Premiere Pro
番外編①:動画の書き出し設定
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番外編①:動画の書き出し設定

Premiere Proで作成した映像作品を書き出す際、用途によってさまざまな書き出し設定をすることになります。
近年Web・SNS媒体の動画が主流になっていますが、DVD・Blu-ray Discなどのメディアへの書き出しも少なくはありません。
ここでは書き出し設定に必要な項目の説明や、用途による書き出し設定の一例をご紹介します。
※内容は専門的なものになりますので、興味のある方以外は読み飛ばしていただいて結構です。

【17-1】設定項目一覧

目安の学習時間:5分

メインで使用する設定項目

1. ファイル名:書き出すファイルの名前を設定できます。
2. 場所:クリックすると、ファイルの保存場所と名前を設定できます。
3. プリセット:Premiere Proで用意されている書き出し設定をプルダウンメニューより選択することができます。
4. 形式:さまざまなビデオ形式とオーディオ形式を選択することができます。
5. ビデオ:解像度、フレームレート、縦横比、ビットレートを選択することができます。
6. オーディオ:オーディオコーデック、サンプルレート、チャンネル、ビットレートを選択することができます。
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【17-2】ファイル・プリセットの設定

目安の学習時間:5分

ファイル形式

ファイル形式とは、ファイルの中身であるデータの記録方式、またはファイルの種類を指します。
Premiere Proで書き出せるデータ形式の一例を紹介します。
動画データの形式
  • AVI:Microsoft社開発の動画形式で、Windows環境で広く使用。
  • H.264:2003年に国際規格化され、MPEG-2の2倍の圧縮率を誇る。PC、スマホ、Web、YouTubeなど幅広く対応。
  • H.264 Blu-ray:Blu-rayディスク用の高解像度ビデオ規格(AVC)。
  • MPEG2-DVD:DVD用の形式。デジタルTV放送やDVDで使用される圧縮・符号化標準。
  • QuickTime:Apple社開発のマルチメディア技術。
  • Windows Media:Microsoft社のマルチメディア技術で、WMVというビデオコーデックがある。
画像データの形式
  • GIF:複数の画像を繋げてアニメーションのように表示する画像形式。
  • JPEG:デジタル画像の保存や共有に広く使用されている形式。
  • PNG:背景透過や半透明表現が可能なラスター画像形式で、Webデザインでよく使用される。
  • TIFF:グラフィック処理で使用されるビットマップ形式で、複数画像を一つのファイルに格納可能。
音声データの形式
  • AAC:デジタルオーディオの高圧縮率形式。MP3より高音質で、Apple製品、Bluetooth、iTunes、YouTubeなどで採用。
  • MP3:代表的な音声圧縮規格。CD音質をデータ容量約10分の1に圧縮可能。
  • WAV:非圧縮の音声形式。音質劣化がなく、ライブやレコーディングなど高音質要求時に適している。

プリセット設定

プリセットとは、動画の書き出し設定のフォーマットのようなものです。
Premiere Proには多くのプリセットが用意されており、書き出す用途に合わせてプリセットを選択します。
よく使用されているプリセットの一例
  • YouTube 1080p フル HD:1920×1080ピクセルの解像度。TV放送やスマートフォンで一般的な高画質設定。「高品質 1080p HD」という類似プリセットもある。
  • 高品質2160p 4K:3840×2160ピクセルの解像度。フルHDの4倍の画素数と表示領域を持つ。
  • NTSC DV ワイドスクリーン:720×480ピクセルの解像度。DVDフォーマット用。通常の4:3比率のNTSC DVと異なり、16:9のワイド比率で録画された映像。
  • HD 1080i 29.97:1920×1080ピクセルの解像度。Blu-rayディスク作成用の形式。規格に準拠したデータでないと一般のプレイヤーで再生できない場合がある。

【17-3】ビデオの設定

目安の学習時間:10分

基本ビデオ設定

基本設定

  • ソースに合わせる:
    • 書き出し設定をソース設定に自動的に合わせる(完全一致しない場合は最適値を使用)
  • フレームサイズ:
    • 一般的な選択肢: 4K、UHD、クアッド HD、フル HD、HD、SD NTSCワイド、SD NTSC
    • 「カスタム」で独自サイズを設定可能
  • フレームレート:
    • 1秒あたりの表示フレーム数。高いフレームレートで動きが滑らかに
    • ソースと異なると不自然な動きが生じる場合あり

詳細設定

  • フィールドオーダー:
    • プログレッシブかインターレースか選択
  • 縦横比:
    • ピクセル縦横比(PAR)の設定
    • HD/4K/8K: 通常は正方形ピクセル(PAR 1.0)
    • NTSC/PAL: 長方形ピクセル
  • 最大深度でレンダリング:
    • 有効時: 最大ビット深度でエフェクト処理、バンディング減少
    • 注意: エンコード時間が長くなる場合あり
  • 最高レンダリング品質:
    • 品質向上だが処理時間増加
    • GPU対応システムでは自動適用
  • アルファチャンネルのみ:
    • 透明度情報をグレースケールで出力
  • 補間方法:
    • フレームサンプリング: フレーム複製/削除(シンプルだが途切れる場合あり)
    • フレームブレンド: 隣接フレームとブレンド(よりスムーズ)
    • オプティカルフロー: ピクセル動き検出による補間(最もスムーズだが条件によりエラー発生の可能性あり)

エンコード設定

エンコードとは?
  • エンコードはデータを規則に基づいて変換することを指し、「符号化」とも呼ばれます。
  • 動画、文字コード、HTML、XML、URLなど幅広い場面で使用されています。

主要設定項目

  • パフォーマンス (H.264/HEVC):
    • ハードウェアによる高速化:デフォルト設定、利用可能なハードウェアでエンコード時間短縮
    • ソフトウェアのみ:システムが特定設定をサポートしない場合は自動的に切り替わる
  • プロファイル (H.264):
    • ベースライン:ビデオ会議など高速デコードが必要な用途向け
    • メイン:SD放送で使用される一般的プロファイル
    • ハイ:ほとんどのHDデバイスでサポートされる広く使用されるプロファイル
    • ハイ10:10ビットデコード対応の拡張プロファイル
  • レベル:
    • フレームサイズ、レート、ビットレートなどの制限を設定
    • 高レベルほど大きな解像度をサポート
    • 不明な場合は「ソースに合わせる」を選択すると最適設定を自動選択
  • HDRグラフィックホワイト(ニッツ):
    • HDRシーンでの白色の目標輝度値
    • ディフューズホワイトとも呼ばれる
    • ITU推奨: 波形上75% IREに白カードが当たるよう露出設定
    • テキストなどの白色グラフィック要素も75%に設定推奨
    • 100%輝度設定(HLG:1,000ニッツ、PQ:10,000ニッツ)では明るすぎて視認性低下の可能性あり

ビットレート設定

ビットレートとは?
  • 1 秒あたりのビット数で測定されるビデオまたはオーディオ信号のデータ量です。
  • 一般に、ビットレートを高くすると、ビデオとオーディオの品質が向上し、ビットレートを低くすると、低速のインターネット接続で簡単に再生できるメディアが作成されます。

エンコーディング方式

  • CBR(固定ビットレート):
    • 一定のデータレートを維持
    • メリット: 書き出し時間の短縮
    • デメリット: 複雑なシーンでは品質低下の可能性
  • VBR(可変ビットレート)映像/音声の複雑さに応じてデータレートを動的調整:
    • メリット: 小さいファイルサイズでも全体的な品質向上
    • デメリット: 書き出し時間が長くなる傾向
  • VBRの処理方法:
    • 1パス: 素材を一度分析して可変ビットレートを計算
    • 2パス: 素材を往復して分析、効率向上・高品質(時間増加)
  • ターゲットビットレート(Mbps):
    • エンコード全体のビットレート設定値
    • 高ビットレート→高品質・大容量、低ビットレート→低品質・小容量

【17-4】オーディオの設定

目安の学習時間:5分

オーディオ形式

オーディオの設定にはさまざまな項目があります。
オーディオ形式設定
  • H.264、HEVC(H.265)、MPEG2-DVD などの形式では、複数のオーディオ形式がサポートされています。
  • これらの形式では、メニューが表示され、様々なオーディオ形式への書き出しができます。
基本オーディオ設定
  • オーディオコーデック:
    • 音声圧縮の方式を指定
    • 非圧縮オーディオ: 最高音質だが大容量必要
    • 形式により選択可能なコーデック数は異なる
  • サンプルレート:
    • オーディオがデジタル値に変換される頻度(Hz単位)
    • 高サンプルレート:高音質だがファイルサイズ増大
  • チャンネル出力:
    • ファイルに含めるオーディオチャンネル数
    • 一般的な設定:
      • モノラル::1チャンネル
      • ステレオ::2チャンネル
      • 5.1::6チャンネルサラウンドサウンド

【17-5】用途に合わせた動画の書き出し例

目安の学習時間:15分

ここでは一般的によく使用する書き出し設定の例を紹介します。

高画質なweb用データの書き出し設定(YouTube、Facebook、その他SNS媒体)

基本設定

  • プリセット:YouTube 1080p フル HD(基本ビデオ設定以降の項目を入力していくとカスタムに変化します)
  • 形式:H.264

基本ビデオ設定

  • フレームサイズ:フル HD(1920×1080)
  • フレームレート:29.97
  • フィールドオーダー:プログレッシブ
  • 縦横比:正方形ピクセル(1.0)
  • 最大深度に合わせてレンダリング:チェック
  • 最高レンダリング品質を使用:チェック
  • アルファチャンネルのみレンダリング:なし
  • 補間:フレームサンプリング

エンコード設定

  • パフォーマンス:ハードウェアエンコーディング
  • プロファイル:ハイ
  • レベル:4.2
  • HDR グラフィックホワイト(ニッツ):203(75% HLG,58% PQ)

ビットレート設定

  • ビットレートエンコーディング:CBR
  • ターゲットビットレート(Mbps):50

詳細設定

  • キーフレームの間隔:なし

VRビデオ

  • VRビデオとして処理:なし

オーディオ形式設定

  • オーディオ形式:AAC

基本オーディオ設定

  • オーディオコーデック:AAC
  • サンプルレート:48000Hz
  • チャンネル:ステレオ

ビットレート設定

  • ビットレート(kbps):320

参考画像

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DVD用データの書き出し設定

基本設定

  • プリセット:NTSC DV ワイドスクリーン(基本ビデオ設定以降の項目を入力していくとカスタムに変化します)
  • 形式:MPEG2-DVD

基本ビデオ設定

  • 品質:100
  • フレームサイズ:SD NTSC(720×480)
  • フレームレート:29.97
  • フィールドオーダー:偶数から
  • 縦横比:ワイドスクリーン 16:9
  • 最大深度に合わせてレンダリング:チェック
  • テレビ方式:NTSC
  • 最高レンダリング品質を使用:チェック
  • アルファチャンネルのみレンダリング:なし
  • 補間:フレームサンプリング

ビットレート設定

  • ビットレートエンコーディング:CBR
  • ターゲットビットレート(Mbps):9

GOP設定

  • Mフレーム(前方予測フレームの数、動き予測処理の頻度に影響):3
  • Nフレーム(GOPサイズ、キーフレーム間の距離を決定):15

オーディオ形式設定

  • オーディオ形式:MPEG

基本オーディオ設定

  • オーディオコーデック:MPEGオーディオ
  • サンプルレート:48000Hz
  • サンプルサイズ:16ビット
  • オーディオレイヤー:MPEG1 レイヤーIIオーディオ
  • オーディオモード:ステレオ

ビットレート設定

  • ビットレート(kbps):224

参考画像

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Blu-ray用データの書き出し設定

基本設定

  • プリセット:HD 1080i 29.97(形式の項目を入力するとカスタムに変化します)
  • 形式:H.264 Blu-ray

基本ビデオ設定

  • 品質:100
  • ビデオのサイズ:1920×1080
  • フレームレート:29.97(「テレビ方式」を変更すると変化します)
  • フィールドオーダー:奇数から
  • 縦横比:正方形ピクセル(1.0)
  • 最大深度に合わせてレンダリング:チェック
  • テレビ方式:NTSC
  • プロファイル:ハイ
  • レベル:4.1
  • 最高レンダリング品質を使用:チェック
  • アルファチャンネルのみレンダリング:なし
  • 補間:フレームサンプリング

ビットレート設定

  • ビットレートエンコーディング:CBR
  • ビットレートレベル:カスタム
  • ターゲットビットレート(Mbps):35

詳細設定

  • キーフレームの間隔:なし
  • マクロブロック適応型フレームフィールドコーティング:なし

オーディオ形式設定

  • オーディオ形式:PCM

基本オーディオ設定

  • サンプルレート:48000Hz
  • チャンネル:ステレオ
  • サンプルサイズ:16ビット

参考画像

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これで「番外編①:動画の書き出し設定」の解説を終わります。
次の章に進みましょう。
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