著作権・素材・生成AIを正しく扱おう
CHAPTER 5
著作権・素材・生成AIを正しく扱おう
LESSON 5-2 契約・法務・税務の基礎 ⏱ 所要時間:約15〜20分
レッスン解説動画
GOAL
このレッスンのゴール
  • 著作権譲渡と利用許諾の違いを確認できる
  • 素材ごとの利用条件を確認できる
  • ポートフォリオ掲載と制作データの扱いを確認できる
  • 生成AIを安全に利用するための項目を説明できる

案件では、自分で制作した制作物のほかに、クライアントから支給された素材、購入した素材、無料で使える素材、生成AIが出力した素材など、複数の種類の素材を扱います。それぞれの素材には確認すべき利用条件があり、確認を省いたまま使用すると、権利者とのトラブルやクライアントとの信頼低下につながります。

素材が使えそうに見えるかどうかだけで判断するのではなく、利用条件、権利の範囲、クライアントとの合意、情報管理を確認してから使用しましょう。このレッスンでは、制作物の著作権、素材の利用条件、生成AIを利用するときの確認事項を順番に確認します。

制作物の著作権を確認する

著作権は、作品を公開したときや契約を結んだときに発生するものではありません。制作物を創作した時点で、自動的に著作権が発生します。バナーやLPのデザインも、完成した瞬間からその制作者に著作権が生じます。

ここで確認しておきたいのは、報酬を受け取ったことと著作権が移転することは、同じ手続きではないという点です。報酬を受け取っただけで著作権が自動的にクライアントへ移るとは限りません。契約書に著作権の扱いが明記されていなければ、著作権は制作者側に残ったままになる場合があります。

権利ごと移る著作権譲渡
  • 著作物の権利そのものが相手に移る
  • 相手はその後、自由に改変・複製・再利用できるようになる
vs
用途を限定して使わせる利用許諾(ライセンス)
  • 特定の用途・期間・範囲でだけ使う権利を与える
  • 契約に含まれない用途で使うときは、別途許可が必要になる
著作権譲渡は権利そのものの移転、利用許諾は使用範囲の許可という違いがある。

この違いを確認しないまま契約を進めると、想定していない用途に制作物が使われてしまうことがあります。たとえば1回のキャンペーンのために作ったバナーを利用許諾のつもりで納品していたとしても、契約書の記載が著作権譲渡に近い内容になっていれば、クライアントは別の広告展開にもそのバナーを自由に使えることになります。

✓ Point !
著作権を譲渡する場合は範囲とタイミングを確認する

著作権を譲渡する契約では、どの制作物を対象に、いつの時点で権利が移るのかを契約書で確認しましょう。範囲やタイミングが曖昧なまま契約を進めると、納品後に想定外の使われ方をされても指摘しづらくなります。

著作権のほかに、著作者人格権という権利もあります。著作者人格権は、制作物に対する作者としての名誉や意思を守るための権利で、著作権を譲渡しても著作者人格権は制作者に残ります。契約書に著作者人格権を行使しない旨の条項が入っている場合があるため、この条項があるかどうかも確認しておきましょう。

契約条項の中に判断に迷う内容がある場合は、自分だけで解釈せず、コーチへ相談しましょう。契約条項の解釈を誤ると、後から修正しづらい契約を結んでしまう可能性があります。

Q
確認クイズ
案件の報酬を受け取ったが、契約書には著作権の扱いについて記載がなかった。適切な理解はどれか?
正解です!
報酬を受け取ることと著作権が移転することは、別の手続きです。契約書に記載がなければ、著作権は制作者に残ったままになる場合があります。
惜しい!
正解はBです。報酬を受け取っただけで著作権が自動的に移転するとは限りません。契約書に著作権の扱いが明記されているかを必ず確認しましょう。

ポートフォリオと制作データを確認する

案件が完了した後によく出てくる確認事項が、ポートフォリオへの掲載と、制作に使った元データの扱いです。契約を結ぶ段階でこの2点を確認しておくと、納品後のトラブルを避けられます。

納品後に確認すること
ポートフォリオへ掲載できるか
掲載自体の可否をまず確認する
掲載できる時期と範囲
契約直後は不可でも、一定期間後に可能になる場合がある
クライアント名や数値を公開できるか
契約によって公開範囲が制限されている場合がある
元データ・編集可能データも納品対象か
含める場合、後から別の制作者が同じデータを修正できる状態になる
フォントや購入素材を再配布できるか
素材側のライセンス条件によっては再配布にあたる場合がある

これらの項目は、契約書や依頼内容に明記されていないことも多く、確認しないまま進めると、後から掲載を断られたり、データの扱いで意見が分かれたりすることがあります。特にクライアント名や実績の数値は、契約によって公開範囲が制限されている場合があるため、掲載前に必ず確認しましょう。

元データや編集可能データを納品物に含めるかどうかは、事前に決めておく必要があります。含める場合、後から別の制作者が同じデータを修正できる状態になるため、クライアントとの合意内容を確認しておきましょう。また、有料フォントや購入素材をそのまま元データに含めて渡すと、素材側のライセンス条件によっては再配布にあたる場合があるため、渡す前に確認しておくことが重要です。

ポートフォリオへ掲載する前に、この5項目を毎回確認する習慣をつけましょう。

素材を4種類に分けて確認する

案件では、自分で制作した部分以外にも、複数の種類の素材を扱います。素材は大きく、クライアント支給素材、購入素材、無料素材、自作・撮影素材の4種類に分けられます。素材の種類によって確認すべき項目が異なるため、使う前にどの種類に当たるかを判断しましょう。

素材の種類主な確認項目
クライアント支給素材使用権限、利用目的、加工、第三者の権利
購入素材ライセンス、商用利用、加工、再配布
無料素材利用規約、クレジット、禁止用途、取得元
自作・撮影素材被写体、人物、場所、商標など第三者の権利

素材の種類によって、権利を持つ人や確認先は異なります。クライアント支給素材はクライアント自身が使用権限や第三者の権利を把握していることが多く、無料素材は素材サイトが定める利用規約が確認先になります。自作・撮影素材は自分で撮影・作成したものであっても、写り込んだ人物や場所、商標など第三者の権利まで確認する必要があります。

素材を使う前に確認すること
商用利用の可否
無料素材・購入素材には商用利用を禁止する規約があるものもある
加工の可否
色調整やトリミングなどの加工を禁止する規約がある場合がある
クレジット表記
無料素材では提供元のクレジット表記が利用規約で必須とされる場合がある
再配布の可否
元データにそのまま含めて渡すと、再配布にあたる場合がある
使用期限・利用範囲
購入素材はプランによって使用できる期間や範囲が限定されている場合がある
素材の取得元を記録している
後から利用規約を確認し直す必要が出たときに参照できるようにする

素材の取得元を記録しておくと、後から利用規約が変わった場合や、クライアントから素材の出どころを聞かれた場合に、すぐに確認できます。案件ごとに使った素材の一覧と取得元をまとめておく習慣をつけましょう。

Q
確認クイズ
無料素材サイトからダウンロードした画像を、クライアントの商用バナーに使う予定です。使用前に確認すべきことはどれか?
正解です!
無料素材でも、商用利用の可否やクレジット表記など、利用規約に条件が定められている場合があります。使う前に必ず確認しましょう。
惜しい!
正解はBです。無料素材であっても、利用規約に商用利用の制限やクレジット表記の条件が定められている場合があります。

生成AIを利用するときの確認事項

案件の制作に生成AIを使う場面が増えています。生成AIを利用するときは、AIサービス自体の規約と、案件ごとの情報管理の両方を確認する必要があります。

✓ Point !
文化庁もAIと著作権の考え方を示している

文化庁は2024年3月に、AIと著作権に関する考え方を公表しました。学習段階での利用、生成AIが自律的に作った文章や画像は基本的に著作物に当たらないこと、既存の著作物と似ていて依拠していると著作権侵害になりうることなど、AIの利用に関わる論点が整理されています。案件で生成AIを使うときも、この考え方を踏まえて確認しましょう。

生成AI利用時の確認事項
利用するAIサービスの規約を確認した
規約によって入力データの学習利用や商用利用の範囲が異なる
クライアントがAI利用を許可している
案件によってはAI利用自体を禁止している場合がある
機密情報・個人情報・未公開情報を入力していない
入力した情報が学習や外部への出力に利用される可能性がある
生成物の内容と品質を人が確認した
生成AIが自律的に作った文章や画像は基本的に著作物に当たらない
第三者の著作物やブランドに似すぎていないか確認した
既存の著作物と似ていて依拠していると著作権侵害になりうる
AIを使用した工程と、人が確認・修正した範囲を説明できる
クライアントから確認された場合に説明できるようにしておく
必要に応じてAI利用の有無をクライアントへ伝えられる
契約や案件によってAI利用の開示を求められる場合がある

この中でも特に注意したいのは、機密情報・個人情報・未公開情報の入力です。生成AIへ入力した情報は、サービスによって学習データとして利用される場合があり、一度入力した情報を完全に取り消すことは難しくなります。未公開の商品情報や個人情報は、入力せずに作業を進める方法を選びましょう。

生成物をそのまま提出するのではなく、AIが担った工程と、自分が確認・修正した範囲を分けて説明できる状態にしておくことも重要です。クライアントからAI利用について質問されたときに、どの工程でAIを使ったかを説明できるようにしておきましょう。

ケース例

ここまで確認した内容を、実際の場面に当てはめて考えてみましょう。次の3つの場面について、選択肢から正しい判断を選びます(「無料素材サイトの画像を商用バナーに使いたい」場面は、セクション2のクイズで確認済みです)。

Q
ケース例(1/3)
クライアントから「ネットで見つけた画像だから使ってほしい」と渡された。どうすればよいか?
正解です!
ネットで見つけた画像は、誰かの著作物である可能性があります。クライアントから渡された場合でも、出典と利用条件を確認してから使用しましょう。
惜しい!
正解はBです。ネットで見つけた画像は誰かの著作物である可能性があるため、出典と利用条件を確認してから使用します。
Q
ケース例(2/3)
未公開の新商品情報を使って、生成AIに広告文を作らせたい。どうすればよいか?
正解です!
未公開情報を生成AIへ入力すると、意図せず外部に情報が渡る可能性があります。入力せずに進める方法をコーチへ相談しましょう。
惜しい!
正解はBです。未公開情報を生成AIへ入力すると、意図せず外部に情報が渡る可能性があるため、入力せずに進める方法をコーチへ相談します。
Q
ケース例(3/3)
案件の納品が完了し、制作物をポートフォリオへ掲載したい。どうすればよいか?
正解です!
掲載できるかどうか、掲載できる時期と範囲は契約や依頼内容によって異なります。掲載前に必ず確認しましょう。
惜しい!
正解はBです。掲載できるかどうか、掲載できる時期と範囲は契約や依頼内容によって異なるため、掲載前に必ず契約・合意内容を確認します。

これらの判断に共通しているのは、権利や情報の扱いに迷ったら、自己判断で使わずに確認や相談を先に行うという点です。案件ごとに、目の前の素材や情報がどの確認事項に当てはまるかを考える習慣をつけましょう。

SUMMARY
  1. 制作物、素材、生成AIは利用条件と権利を確認する
  2. クライアント情報を生成AIへ安易に入力しない
  3. 次のLessonでは、請求と税務の基本を確認する
CHECK
理解度チェック
著作権譲渡と利用許諾の違いを説明できるか?
著作権譲渡は権利そのものが相手に移り、相手は自由に改変・複製・再利用できます。利用許諾は特定の用途・期間・範囲でだけ使う権利を与えるもので、契約に含まれない用途では別途許可が必要です。
素材を4種類に分けて、それぞれの主な確認項目を答えられるか?
クライアント支給素材(使用権限・利用目的・加工・第三者の権利)、購入素材(ライセンス・商用利用・加工・再配布)、無料素材(利用規約・クレジット・禁止用途・取得元)、自作・撮影素材(被写体・人物・場所・商標など第三者の権利)の4種類です。
ポートフォリオへ掲載する前に確認すべきことを説明できるか?
掲載できるか、掲載できる時期と範囲、クライアント名や数値を公開できるか、元データも納品対象か、フォントや購入素材を再配布できるかを確認します。
生成AIを利用するときに確認すべき項目を3つ以上答えられるか?
AIサービスの規約確認、クライアントの許可、機密情報・個人情報・未公開情報を入力しないこと、生成物の内容と品質の確認、第三者の著作物との類似確認、AIを使用した工程の説明、AI利用の有無をクライアントへ伝えられることなどです。