AIを味方にするプロンプトエンジニアリングの基本
1章 分解すれば怖くない!良いプロンプトの"公式"
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1章 分解すれば怖くない!良いプロンプトの"公式"

この章の目安学習時間:30分

同じAIを使っているのに、なぜ人によって結果がこんなに違うのか?
答えは「プロンプト」にあります。
たった4つの要素を知るだけで、AIは別次元のパートナーに変わります。
あなたも「AI使いこなし上手」の仲間入りです。

この章で到達できるゴール

  • 良いプロンプトと悪いプロンプトが、なぜ出力に決定的な差を生むのかを、具体的な事例を通じて明確に理解できる
  • どんなAIにも通用し、かつ、意図通りの出力を引き出すための「良いプロンプトの4大構成要素」を、それぞれ自分の言葉で説明できるようになる
  • 実践で使える「最強のプロンプトテンプレート」の存在を知り、今後の学習への期待を高める

【1-1】プロンプトの質がAIの価値を決める

目安の学習時間:10分

同じAIでも、指示次第で「天才」にも「凡人」にもなる

『体験-テキスト生成AIワールド』では、ChatGPTやGeminiといったAIに触れ、その能力の一端を体験したことと思います。その中で、「あれ?同じAIなのに、聞き方を変えたら答えの質が変わったぞ?」と感じた瞬間はなかったでしょうか。

実は、AIの性能を最大限に引き出すも、逆に凡庸な答えしか得られないのも、すべては「プロンプト(指示)」次第なのです。

例えば、マーケティング戦略についてAIに尋ねる場合を考えてみましょう。

悪いプロンプト例:
「マーケティング戦略考えて」

良いプロンプト例:
「あなたは経験豊富なマーケティングコンサルタントです。ターゲット層は20代女性、商品は新しいオーガニックスキンケアです。この商品のSNS(Instagram)での初期認知度向上のためのマーケティング戦略を、具体的なアクションプラン3つとKPI設定を含めて提案してください。出力は箇条書きでお願いします。」

この2つのプロンプトでは、AIから得られる回答の質は雲泥の差です。
プロンプトによる出力の違い

悪いプロンプトと良いプロンプト、そしてそれによってAIの出力がどのように変わるのか、下図の具体的な例を見てみましょう。

(左:悪いプロンプトとその出力 / 右:良いプロンプトとその出力 の比較キャプチャ)

このように、指示の具体性や背景情報の有無が、AIの回答の質を大きく左右します。

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なぜこれほど結果が変わるのでしょうか?それは「指示の解像度」が全く違うからです。悪い例では、AIは何を求められているのか具体的に理解できません。一方、良い例では、AIが思考し、行動するための明確な道筋が示されています。

プロンプトはAIとの「精密なコミュニケーション設計図」

では、「プロンプト」とは一体何なのでしょうか。
重要語句:プロンプト
  • プロンプトとは、AIに対して出す「指示」や「命令」のことです。
  • 単なる「質問」や「お願い」というよりも、AIに「どのように思考し、どのように行動し、どのように出力してほしいか」を伝えるための、いわば「AIとの精密なコミュニケーション設計図」と言うことができます。
この「設計図」の精度が高ければ高いほど、AIは私たちの期待通りの、あるいは期待以上の働きをしてくれます。逆に言えば、曖昧な設計図では、AIも混乱してしまい、的外れな結果しか返せません。

この章から、その「精密な設計図」を描くための具体的な方法を学んでいきましょう。

【1-2】良いプロンプトの4大構成要素

目安の学習時間:15分

優れたプロンプトには、共通して含まれる重要な要素があります。ここでは、特に重要な「4つの構成要素」を紹介します。これらを意識するだけで、プロンプトの質は格段に向上します。
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要素①:【役割】AIに「キャラクター」を与える

AIに特定の専門家やキャラクター(例:コピーライター、データアナリスト、親しみやすい友人など)の役割を与えることで、出力のトーン&マナー、視点、専門性が変わります。

例えば、「あなたはプロの編集者です。以下の文章を校正してください。」と指示すると、AIは編集者としての視点で文章をチェックしてくれます。
  • 役割(Role):AIにどのような立場やキャラクターとして振る舞ってほしいかを指定します。
  • 例:「あなたは優秀なコピーライターです」「あなたは親身になって相談に乗ってくれるカウンセラーです」
  • 効果:出力される文章のトーン、専門性、視点が明確になります。

要素②:【指示】AIに「やってほしいこと」を明確に伝える

AIに実行してほしいタスクを、具体的かつ明確に、動詞を使って指示することが重要です。「要約して」「翻訳して」「リストアップして」「比較して」「提案して」など、何をすべきかをはっきりと伝えましょう。

複数の指示を組み合わせることも可能です。
  • 指示(Instruction/Task):AIに具体的に何をしてほしいのかを伝えます。
  • 例:「以下の文章を要約してください」「ブレインストーミングを手伝ってください」「メリットとデメリットを比較してください」
  • 効果:AIが実行すべきタクトが明確になり、期待するアクションを促せます。

要素③:【文脈】AIに「前提知識・背景情報」をインプットする

指示をより的確に理解・実行してもらうためには、必要な背景情報、目的、ターゲット読者、制約条件などを提供することが重要です。これを「文脈」と呼びます。

例えば、「ターゲット読者は小学生です」「300字以内でお願いします」「以下の資料を参考にしてください」といった情報が文脈にあたります。
  • 文脈(Context):指示を理解・実行するために必要な背景情報、目的、制約条件などを提供します。
  • 例:「ターゲット顧客は30代の働く女性です」「このプロジェクトの目的は認知度向上です」「以下のキーワードを必ず含めてください」
  • 効果:AIが状況を理解し、より的確で質の高い出力を生成できるようになります。

要素④:【出力形式】AIに「望む答えの形」を具体的に示す

AIからの回答のスタイル(例:丁寧な言葉遣い、フレンドリーな口調)、構造(例:箇条書き、表形式、段落構成)、言語などを体的に指定することで、後工程の作業を大幅に削減できます。

例えば、「箇条書きで3つ提案してください」「結果を表形式でまとめてください」といった指示です。この「出力形式」の指定において、次章で学ぶ「Markdown記法」が非常に有効です。
  • 出力形式(Output Format):AIにどのような形式で回答を返してほしいかを指定します。
  • 例:「箇条書きで記述してください」「JSON形式で出力してください」「丁寧な口調でお願いします」
  • 効果:期待通りの形式で情報が得られるため、その後の加工作業が楽になります。

考えてみよう!

あなたがAIに「今日の夕食の献立を考えてほしい」とお願いする場合、上記4つの構成要素をそれぞれどのように盛り込みますか? 自由な発想で、各要素を具体的に記述してみましょう。

(あなたの考えをテキストエディタやノートにまとめてみましょう。まとめた内容は、ぜひ担当コーチにも共有してフィードバックをもらってください。)

解答例
  • 役割: 「あなたは経験豊富な栄養士であり、かつ、手早く美味しい料理を作るのが得意な主婦(夫)です。」
  • 指示: 「今日の夕食の献立を3品提案し、それぞれの簡単なレシピも教えてください。」
  • 文脈: 「冷蔵庫には豚肉と玉ねぎと卵があります。家族は4人(大人2人、小学生2人)で、子供たちは野菜が少し苦手です。調理時間は30分以内でお願いします。」
  • 出力形式: 「各料理の材料と手順を、番号付きリストで分かりやすく記述してください。」
このように4つの要素を意識するだけで、AIへの指示が格段に具体的になり、期待する回答を得やすくなります。

【1-3】最強の「プロンプトテンプレート」紹介

目安の学習時間:5分

この型さえ押さえれば、今日からあなたもプロンプト名人!

ここまで学んだ「良いプロンプトの4大構成要素」を組み合わせた、汎用性の高い基本的なプロンプトテンプレートを紹介します。
役割
あなたは[AIに演じさせたい役割]です。

指示
以下の[文脈]と[制約条件]に基づいて、[具体的な指示内容]を実行してください。
最終的な出力は[期待する出力形式]でお願いします。

文脈
[必要な背景情報、目的、ターゲットなど]

制約条件
[文字数制限、含めるべき/含めてはいけないキーワード、注意点など]
(※制約条件は文脈に含めても、別途項目を立ててもOKです)
このテンプレートの各項目を埋めるように情報を整理するだけで、誰でも質の高いプロンプトを簡単に作成できます。最初は難しく感じるかもしれませんが、この「型」を意識して繰り返し練習することで、自然と良いプロンプトが書けるようになります。
テンプレート活用のコツ
  • 最初から完璧を目指さない:まずはテンプレートに当てはめてみることから始めましょう。
  • 空欄があってもOK:全ての項目を無理に埋める必要はありません。必要な情報から記述していきましょう。
  • 徐々に具体的に:慣れてきたら、各項目をより詳細に、具体的に記述することを意識してみてください。

このテンプレートはあくまで基本形です。目的に応じて項目を追加したり、順番を入れ替えたりと、自由にカスタマイズして活用してください。

次の章からは、このテンプレートを実際に使いながら、各構成要素をさらに深掘りし、実践的なプロンプト作成スキルを磨いていきます。

【1-4】1章-章末課題- プロンプト要素分解パズル

目安の学習時間:5分

問題

問題
以下のプロンプトは、「役割」「指示」「文脈」「出力形式」の4つの要素で構成されています。それぞれの部分がどの要素にあたるか、分解して分類してみてください。

プロンプト:
「あなたはプロの旅行プランナーです。私は来月、初めて北海道へ3泊4日の個人旅行に行きます。予算は10万円以内で、主な目的は美味しい海鮮を食べることと、美しい自然を満喫することです。これらの情報を踏まえ、具体的な4日間の旅行プランと、各日の詳細な旅程(移動手段、観光スポット、食事場所の候補)、そしておおよその予算内訳を提案してください。提案は、箇条書きと表を効果的に使って、分かりやすいレポート形式でまとめてください。」

解答

解答解説

  • 役割: 「あなたはプロの旅行プランナーです。」
  • 指示: 「具体的な4日間の旅行プランと、各日の詳細な旅程(移動手段、観光スポット、食事場所の候補)、そしておおよその予算内訳を提案してください。」
  • 文脈: 「私は来月、初めて北海道へ3泊4日の個人旅行に行きます。予算は10万円以内で、主な目的は美味しい海鮮を食べることと、美しい自然を満喫することです。これらの情報を踏まえ、」
  • 出力形式: 「提案は、箇条書きと表を効果的に使って、分かりやすいレポート形式でまとめてください。」
解説
うまく分類できましたか?このように、一見複雑に見えるプロンプトも、4つの構成要素に分解して考えることで、構造が明確になります。

・「あなたはプロの旅行プランナーです。」は、AIに期待する専門性や視点を指定しているので「役割」です。
・「具体的な4日間の旅行プランと…提案してください。」は、AIに実行してほしい具体的なタスクを述べているので「指示」です。
・「私は来月、初めて北海道へ…これらの情報を踏まえ、」は、旅行の背景、目的、予算といった前提条件を伝えているので「文脈」です。
・「提案は、箇条書きと表を効果的に使って…まとめてください。」は、AIに期待するアウトプットの体裁を指定しているので「出力形式」です。

日常的にプロンプトを作成する際も、この4つの要素を意識することで、AIへの指示がより明確になり、期待通りの結果を得やすくなります。

これで「1章 分解すれば怖くない!良いプロンプトの"公式"」の解説を終わります。
次の章に進みましょう。
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