契約内容と取引条件を確認しよう
CHAPTER 5
契約内容と取引条件を確認しよう
LESSON 5-1 契約・法務・税務の基礎 ⏱ 所要時間:約15〜20分
レッスン解説動画
GOAL
このレッスンのゴール
  • 請負契約と準委任契約の基本的な違いを説明できる
  • 案件開始前に合意する項目を確認できる
  • 見積書に記載する基本項目を説明できる
  • 曖昧な条件がある場合の相談手順を説明できる

案件を受けるときには、必ず契約や取引条件の確認が発生します。制作スキルがあっても、契約内容や見積もりの記載内容を確認せずに作業を始めると、納品物の範囲、報酬、修正回数について、クライアントとの認識がずれる場合があります。認識のずれは、納品後の追加対応や報酬トラブルにつながりやすく、事前の確認で防げるものがほとんどです。

このレッスンでは、案件で多く使われる請負契約と準委任契約の基本的な違いを確認し、契約前に確認しておきたい項目と見積書に記載する基本項目を整理します。あわせて、条件が曖昧なまま作業を始めないための確認の手順も確認しましょう。

請負と準委任の違い

クラウドソーシングサービスや直接契約で提示される契約には、主に請負契約と準委任契約の2種類があります。どちらも「業務委託契約」という名称で結ばれることが多いため、名称だけでは区別できません。まず、この2つの契約がそれぞれ何を約束しているかを比較しましょう。

完成を約束請負契約
  • 制作物を完成させることを約束する
  • 完成条件・検収・修正までが契約の対象になる
  • バナー1点、LP1本、動画1本などの制作案件で使われることが多い
vs
業務遂行を約束準委任契約
  • 一定の業務を適切に行うことを約束する
  • 業務範囲・稼働時間・報告方法・契約期間を確認する
  • 一定期間の制作支援、更新、運用補助などの案件で使われることが多い
契約書の名称ではなく、どちらの約束をしているかで確認する項目が変わる。

この2つの契約は、確認すべき項目そのものが違います。請負契約では、何が完成すれば納品として認められるかという完成条件と検収の基準が中心になります。準委任契約では、完成条件ではなく、どこまでの業務をどのくらいの時間・期間で行うかという業務範囲と稼働の基準が中心になります。同じ「バナー制作」という言葉が使われていても、単発の完成物を1点納品する請負契約なのか、一定期間バナー制作を継続的に支援する準委任契約なのかによって、確認すべき内容は変わります。

項目請負準委任
基本的な考え方制作物を完成させることを約束する一定の業務を適切に行うことを約束する
確認例納品物、完成条件、検収、修正業務範囲、稼働時間、報告方法、契約期間
案件例バナー1点、LP1本、動画1本などの制作一定期間の制作支援、更新、運用補助など
✓ Point !
契約書の名称だけで判断しない

契約書の名称だけでなく、実際の業務内容と条件を確認しましょう。同じ「業務委託契約」という名称でも、完成責任を負う請負契約なのか、業務遂行を約束する準委任契約なのかによって、修正対応や報酬の考え方が変わります。判断に迷う場合は、契約前にコーチへ相談してください。

Q
確認クイズ
請負契約が約束しているのはどれか?
正解です!
請負契約は制作物を完成させることを約束する契約です。完成条件・検収・修正の考え方が確認の中心になります。
惜しい!
正解はBです。請負契約は制作物を完成させることを約束する契約です。稼働時間の取り決めや稼働状況の報告は、主に準委任契約で確認する項目です。

契約前に確認する項目

請負・準委任のどちらであっても、契約前に確認しておく項目は共通しています。案件を開始する前に、次の12項目を確認しましょう。

契約前に確認する項目
契約する相手
誰と契約を結ぶ相手なのかを確認する項目
業務内容・制作範囲
同じ案件名でも請負か準委任かで確認すべき内容が変わるため、どこまで行うかを確認する項目
納品物・納品形式
何をどの形式で納品するかを確認する項目
納期・スケジュール
いつまでに、どのような進行で納品するかを確認する項目
報酬・消費税・支払日
記載がないまま進めてしまうと、報酬の受け取りでのトラブルにつながりやすいため確認する項目
修正回数・追加作業
確認せずに作業を始めると、納品後の追加修正が料金内か追加料金かを判断できなくなるため確認する項目
検収条件
曖昧なまま契約を進めると、納品後に何を基準に検収されるかが分からなくなるため確認する項目
キャンセル・途中終了
案件を中断・終了する場合の取り扱いを確認する項目
著作権・制作データ
著作権の帰属や制作データの引き渡し方法を確認する項目
ポートフォリオ掲載
契約前に確認しておかないと、後から掲載できないと分かった制作物を実績として数えてしまう事態につながるため確認する項目
秘密保持
業務で知った情報の取り扱いを確認する項目
連絡方法・対応時間
やり取りの方法や対応できる時間帯を確認する項目

この12項目は、案件の種類や規模にかかわらず、契約前に確認しておきたい項目です。例えば、修正回数や検収条件を確認せずに作業を始めると、納品後に想定していない追加修正を求められたときに、料金内で対応すべきか、追加料金を提案すべきかを判断できなくなります。著作権やポートフォリオ掲載の可否も、納品後にまとめて確認するのではなく契約前に確認しておくことで、後から掲載できないと分かった制作物を実績として数えてしまう事態を避けられます。

特に、報酬・消費税・支払日と検収条件は、契約書や募集内容に記載がないまま進んでしまうと、報酬の受け取りや修正対応でのトラブルにつながりやすい項目です。募集内容や契約書に記載がない場合は、契約前にクライアントへ質問し、回答をメッセージなど記録に残る形で確認しておきましょう。

Q
確認クイズ
クライアントから「検収条件は追ってご連絡します」と言われたまま契約を進めようとしている。適切な対応はどれか?
正解です!
検収条件は契約前に確認する12項目の一つです。曖昧なまま契約を進めると、納品後に何を基準に検収されるかが分からなくなります。
惜しい!
正解はBです。検収条件は契約前に確認する項目の一つです。確認できるまで契約を進めないことが、納品後のトラブルを避けることにつながります。

見積書の役割

契約前に確認した項目を踏まえて、見積書を作成・確認します。見積書には、次の3つの役割があります。

  • 制作内容と費用の認識をそろえる:クライアントと自分が、同じ制作内容を前提に費用を認識できるようにします。
  • 作業範囲、数量、単価を明確にする:どこまでの作業が金額に含まれているかを明確にします。
  • 納期、修正、支払条件を確認する:見積書の中で、いつまでに何を納品し、どこまで修正対応するかを確認します。

見積書に作業範囲や数量を明記しておくと、後から「この作業は含まれていると思っていた」というような認識のずれを防げます。特に修正対応は、見積書に回数を明記していないと、料金内の対応か追加料金が必要な対応かを都度判断することになり、やり取りが増えやすくなります。

! 注意
見積書の提出だけで合意が完了するわけではない

見積書を提出した時点では、制作内容と費用についての認識をそろえただけです。修正回数、検収条件、著作権の扱いなど、見積書だけでは記載しきれない条件は、契約書や募集内容、クライアントとのメッセージのやり取りを通じて別途確認し、合意する必要があります。

見積書テンプレート

見積書に記載する基本項目を、実案件でそのまま使えるテンプレートとして整理します。実際に見積書を作るときは、次の7項目を確認しながら記入しましょう。

項目記載内容
発行日・宛名・件名誰に、何の業務について提示するか
制作内容制作物、対応範囲、納品形式
数量・単価項目ごとの数量と金額
小計・消費税・合計税の扱いを含む見積金額
納期・修正回数提出期限と料金内で対応する回数
有効期限・支払条件見積もりの期限と支払い方法
備考追加作業、素材、権利などの条件

この7項目のうち、特に見落としやすいのが小計・消費税・合計と、有効期限・支払条件です。見積金額に消費税が含まれているかどうかを明記していないと、請求時に金額の認識がずれる場合があります。また、見積書に有効期限を入れておくと、時間が経ってから同じ金額で依頼された場合に、条件を見直すかどうかを判断しやすくなります。備考欄には、素材の提供元や著作権の扱いなど、他の項目に書き切れない条件をまとめておくと、後から見積書を見返したときに確認しやすくなります。

条件が曖昧な場合の確認フロー

契約前に確認しても、募集内容や契約書だけでは判断できない曖昧な点が残ることがあります。そのときは、次の手順で確認を進めましょう。

1
不明点を見つける

制作範囲や納期など、クライアントとの認識がずれる可能性がある点に気づいた段階です。気づいた時点で先へ進めず、いったん立ち止まります。

2
契約書・募集内容・メッセージを確認する

すでに取り決めた文章の中に、判断のヒントとなる記載がないかを確認します。契約書や募集内容を読み返すだけで解決する場合もあります。

3
不明点と自分の認識を整理する

何が分からないのか、自分はどう理解しているのかを言葉にします。整理しておくことで、次に相談するときに状況を正確に伝えられます。

4
コーチへ相談する

一人で判断せずまずコーチへ確認します。契約や税務の解釈は案件ごとに条件が異なるため、自分だけで結論を出さないようにします。

5
確認する内容を整理する

コーチとのやり取りをもとに、クライアントへ何をどう確認するかを整理します。質問内容を整理しておくと、やり取りの回数を減らせます。

6
クライアントへ確認する

整理した内容をクライアントへ質問し、回答を得ます。曖昧な言い回しのまま済ませず、具体的な条件で確認します。

7
合意した内容を記録する

確認して合意した内容を、メッセージやメモなど後で見返せる形で残します。記録がないと、後から言った言わないの状態になりやすくなります。

8
作業を開始する

合意した内容にもとづいて、作業を開始します。合意前に作業を進めてしまうと、条件が変わったときの対応が難しくなります。

この確認フローは、法律的な最終判断を自分だけで下すためのものではありません。契約や税務の解釈に迷う場面では、まずコーチへ相談し、必要に応じて契約書の文言そのものを確認しながら、クライアントとの合意を丁寧に積み重ねていくことが大切です。

Q
確認クイズ
条件が曖昧なまま作業を始めそうになったとき、最初に行うことはどれか?
正解です!
不明点と自分の認識を整理したうえで、まずコーチへ相談します。そのあと確認する内容を整理して、クライアントへ確認しましょう。
惜しい!
正解はBです。契約内容が曖昧なときは、自分だけで判断したり都合の良い方向に進めたりせず、不明点を整理してコーチへ相談することから始めます。
SUMMARY
  1. 契約名だけでなく、実際の業務内容と条件を確認する
  2. 作業範囲、報酬、検収、修正、権利を合意する
  3. 次のLessonでは、制作物・素材・生成AIの扱いを確認する
CHECK
理解度チェック
請負と準委任は、それぞれ何を約束する契約か答えられるか?
請負契約は制作物を完成させることを約束する契約です。準委任契約は一定の業務を適切に行うことを約束する契約です。確認する項目も、完成条件・検収・修正(請負)と、業務範囲・稼働時間・報告方法・契約期間(準委任)で異なります。
契約名だけで業務内容を判断してよいか説明できるか?
判断してはいけません。同じ「業務委託契約」という名称でも、実際は請負契約と準委任契約のどちらかにあたります。契約書の名称だけでなく、実際の業務内容と条件を確認し、判断に迷う場合は契約前にコーチへ相談します。
見積書に含める基本項目を説明できるか?
発行日・宛名・件名、制作内容、数量・単価、小計・消費税・合計、納期・修正回数、有効期限・支払条件、備考の7項目です。見積書を提出しただけで、すべての契約条件への合意が完了するわけではありません。
条件が曖昧な場合、最初に誰へ相談するか説明できるか?
まずコーチへ相談します。不明点と自分の認識を整理したうえでコーチに相談し、確認する内容を整理してからクライアントへ確認し、合意した内容を記録してから作業を開始します。