0. はじめに
このマーケティング概論においては、マーケティングの根本的な考え方、思想について説明していきます。
マーケティングの根本を理解し応用できる人材が最も市場価値が高いです。
1. マーケティングとは
マーケティングとは、簡単に言うと「プロダクトやサービスを販売するための仕組みづくり」です。
よくマーケティングは「市場調査だ!」「宣伝広告だ!」などの声を聞きますが、それらはあくまでプロダクトやサービスを販売するために必要な「手段」でしかありません。それらをうまく活用して「売れる仕組みを作ること」これがマーケティングの根幹だと考えています。
当たり前のことですが、企業や個人がどれだけ良質なプロダクトやサービスを開発したところで、それを顧客に対して実際に販売していかないとビジネスとして成立しません。
その意味で、マーケティングとは「ビジネスの根幹を成すもの」と言えます。
2. マーケティングの概要
ビジネスの根幹を成すマーケティングですが、大きく以下の3つについて検討する必要があります。
a. 誰に対して(Who)
b. どんな価値を(What)
c. どのように提供するか(How)
以上の3点をさらに深掘りして考えていきます。
a. 誰に対して
では、そのために最初に必要なことは何か?
誰に売るかを考えることです。これから「なぜそうなのか」をご説明します。
なぜ「誰に対して」を初めに考えるのか
一体どんなことが起きるでしょうか?
例えば、最先端のAI技術を解説する専門書を、プログラミングに全く興味のない小学生に販売しようとしても、売れる可能性は低いでしょう。
このように、価値のある商品があったとしても、「誰に対して売るのか?」それを誤ってはマーケティングが成功することはないのです。
どんなことが起きるでしょうか?
例えば、車の場合を考えましょう。「アクセルをかけて数秒でスピードが最大200キロでる」そして「燃費が非常に良い」という価値を有している車について、「爽快なスピード感!たった数秒で200キロが出せる」という風に価値を提供したとします。
この場合、「燃費の良い車に買い替えたいと思っている、家族を持つ主婦層」には全く売れることはありません。
このように、「誰に対して」がはっきりしていないと、本来であれば正しく価値を伝えれば売れるはずだった商品も売れなくなってしまいます。
どうやって「誰に対して」を考えるのか
「XXという価値があるから、〇〇な人に売れる可能性がある」と考えることが、「誰に対して」を考えることの根本にあるからです。
このときに大事なのは、「商材の価値」を考えるのではなく、「商材の特徴」を考えることです。
商材の特徴が「誰に対して価値があるのか」と考えることで価値があるものに変化するからです。
まずは、売る商材のマーケットを知らなくてはなりません。
マーケットとは、「その商材を売るための見込み」です。ここについてもたくさんの考え方があるかと思いますが、WEBCOACHではそう定義しています。
例えば、もし靴を販売するとした場合に、その市場規模は「靴を履く人の数の分だけある」と考えるのが普通です。しかし、我々が「見込み」と表現しているのは、例えば、靴を販売する会社からすれば、靴を履く文化のないところでも靴が売れる見込みのある市場になるからです。
このように、正しく市場を調査するだけでその商材の売れる見込みが変わってくるため、市場規模を正しく把握する市場調査が非常に重要になってきます。
なんらかの商材を販売するには、その商品にニーズがなくてはなりません。ですので、実際に想定されるニーズを網羅的に分析する必要があります。
ここでは「ファンダメンタル×テクニカルマーケティング」で紹介されているユーザーニーズの分析方法を紹介しますが、網羅的にニーズを分析できるのであれば、「どれが正解」というものはないと考えています。
- 1. 必要性に気づいていない
- 2. 必要性に気づいているが、それは一時的なものだと思っている
- 3. 必要性に気づいており、一時的なものだとも思っていないが何も手を打っていない
- 4. 色々と検討し始めている
- 5. 色々と検討し、かなり詳しい状態
- 6. 対策を打ち始めた
- 7. 既にお気に入りはあるが、よりいいものを探している
- 8. お気に入りの商品はあり満足している
- 9. 色々使ったが、結局満足できるものはなかった
また、ユーザーニーズを分析する手段の一つとして、ユーザーインタビューというものがあります。
ユーザーインタビューとは、商品やサービスに対する意見をサービスの愛用者や想定ユーザーから聞くことであり、目的としては、ユーザーの潜在的なニーズやサービスの課題等を分析することです。
ユーザーインタビューにおいて重要な点は以下のようになっています。
当日に至るまでに電話やメールなどでコミュニケーションを取ることはもちろん、当日の質問の際に相手の話を逸らさず、ゆっくり相手の回答を引き出しながら話していくことが非常に重要になります。
質問に対して、補足質問をしなければ話してくれない場合も多いです。実際に時間内で質問できる量以上の質問を用意し、全体として形式的な質問形式ではなく、コミュニケーションのような形で進むと質問に答えやすくなり、良いでしょう。
よくありがちなミスとして、欲しい回答に対して無意識に誘導的に質問してしまう例があります。あくまで相手が思っていることを正直に引き出したいため、そういったバイアスをかけずに、「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、相手に文章で回答してもらう必要のある形の質問を心がけましょう。
⑤ ペルソナ分析
ペルソナ分析というと、「30代・男性・会社員・未婚・大卒・趣味はゴルフ・仕事はエンジニア・北海道在住」などとペルソナを細かく設定して、その人に刺さるようなキャッチコピーを考えてしまう人がいますが、これは間違いです。 なぜなら、ここまで具体的なペルソナに刺さるキャッチコピーでは、拾える層が極端に狭くなってしまうからです。
ですから、大切なのは、具体的な顧客の情報から、顧客に対する解像度(理解)を深めた上で、自社の商材の提供する価値に対して影響があると考えられる部分にのみ注目し、マーケティングに活かすのが大切です。
例えば、脱毛などの商材の場合には、脱毛で得られる利益から逆算し、「毛深さに悩んでいる人」等の粗さで問題ありません。つまり、具体的なペルソナから、潜在顧客との共通点を導き出すことがマーケティングにおいては重要です。
b. どんな価値を
誰に売るかが決まれば、いよいよ商品の特徴の中の、どんな価値を打ち出すかを考えることになります。
先ほどの車の例のように、ターゲットによって押し出すべき価値が変わってきます。
USPを考える
USPとは、商品やサービスが持っている独自の強みを表すもので、「顧客に対して自社だけが提供できる利益」と言い換えられます。よくUSPの候補となるのは以下のようなものがあります。以下の内容を参考にサービスの特徴を整理してみると、USPがわかることが多いです。
- 1.品質の高さ
- 2.スピードの速さ
- 3.サービスの充実
- 4.カスタマイゼーションの可能性
- 5.保証の充実度
- 6.ラインナップの広さ
- 7.利便性
- 8.専門性
USPからキャッチコピーを考える
どんな価値を伝えるのかは、ターゲットと商品の持つUSPから逆算することも大切です。
売りたい商材は、どんな独自性を持つでしょうか?
まずは商材と改めて向き合い、他社に優る、もしくは今までにないような独自性はあるか?権威性はあるか?価格は安いのか?などを分析することで、自ずとどういった価値を押し出していくかを考えることができます。
c. どのように提供するか
①「商材の価値分析」, ②「市場調査」までを正しく分析することができていれば、狙っているターゲットには、真っ直ぐなワードでも刺さるものです。
ですが、もし②の段階で他社に勝るような明確な価値がない場合には、「どのように提供するか」を検討し、工夫を施す必要性があります。
ユーザー目線になる
広告では、伝えたいことをそのまま書くだけではお客さんは読んでくれません。
よく言われるのは、「最初の1~2行で続きを読むか判断する」ということです。よく広告などを見ていると1文目にインパクトのある文言がないでしょうか?あれは続きを読んでもらうための「どのように提供するか」の部分の工夫の一つです。
また、結局伝わらなくては意味がないため、インパクトのある文言やその後の文章を考えるときでも、ユーザーの視点に立って文言を選ぶ必要があります。
具体的には、「ターゲットとするユーザーはXXを検討しているはずなので、○○の画像を持ってきて、その上でXXという文言を持ってくればスッと意味が入ってくるだろう。」と相手がどんな状況で、どんなことを考えて広告を見るのかというところまで考えて「どのように提供するか」を考えなくてはいけません。
客観的な視点を持つ練習をする
マーケティングを行うときに必要なのは、ユーザー目線になることですが、意外とこれが難しいです。
客観的な視点とは、つまり自分以外の誰かの目線に立てればいいわけなので、普段から「自分のことを怒っているこの人は自分のことをどう見ているのだろう」と他人の視点に立って考える癖をつけることが大切です。
3. 最後に
マーケティング概論では、マーケティングを学ぶ上で知っておいて欲しい考え方について「マーケティングの概要」として説明しました。
これからの学習では、まずマーケティングでは専門的な用語が多数登場します。マーケティングの世界では、知っておかなければわからないことを正しく検索することすらできません。まずはマーケティングに必要な用語を一通り網羅的に抑え、その上で具体的なマーケティングの方法を学んでいきましょう。