第1章
UXデザインプロセスの7ステップ — 全体像と反復のしくみ
レッスン 1-3 UX/UIデザインの基礎 ⏱ 所要時間:約60分
GOAL
このレッスンのゴール
  • UXデザインの7ステップを順番どおりに挙げて、それぞれの工程が何のためにあるかを説明できる
  • 7ステップが一直線ではなく、工程の間を行き来する反復プロセスであることを説明できる

同じ依頼を受けても、次に何をするか迷わず動ける人と、いきなり画面から描き始めて後で作り直す人がいます。この違いを分けているのは才能ではなく、UXデザインの進め方を手順として知っているかどうかです。このレッスンでやるのは、UXデザインの標準フローである7ステップの全体像を押さえ、それが一直線ではなく工程の間を行き来する反復プロセスだと理解することです。7つは丸暗記せず、順番と各工程の狙い、前に戻るしくみをつかめば十分です。教材の通し課題も、この7ステップに沿って1つの案件を設計します。

なぜ7ステップを先に押さえるのか

同じ依頼を受けても、次に何をすべきかを手順で言えるデザイナーと、感覚で画面から描き始めるデザイナーがいます。差は仕上がりより前に、進め方の段階で表れます。

手順で動く手順派のデザイナー
  • いま全体のどこにいて、次に何をするかを言える
  • 関係者との認識合わせが速い
  • 迷ったとき、戻る場所がわかる
vs
感覚で描く感覚派のデザイナー
  • いきなり画面から描き始める
  • 作ってから作り直しが増える
  • 次の一手を決めにくい
図:差は才能ではなく、進め方(手順)を持っているかどうか。

手順が身についていると、案件のどの段階でも全体のどこにいて次に何をするかを言えます。この見通しがあると関係者との認識合わせが速く、迷ったときに戻る場所もわかります。

✓ Point !
手順は説明力の土台になる

手順が身についていると、作業が速くなるだけでなく、いま何のために何をしているかを常に言葉にできます。この説明力が、この先のヒアリングや提案、デザインレビューの土台になります。

まずは全体像をつかむために7ステップを押さえ、通し課題を進めながら各工程の狙いを確認しましょう。案件の途中で手が止まったときも、7ステップのどこにいるかを確認すると、次の一手が決まり、関係者へ進捗を伝えるときにも現在地を共有できます。

UXデザインの7ステップ

UXデザインの標準フローは、次の7つのステップで構成されます。まず図で全体をつかみ、そのあと各ステップの狙いを順に確認しましょう。

UXデザイン7ステップ。①ゴール定義から⑦継続的改善まで並び、⑦から②へ戻る循環
一連の流れと、最後が前に戻る循環。
1
ゴール・スコープ・成功指標の定義

プロジェクトで何を達成するか、どこまでを対象範囲(スコープ)とするか、達成をどう測るかを最初に決めます。ここが曖昧なまま進むと、後のすべての判断がぶれます。

2
定量/定性リサーチによる潜在ニーズ・課題の発見

数値データで傾向をつかむ定量リサーチと、インタビューや観察で理由を探る定性リサーチを組み合わせます。ユーザー自身も言葉にできていない潜在ニーズや課題を見つけることが目的です。

3
インサイト抽出と可視化(ペルソナ・CJM等)

リサーチで集めた情報から、設計の判断に使える洞察(インサイト)を取り出します。代表的なユーザー像をまとめたペルソナや、体験を時系列の図にしたCJM(カスタマージャーニーマップ)に可視化し、チームで共有できる状態にします。

4
ユーザー体験コンセプトの構想と設計

インサイトをもとに、ユーザーにどんな体験を提供するかという方針を打ち立てます。画面の見た目を作り込む前に、体験の骨格を設計する段階です。

5
プロトタイプによる体験の具体化

構想した体験を、実際に触って確かめられる試作品(プロトタイプ)にします。完成品を作り込む前に、少ないコストで体験を目に見える形にすることが狙いです。

6
ユーザー検証による課題特定と改善

プロトタイプをユーザーに使ってもらい、想定どおりに体験が成立するかを確かめます。見つかった課題をもとに、設計を改善します。

7
リリース後の運用データに基づく継続的改善

リリースは終点ではなく、運用の始まりです。実際の利用データから課題の仮説を立て、改善を繰り返します。

7つを一度に暗記する必要はありません。まず順番を覚え、各ステップが何のためにあるかを言えるようにすることが重要です。クライアントやコーチに進捗を伝えるときも、今は③のインサイト抽出の段階ですとステップ番号と工程名で言えると、相手と認識がそろいます。

Q
確認クイズ 1/2
あるプロジェクトで、チームがいきなり画面デザインの作り込みを始めようとしています。7ステップの考え方として、最初に確認すべきことはどれでしょう?
正解です!
①ゴール・スコープ・成功指標の定義が最初の工程です。達成したいことと成功の測り方を先に決めるから、後のリサーチや設計の判断がぶれません。作り込みの前にまず狙いをそろえます。
惜しい!
最初の工程は①ゴール・スコープ・成功指標の定義です。ここで達成目標と成功の測り方を決めておくと、後のリサーチ・設計・検証の判断基準になります。レイアウトやプロトタイプはその後の工程です。

一直線ではなく行き来する反復プロセス

7ステップは①から⑦へ一直線に進む一方通行の手順ではありません。実際の案件では、ステップの間を行き来しながら進みます。

反復・循環図。ユーザー検証から設計・プロトタイプへ、継続的改善からリサーチへ戻る
前工程へ戻るのは手戻りの失敗ではなく、体験の精度を上げる反復。

⑥のユーザー検証で課題が見つかれば、④の設計や⑤のプロトタイプに戻って作り直し、もう一度検証します。⑦でリリース後のデータから新しい課題が見つかれば、②のリサーチへ戻って次の改善サイクルが始まります。

✓ Point !
⑦は終点ではなく②へ戻る入口

リリース後の運用データは、次のリサーチの出発点になります。プロダクトが使われ続けるかぎり、⑦から②へ戻る循環で7ステップは回り続けます。

前の工程へ戻ることを手戻りの失敗と捉えず、体験の精度を上げる反復として計画に織り込みましょう。検証で課題が出て落ち込みそうなときも、これは反復の一部だと捉えると、前の工程に戻る判断を落ち着いて下せます。

この教材の通し課題と7ステップの対応

この教材の通し課題は、この7ステップを順に実践できるように組まれています。各チャプターがどのステップに対応するかを、次の表で確認しましょう。

7ステップ この講座で対応するチャプター(通し課題)
ゴール・スコープ・成功指標の定義 第2章 UXリサーチと要件定義(依頼書の読み解き・クライアントヒアリング)
定量/定性リサーチによる潜在ニーズ・課題の発見 第2章 UXリサーチと要件定義(ユーザーインタビュー・競合UX分析)
インサイト抽出と可視化(ペルソナ・CJM等) 第2章 UXリサーチと要件定義(ペルソナ・ジャーニーマップ)
ユーザー体験コンセプトの構想と設計 第2章 要件定義・価値定義 〜 第3章 情報設計とUI設計(IA・ワイヤーフレーム・UI設計)
プロトタイプによる体験の具体化 第4章 プロトタイピングと検証(プロトタイプ作成)
ユーザー検証による課題特定と改善 第4章 プロトタイピングと検証(ユーザビリティテスト・改善)
リリース後の運用データに基づく継続的改善 第4章 行動データの読解 〜 第5章 修了制作(リリース後の改善提案)
第5章 修了制作で①〜⑦を通しで仕上げ、成果を発表します

通し課題では、この対応を意識しながら1つの案件を最後まで設計します。いま自分がどのステップにいるかを確かめながら、各チャプターに取り組みましょう。自分の作業が全体のどこかを見失ったときも、この対応表で現在地と次のチャプターを確認できます。

Q
確認クイズ 2/2
第4章でユーザビリティテスト(⑥)を行い、操作に迷うユーザーが多いという課題が見つかりました。7ステップの考え方として、適切な次の動きはどれでしょう?
正解です!
検証は課題を見つけて終わりではなく、前の工程に戻って改善するためにあります。④や⑤に戻して直し、もう一度⑥で確かめる行き来が、体験の精度を上げます。
惜しい!
7ステップは一方通行ではありません。課題が見つかったら④や⑤に戻って改善し、もう一度検証するのが適切です。毎回①まで戻る必要はなく、課題の内容に応じた工程まで戻ります。

演習:7ステップを説明する

最後に、学んだ7ステップを自分の理解として書き出します。用語をなぞるのではなく、各工程が何のためにあるかが伝わるように書くことがねらいです。

演習 1-3

STEP 1:7ステップを書き出す

  • ①〜⑦のステップ名を、順番どおりに書きます
  • 各ステップを1〜2文で説明します。何をする工程で、何のために行うかを必ず含めます

STEP 2:反復のしくみを説明する

  • 7ステップが一直線ではなく反復する理由を2文で書きます(例:⑥や⑦から前の工程に戻る動き)

完了条件(作成物)

  • 7ステップの説明(各ステップ1〜2文・目的を含む)
  • 反復のしくみの説明(2文)
書けたら読み返し、不安なところがあれば、コーチに相談してみましょう。
CHECK
理解度チェック
7つのステップを順番どおりに挙げられる
①ゴール・スコープ・成功指標の定義 → ②定量/定性リサーチによる潜在ニーズ・課題の発見 → ③インサイト抽出と可視化(ペルソナ・CJM等) → ④ユーザー体験コンセプトの構想と設計 → ⑤プロトタイプによる体験の具体化 → ⑥ユーザー検証による課題特定と改善 → ⑦リリース後の運用データに基づく継続的改善、の順です。
検証で課題が見つかったときの動き方を説明できる
④の設計や⑤のプロトタイプに戻って改善し、もう一度⑥で検証します。リリース後は⑦の運用データから課題を見つけ、②のリサーチへ戻る循環で改善を続けます。前の工程へ戻るのは反復であり、手戻りの失敗ではありません。
この教材のチャプターと7ステップの対応を説明できる
①②③は第2章、④は第2章後半から第3章、⑤⑥は第4章、⑦は第4章から第5章で実践します。第5章の修了制作では、①〜⑦を通しで仕上げて発表します。