電製品よりも消費電力を30%抑えた製品ラインナップ
- シンプルでモダンなデザイン
- 高品質ながら比較的手頃な価格帯

ロゴに求めるイメージ:
- 環境への配慮を感じさせる
- 先進的でスマート
- 清潔感がある
- 覚えやすい

使用シーン:
- 会社のWebサイト
- 製品パッケージ
- 名刺・会社案内
- 店舗看板
クライアントブリーフ例

ワーク:情報の読み解きと問い直し

以下の観点から、ロゴに反映すべき「企業の本質」を考えてみましょう。
観点
ヒント
この企業が解決しようとしている社会的課題は?
環境問題、省エネ意識、暮らしのサステナブル化など
どんな価値をユーザーに提供している?
単なる製品販売でなく、生活全体の“選択肢”を提案していないか?
販売形態から考えられる企業の立ち位置は?
例:メーカー、セレクトショップなど。立ち位置によってデザインの方向性は変わるか?
企業理念(仮でもOK)を想像してみよう
社名や特徴から「地球にやさしい暮らしをスマートに提案」などと考えられる?
この企業の“らしさ”とは?
「おしゃれ・合理的・誠実」など抽象的でもよいのでキーワードを抽出する
取り組む時のポイント
  • 本講座の分析に「正解」はありません。大切なのは、どんな視点でこの企業を捉えたか、そしてどんな想いでロゴを考えたかです。
  • 実務では様々な情報から「本質を見つけて言語化」することが重要です。「正解」はクライアントと会話を重ね辿り着きます。
  • 企業の理解、事業の理解、顧客の理解を意識しましょう。

パート2 競合分析

次に、同業他社のロゴデザインを分析しましょう。
これにより業界のトレンドを把握し、差別化ポイントを見つけることができます。

情報整理

競合分析を行う前に情報整理を行いましょう。
観点
ヒント
この企業の業種は?
家電メーカー?セレクトショップ?ブランド型小売?
どのような立ち位置に見える?
例:ロフトやHANDSのようなコンセプトに沿った商品販売する様な会社。自社商品がある場合は、BALMUDA(バルミューダ)BRUNO(ブルーノ)などのメーカー
直接的な競合はどこ?
同じように“環境家電”を提案する販売ブランドや会社は?
間接的な競合(参考ブランド)もある?
例:無印良品(MUJI)、±0などは見せ方や価値提供が近いかもしれない
自社の立ち位置
自社の強み:デザインと価格の両立
競合と比較したときの差別化要素
例:Dysonは値段が高い、Francfrancは機能性が弱い など
ターゲット層の深掘り
ライフスタイル、どんな場所に住んでいる?価値観は?(デザイン?エコ?コスパ?)
取り組む時のポイント
  • ロゴは「デザインの形」だけでなく、企業の信念、価値提供、そして顧客とのつながりを象徴する「顔」の様な物です。
  • 「読み解く・思考・整理する」というプロセスを通じて、「考え抜かれたロゴデザインとは何か?」を経験しましょう。

競合分析の手順

1. 分析するロゴを探す

参考になりそうなブランドを5〜10社ピックアップしましょう。
以下のようなツール・検索ワードを使うと探しやすくなります。
検索に使えるツール
検索ワードの例
Google画像検索
「サステナブル 家電 ブランド ロゴ」「エコ ブランド ロゴ」など
Pinterest
「green logo design」「eco brand identity」
Behance
「eco-friendly logo」「sustainable product brand」など
ヒント:必ずしも「家電メーカー」に限定せず、「環境×デザイン」をコンセプトに持つブランドを広くリサーチしてみましょう。

2. ロゴを「見る視点」

各ロゴを観察するときは、次の5つの観点でチェックしてみましょう:
観点
① 色使い
緑/青/モノトーン?パステル?ビビッド?
② 形状
幾何学的?有機的?直線的?円が多い?
③ タイポグラフィ
サンセリフ?セリフ?太め or 細め?
④ シンボルマークの有無
ロゴタイプだけ?それとも記号あり?どんな形?
⑤ 全体の印象
洗練/フレンドリー/高級感/ナチュラル etc.
5つすべて見なくてもOK。気づいたことを自分なりにメモしよう!

3. 見えてきた「傾向」と「差別化」のヒントをまとめる

参考例:
観察から見えてきたこと
差別化のヒント
緑色は思ったより少なかった
あえて緑を使う or 別の自然感(素材・質感)で見せる
丸みを帯びたロゴが多い
直線的な構成でスタイリッシュさを演出してみる
ロゴタイプだけが多かった
シンボルを加えて印象に残すのも手かも?
ロゴ分析では、エコスマート株式会社のブランド理念を「環境問題への貢献、省エネ、暮らしのサステナブル化」と仮定し、業種よりも企業の理念に注目して、ロゴデザインの比較分析を行います。
  • 環境問題に取り組む企業・団体
  • 理念が類似している同業のセレクト型・販売会社
  • 環境配慮型の商品を展開しているメーカー
このような視点で企業を選出することで、「企業のあり方」と「ロゴデザイン」がどう結びついているかを、多角的に捉えることを目指します。
企業の理念を調べながらの分析は大変な作業ですが、なるべく「ロゴの見た目」で選出しないように心がけましょう!

競合分析の例

1. 日本自然保護協会
  • 色使い:緑色。団体の活動とイメージが合う
  • 形状:手描き風の縦縞で有機的な形状となっている
  • タイポグラフィ:視認性の高いゴシック体が使用されている。日本語名と英語表記を記載
  • シンボルマークの有無:縦縞模様のシンボルマークが使用されている
  • 全体の印象:有機的なモチーフから、優しくやわらかい印象を受ける
 (31601)

2. HANDS
  • 色使い:グリーン(深緑)と ホワイト
  • 形状:筆文字の様な手(Hand)モチーフのシンボル
  • タイポグラフィ:視認性の高いサンセリフ体
  • シンボルマークの有無:シンボルとロゴタイプが縦に配置
  • 全体の印象:シンボルの形状から柔らかさや、自由な印象
 (31604)

3.BALMUDA(バルミューダ)
  • 色使い:黒色のみ
  • 形状:シンボルなし、ロゴタイプのみで完結・直線的でフラット
  • タイポグラフィ:幾何学系サンセリフ体(大文字)
  • シンボルマークの有無:なし
  • 全体の印象:洗練された印象
 (31607)

4. BRUNO(ブルーノ)
  • 色使い:黒色のみ
  • 形状:リボン型のシンボルマーク
  • タイポグラフィ:抜け感のあるサンセリフ体
  • シンボルマークの有無:シンボル(リボン)とロゴタイプの組み合わせ
  • 全体の印象:おしゃれでワクワク感
 (31609)

「たくさん見て、考えて、気づいたこと」こそが、ロゴ制作の“芯”になります。

パート3 デザインアプローチの決定

ここからは、競合分析や要件定義で読み解いた内容をもとに、自分なりの「ロゴの方向性(アプローチ)」を考えていくパートです。
ロゴはただの装飾ではなく、「企業の姿勢・価値・想い」を視覚で伝える重要な要素。
だからこそ、いきなり描くのではなく、言葉とイメージで方向性を整理しましょう。

1. コンセプトを言語化する

例:「スマートなエコロジーを暮らしの中へ」
→ 省エネ性だけでなく、“スマート=洗練された未来感”も伝えるロゴにしたい
取り組む時のポイント
  • この企業は、どんな価値を世の中に届けたい?
  • その価値を一言でまとめると、どんな言葉になる?
  • どんな印象を相手に持ってほしい?

2. デザイン要素を整理する

※例を参考に自分の案を考えましょう。
項目
自分の案
メインカラー
青緑(エコ × テクノロジー)
アクセントカラー
ライトグレー(洗練・清潔感)
形状
リーフモチーフを避け、循環やバランスを抽象化した形
シンボル有無
有:抽象的な図形
タイポグラフィ
モダンなサンセリフ、軽量でクリーンな印象
色・形・文字それぞれに「なぜそれを選ぶか?」の理由を持つと、ロゴに説得力が生まれます。

3. ムードボードを作る

ムードボードとは、デザインの「雰囲気」や「方向性」を視覚的にまとめたボード(資料)のことです。
ロゴをデザインする前に、「どんなイメージにしたいか」「どんな印象を与えたいか」を整理するために使います。
ムードボードに入れるもの(例)
カテゴリ
内容例
カラー
カラーパレットや好きな配色の画像
フォント
使用予定フォントのサンプル画像、文字の雰囲気
シンボル
使いたい図形やロゴの形の参考例
写真・素材
空気感のある写真(自然・都市・生活感など)
キーワード
コンセプトやイメージワード(例:未来感・やさしさ・信頼感)
取り組む時のポイント
  • おしゃれに作る必要はありません。
  • 自分の思考を“見える化”するための資料です。
  • デザインの“答え”ではなく、“ヒント”を集める場所です。
【参考:デザインアプローチのムードボード】
 (31631)

【1-2】デザイン制作

目安学習時間: 120分

パート1 アイデアスケッチ

いよいよ、ロゴデザインの形を考えるステップです。
この段階では「完璧なデザイン」を目指すのではなく、ひらめき」や「可能性」をたくさん出すことがゴールです。
ポイント1. 量を出すことが大事!
  • 最初から完成度を求めず、20〜30案のラフを素早く描いてみよう
  • 思いついたことをどんどん紙に描き出すのが◎
  • 良い/悪いを判断せず、とにかく“出す”ことが創造力の土台
ポイント2. 手書きから始めよう
  • Illustratorなどのツールを使う前に、紙とペンで自由にスケッチしてみよう
  • デジタルだと形を整えようとしすぎて、発想が固定化されやすい
  • 手描きなら「変な形」も「面白い発想」も残せる!
ポイント3. 視点を変えて描いてみよう
アプローチ
説明
ロゴタイプのみ
文字を活かしたシンプルな構成(フォント・文字組の工夫)
シンボルマークのみ
図形だけで表現するタイプ(抽象・具象どちらもOK)
ロゴタイプ+シンボル
文字+記号を組み合わせた構成(応用型)

スケッチしたアイディアから3〜5案をピックアップ!

描いたスケッチの中から、「これは面白そう!」「可能性を感じる!」と思う案を3〜5個選びましょう。
このあと、Illustratorで本格的に形にしていくベースになります。
アイデアスケッチ例
 (31645)

パート2 ロゴマークの作成

ここでは、選んだアイデアスケッチをもとに、Illustratorを使って実際にロゴマークを制作していきます。
ツールの操作に慣れていない人でも安心して進められるよう、手順ごとに整理しています。
Step1. 新規ドキュメントを作成しよう
設定項目
内容
ドキュメントサイズ
1000px × 1000px(正方形)
カラーモード
RGB(※印刷用にしたい場合は後でCMYKに変更可)
解像度
72ppi(画面表示用で十分)
Step2. ガイドとグリッドを表示しよう
レイアウトの整列やバランス調整がしやすくなります。
  • 定規を表示
Ctrl + R(Windows) / Cmd + R(Mac)
  • グリッドを表示
Ctrl + '(Windows) / Cmd + '(Mac)
 (31659)

  • ガイド設定(Illustrator→環境設定→ガイドとグリッド)
→ 「グリッド線を100pxごと」に設定するのがおすすめ
 (31775)

Step3. ロゴマーク(シンボル部分)を作ろう
アイデアスケッチを元に、抽象的な図形で
「エコ」と「テクノロジーの融合」をイメージした形を作成します。
 (31665)

使用ツール
  • 基本図形ツール(楕円形・長方形など)
  • ペンツール(自由な線の作成)
  • パスファインダー(図形の合体や切り抜き)
形は整っていなくてもOK!まずは「意味のある形」を目指してみましょう。
Step4. ブランドカラーを適用しよう
スウォッチパネルを使って、これらのカラーを設定し、図形に適用しましょう。
 (31670)

色の役割
カラーコード例
メインカラー
#2AADA1(青緑)→ 環境×テクノロジーの象徴
アクセントカラー
#E5E5E5(ライトグレー)→ 清潔感・洗練さ
Step5. ロゴタイプ(文字)を入れよう
以下を参考に自分の案を反映させましょう。
項目
内容例
フォント
Montserrat(または近いモダンなサンセリフ体)
入力する文字
入力する文字:「ECOSMART」
カーニング(文字間隔)を調整して、読みやすさとバランスを整えましょう。
Step6:ロゴマークと文字を組み合わせよう
  • シンボルマークとロゴタイプの大きさ・位置関係を調整します
  • 整列パネルで中心揃えや余白の統一をする
取り組むポイント
  • 完璧を目指さなくてもOK!まずは“形にして伝える”ところから始めよう
  • 形や色は「意味」があるからこそ人の心に届く
  • ツールの使い方は“目的のための手段”
作成例:
 (31681)

パート3 カラーバリエーション展開

ロゴの基本形が完成したら、次はさまざまな使用シーンに対応できるよう、カラーバリエーションを作成していきます。
広告、印刷物、Webサイト、看板など背景の色や印刷条件が異なる中でも、ロゴが正しく伝わるようにするのがこの作業の目的です。

作成するカラーバリエーションの例(4種類)

バージョン名
説明
フルカラー
青緑(メインカラー)+ライトグレー(アクセントカラー)を使用した標準のロゴ
モノクロ
白黒印刷でも視認性が保てる、100%ブラックまたは白のみの構成
ネガティブ(黒文字バージョン)
白い背景で使用するための、ロゴを黒に変換したバージョン
1色バージョン
単色印刷(例:シルクスクリーン印刷など)で使える、1色のみで構成されたロゴ

Illustratorでのカラーバリエーション展開作業手順

Step1. アートボードを複製しよう
  1. アートボードツール(Shift + O)を選択
  2. 複製したいアートボードを右クリック → 「アートボードを複製」
  3. 合計4つのアートボードを用意し、それぞれにバージョンを作成
Step2.カラーの変換を行おう
バージョン
操作方法のポイント
モノクロ
背景を黒に変更 → すべての要素を「白」に変更
ネガティブ
背景を白に変更 → すべての要素を「黒」に変更
1色バージョン
全パーツを同一カラー(例:青緑1色、または黒1色など)に変更
作成時のチェックポイント
  • どのバージョンでも ロゴの印象や意味が変わっていないか?
  • 背景が変わっても、読みやすさ(視認性)が保たれているか?
  • 小さなサイズにしても文字やシンボルがつぶれないか?
実務では、名刺・SNS・チラシ・Tシャツ・紙袋など、あらゆる場面でロゴが使われます。
そのため、どんな場面でも同じブランド印象を保てるロゴを準備することが大切です。
見た目の統一感だけでなく、あらゆる場面で信頼感を届けるデザインを目指しましょう!
作成例:
 (31694)

【1-3】納品データ作成

目安学習時間: 60分

パート1 各種ファイル形式での保存

ロゴデザインが完成したら、次はクライアントがさまざまなシーンで使えるように、適切な形式で納品データを準備します。

これはプロのデザイナーとして欠かせないスキルです。
なぜ複数のファイル形式が必要なの?
  • ロゴは印刷物、Web、社内資料、SNSなど、多種多様な場面で使われます。
  • だからこそ、それぞれに合った正しい形式での納品が必要です。

主な納品ファイル形式とその用途

ファイル形式
主な用途
特徴
AI(.ai)
編集用の元データ
Illustratorで編集可能。オリジナルファイルとして保存必須。
EPS(.eps)
印刷・入稿用
印刷業界で広く使用。多くのソフトで開くことができる。
PDF(.pdf)
校正・閲覧・印刷用
Illustratorの有無やパソコンのOSに関わらず制作物を確認してもらうことができる。
SVG(.svg)
Webサイト・UI用
ベクター形式で劣化なし。レスポンシブWebサイトに最適。Webサイトの素材として活用できる。
PNG(.png)
Webサイト・資料用(透過)
背景透過可能。軽量で扱いやすい。Webサイトやオフィス文書での使用に適している。
JPG(.jpg)
オフィス文書・メール添付
ファイルサイズが比較的小さい。背景の透過は不可。Webサイト上の写真や、オフィス文書での使用に適している。(※印刷プレビュー用途での使用は、画質劣化の可能性があるため注意が必要)
「ロゴを使う相手」のことを考えた形式をそろえるのが、信頼できるデザイナーの基本です!

ファイル保存の手順(Illustratorでの操作)

保存先として、あらかじめ下記のフォルダ構成を作成しておきましょう。
EcoSmart_Logoという名前のフォルダを作成しその中に下記の名前でフォルダを作成しましょう。
01_オリジナルファイル
02_印刷用
03_WEB用
04_ガイドライン
フォルダ名
 (31706)

  1. AI形式
  • ファイル → 別名で保存 → 「書き出し形式」で.ai形式を選択
  • オプション:「PDF 互換ファイルを作成」にチェック
  1. EPS形式(印刷入稿用)
  • ファイル → 別名で保存 → EPS形式を選択
  • 設定:カラーモード CMYK、プレビュー形式:TIFF(8bit)
  1. PDF形式(印刷+閲覧用)
  • ファイル → 別名で保存 → .pdf形式
  • プリセット:高品質印刷 を選択
  1. SVG形式(Web用)
  • ファイル → 書き出し → 書き出し形式 → .svg形式を選択 → 「アートボードごとに作成」にチェック
  • スタイル:内部CSS、フォント:SVG
  1. PNG / JPG形式(画像用)
  • ファイル → 書き出し → PNGまたはJPGを選択 → 「アートボードごとに作成」にチェック
    • 解像度:72ppi(Web用)/300ppi(印刷用)
  • ファイル → 書き出し → スクリーン用に書き出し
    • 0.5x:半分、1x:等倍、2x:2倍
    • サイズ:例:500px / 1000px / 2000px などで書き出し
    • 拡張子:jpg、png、pdf、svgなど選択可能
チェックポイント
  • ファイル名に形式が分かるような命名(例:ecosmart_logo_fullcolor.ai
  • RGB/CMYKの使い分けをミスしない
  • 各ファイルをフォルダ分けして納品用パッケージにしておくと◎

パート2 ガイドライン作成

ロゴが完成したら、そのロゴを「正しく一貫して使ってもらうため」のルール=ロゴガイドラインを作成します。
ガイドラインは、クライアントや関係者がロゴの印象を損なうような誤った使い方(変形、色の変更など)をするのを防ぐ、非常に重要な資料です。
シンプルでわかりやすく、最低限のルールを伝えることが大切です。

ガイドラインに含めるべき項目

項目
内容
ロゴの基本情報
ロゴの正式名称と用途(例:Web、名刺、パッケージなど)
コンセプトの説明
ロゴに込めた意図やメッセージを簡潔に記述
クリアスペースの指定
ロゴの周囲に必要な「余白」の定義 → X-height(文字の高さなど)を基準に図解
最小使用サイズ
印刷用:mm単位、Web用:px単位で読みやすさを保てる最小サイズを指定
カラー仕様
ブランドカラーの各種コードを明記:- CMYK(印刷) - RGB(画面) - HEX(Web) - Pantone(特色印刷用)
禁止事項
ロゴを誤って使ってはいけない例を提示:形の変形・不適切な背景での使用・色の変更など

ガイドラインの作成手順

Step1. 新規ドキュメントを作成
設定
内容
サイズ
A4(210mm × 297mm)
カラーモード
CMYK(印刷用)
解像度
300ppi
Step2. レイアウト設計
  • グリッド・ガイドを活用して、見やすく整理されたページ構成にする
  • タイトルや見出し、本文のスタイルを統一し、プロの仕事に仕上げる
  • 1ページで収めてもOK(2ページ以上になる場合は章立てを意識)
Step3. 各項目をビジュアルで補足
ビジュアル例
説明
正しい使用例
ロゴのフルカラー表示や適切な背景例など
NG使用例
形の変形、色の変更、背景とぶつかる例など
カラー指定
スウォッチチップとコードを横並びで表示
ガイドラインは伝えるための資料
  • 誰が読んでも理解できることが大切です。
  • 実務では、外注先や印刷会社がこのガイドラインを見て作業することもあります。
  • 「ブランドの軸」を守るために必要なため、明瞭かつ正確な表現を心がけましょう。

参考

LINE APP ICON GUIDELINE:https://www.line.me/ja/logo
【参考:ロゴガイドラインのサンプル】

パート3 データパッケージの作成

ロゴやガイドラインが完成したら、最後はすべてのファイルを整理し、クライアントに渡す「納品ファイル」を作成します。
このステップは、ただデータを揃えるだけでなく、クライアントが迷わず・安心して使えるように設計することが目的です。

パッケージのフォルダ構成(おすすめの例)

EcoSmart_Logo/
├── 01_オリジナルファイル/         … AIファイル(編集可能な元データ)
├── 02_印刷用/               … EPS, PDF, 高解像度TIFFなどの印刷用
├── 03_WEB用/                … SVG, PNG, JPGなどのWeb用
├── 04_ガイドライン/             … ロゴガイドライン(PDF)
└── README.txt             … 各フォルダの概要や、ファイルの使用方法に関する簡単な説明を記載
フォルダ構成

ファイル名のルールを統一しよう

クライアントや印刷会社が迷わないように、命名規則を一貫させることが重要です。
会社名_ロゴタイプ_カラー_サイズ_日付
命名テンプレート
EcoSmart_Logo_FullColor_1000px_240521.png  
EcoSmart_Logo_Mono_Black_500px_240521.svg 
.
.
.
例:03_WEB用
日付は「YYMMDD」形式(例:240521=2024年5月21日)が実務では好まれます。

圧縮して納品用ZIPファイルを作成

  • すべてのフォルダを1つのZIPファイルに圧縮して納品用にまとめます
  • ファイルサイズが大きい場合は、以下のようなファイル転送サービスの使用も検討しましょう。
    • Google Drive
    • Dropbox
    • ギガファイル便(国内向け)
チェックポイント(納品前の最終確認)
  • フォルダ名・ファイル名にミスやブレがないか?
  • すべてのバリエーション(色・サイズ)が揃っているか?
  • ガイドラインは含まれているか?
  • READMEにわかりやすい説明が入っているか?
データパッケージは、クライアントにとって「ブランド資産」です。
美しいロゴと同じくらい、整理された納品物には信頼感とプロ意識がにじみます。

実践課題1のまとめ

この課題を通じて、実務に直結するロゴデザインの一連のスキルを体系的に習得しました。
ロゴは「描く」だけでなく、「考え、伝え、使われるために設計する」ものだと実感できたはずです。

身についたスキル一覧

要件定義・戦略立案スキル
  • クライアントブリーフの読み解きと整理
  • 競合分析を通じた差別化の視点
  • ブランドの方向性を定めるデザインアプローチの決定
デザイン制作スキル
  • アイデアスケッチによる発想展開
  • Illustratorを活用したロゴマークの構築
  • 使用シーンを想定したカラーバリエーションの展開
納品&ドキュメントスキル
  • クライアントが安心して使えるように整理されたデータ形式での保存
  • ブランドを守るためのロゴガイドラインの作成
  • プロフェッショナルな印象を与える納品用パッケージの構成
実務とのつながり
  • これらのスキルは、実際のロゴ制作案件(報酬目安:30,000円〜50,000円)に対応できる基礎力となります。
  • クライアントに「安心して任せられる」と感じてもらえる信頼の土台をつくることができました。
これで「実践課題1:コーポレートロゴデザイン」の解説を終わります。
次の章に進みましょう。
WEBCOACH | キャリアチェンジまでの全てを学ぶマンツーマンWEBスクール
© 2020 by WEBCOACH