- ✓UXとUIの違いと関係(UIはUXの一部)を、具体例を挙げて説明できる
- ✓人間中心設計(HCD)=ユーザーを中心に据え、設計と検証を繰り返す考え方を説明できる
- ✓UX/UIデザイナーの仕事がリサーチ・設計・検証の全体に及ぶことを理解している
新しく入れた食事宅配アプリは、写真も配色も洗練されていて、第一印象は上々でした。ところが、いざ注文しようとすると送料が最後の画面まで分からず、クーポンの使い方も見つからないまま、結局いつものアプリに戻ってしまいました。画面はきれいなのに、また使いたいとは思えませんでした。この差はどこから生まれるのでしょうか。このレッスンでやるのは、その差の正体であるUXとUIの違いを整理し、使う人を中心に置いて作って試して直すを繰り返すHCD(人間中心設計)の考え方を押さえることです。見た目の良さと、使い終わるまでの体験の良さを分けて考えられると、制作を任されたときにどこを直せばよいかを見極められます。
UXとUIは何が違うのか
UXはユーザー体験(User Experience)、UIはユーザーインターフェース(User Interface)の略です。よく一緒に語られますが、指している範囲は違います。
UXは、使う人がサービスを通じて得る体験の全体です。UIは、画面やボタン、文字や色といった目に触れる接点を指します。この二つは対立するものではなく、UIがUXに含まれる関係です。
UIはUXを形づくる要素の一つです。この関係を押さえると、きれいなUIを作ることは目的そのものではなく、良い体験を作るための手段だと整理できます。
制作を頼まれたら見た目だけで満足せず、使い始めから使い終わりまでの体験全体に目を向けるようにしましょう。クライアントからおしゃれにしたいと言われたときも、それが見た目(UI)の話か体験(UX)の話かを切り分けられると、おしゃれにしても予約が増えないなら直すべきは体験の流れかもしれない、と提案の角度を変えられます。
人間中心設計(HCD)という考え方
良い体験は、作り手の思いつきではなく、使う人を中心に置いて確かめながら作ることで生まれます。この進め方が人間中心設計(HCD)で、一度きりの手順と思われがちですが、繰り返すところに核があります。
HCDは国際規格ISO 9241-210にもなった枠組みで、利用状況を理解し、要求を定め、設計し、評価する活動を繰り返します。
HCDの本質は活動の順番ではなく、評価で分かった課題を次の設計に戻す反復です。どの活動から入っても構いませんが、この輪が回っていることがHCDの条件です。
作って終わりにせず、使ってもらって直すことを前提に進める姿勢を持ちましょう。クライアントになぜこの設計にしたのかと聞かれたときも、利用状況の理解から要求、設計、評価までの流れに沿って、根拠のある提案として説明できます。
デザイナーの仕事領域:リサーチ→設計→検証
UX/UIデザイナーの仕事は画面を描くことだけだと思われがちですが、実際は描く前から始まり、描いた後も続きます。
大きく分けると、リサーチ(誰のどんな課題かを知る)、設計(体験と画面の形を決める)、検証(使ってもらって直す)の3つの領域です。
この3領域は、前に見たHCDの考え方を実務の流れに置き換えたものです。リサーチはHCDの理解、設計は要求と設計解、検証は評価にあたり、検証から前に戻る反復も同じです。
3つを順に、そして必要なら前に戻りながら進めることを意識しましょう。求人や案件で任される範囲を見極めるときも、呼び名がUIデザイナーでもUXデザイナーでも、リサーチ・設計・検証のどこを担当するのかを確認すれば、自分に足りない経験と、これから伸ばす領域がはっきりします。
この講座が育てるUX/UIデザイナー
いま、見た目を整えたり初稿を作ったりする作業は、AIの活用で以前より短い時間でこなせるようになっています。
そのぶん、誰のどんな課題を解くのかを見極めるリサーチや、本当に解けたかを確かめる検証など、人が判断する領域に価値が移っています。
| 観点 | 見た目をつくるデザイナー | UX/UIデザイナー |
|---|---|---|
| 主な問い | どう見せるか | 誰の何を解くか/どう見せるか |
| 守備範囲 | ビジュアルの制作 | リサーチ→設計→検証の全体 |
| 成果の基準 | きれいに仕上がったか | ユーザーの課題が解けたか |
本講座は、リサーチから検証までを独力で回せるUX/UIデザイナーを育てます。この土台となる考え方を、ここでしっかり押さえておきましょう。これから学ぶ一つひとつの手法も、体験のどこを良くするための道具なのかで整理すると、講座全体の中で自分の現在地を見失わずに進めます。