- ✓インサイトからアイデアを発散させ、KJ法で収束させて、コンセプトの核を独力でつかめる
- ✓提供価値(バリュープロポジション)と体験コンセプトを、決まった型に沿って独力で言葉にできる
- ✓定義した価値・コンセプトを簡易コンセプトテストで検証し、記録を独力でまとめられる
前回(2-6)では、機能要件をMoSCoWで優先順位づけし、要件定義書(合意版)を織田さん役に提案して合意しました。今回は、その要件の土台にあるリフトの提供価値と体験コンセプトを言葉にし、コンセプトテストで確かめます。仕上げる成果物は、価値定義シートとコンセプトテスト記録の2点です。
リフトの要件はそろいました。ただ、予約ができるサービスというだけでは、街にある他のジムのアプリと変わりません。織田さんがリフトで本当に届けたいものは何か、通う人はそこでどんな体験を得られるのか。要件の一覧を眺めても、その核はまだ言葉になっていません。この章でやるのは、アイデアの発散と収束でこの核をつかみ、提供価値と体験コンセプトとして一文に言語化し、画面や機能を作り始める前にコンセプトテストで方向性を確かめることです。言葉の段階で確かめておくほど、あとの手戻りは小さくなります。
アイデアを広げる(発散)
前の工程でまとめたペルソナやジャーニーには、リフトに通う人の悩みが並んでいます。まずはその悩みを起点に、解決のアイデアを数多く広げます。この広げる段階が発散です。

発散のコツは、判断を後回しにして量を出すことです。ブレインストーミングでは、批判せず、突飛な案も歓迎し、人の案に乗ってさらに広げます。
発散と次の収束を同じ時間に混ぜると、出かけたアイデアが批判で止まります。まず数を出し切り、選ぶのは後の収束でまとめて行いましょう。この切り替えが、発散を機能させる鍵です。
発散をうまく回す約束事として、アレックス・オズボーンが示したブレインストーミングの4原則を押さえておきましょう。
- 判断を保留する:この段階では良し悪しを評価しません。批判が出るとアイデアが止まります。
- 自由奔放を歓迎する:突飛な案ほど歓迎します。現実的かどうかは後で絞ります。
- 量を求める:質より量を優先します。数が多いほど良い核に出会えます。
- 結合し便乗する:人の案に乗せて、組み合わせて広げます。
インサイト1つにつき、複数の解決案を書き出す意識を持ちましょう。企画会議で案が早々に否定されて広がらないときも、いまは発散の時間で判断は後だと進め方を分ければ、参加者が安心して案を出せて、選ぶ議論は後半にまとめられます。
アイデアを束ねる(収束とKJ法)
広げたアイデアは、ばらばらのままでは方向を決められません。似たもの同士を束ねて意味を読み取り、核へ絞るのが収束です。その代表的な道具がKJ法です。

KJ法では、1枚に1つ書いた付箋を似たもの同士でグループにし、各グループに見出しをつけ、関係を結んで核を見つけます。下から意味が立ち上がります。
あらかじめ用意した分類にアイデアを振り分けると、リサーチで見えた実像が枠に押し込まれます。付箋を手で動かしながら、下から意味を立ち上げていきましょう。これがKJ法とふつうの分類の違いです。
グループの見出しは、中身を言い当てる具体的な言葉にすることが重要です。インタビューや競合調査のメモが大量にたまって整理がつかないときも、KJ法でボトムアップに束ねると、個々のメモには見えなかった共通の悩みが表札として浮かび、次に解くべき核が定まります。
提供価値と体験コンセプトを言葉にする
収束でつかんだ核を、提供価値(バリュープロポジション)と体験コンセプトの2つの言葉にします。提供価値は届ける価値、体験コンセプトはそれをどんな体験として届けるかの方向づけです。
提供価値は、誰の・どんな課題を・どのように解決するか、の型で一文にします。体験コンセプトは、その価値を利用者の目線で短く言い表したものです。
予約フォームがある、通知が届くは機能です。提供価値は、その機能で運動初心者の予約の気疲れがどう減るか、という課題の解決で書きます。機能を並べても、価値の説明にはなりません。
提供価値も体験コンセプトも、前の工程のインサイトに根拠を置いて言葉にしましょう。この一文を提案書やポートフォリオの冒頭に置くと、関係者が最初に方向性を共有でき、誰の何をどう解決するかが先に決まっているぶん、その後の画面や機能の議論がぶれにくくなります。
コンセプトテストで方向性を確かめる
提供価値と体験コンセプトができたら、作り始める前に利用者へ当てて反応を確かめます。これがコンセプトテストで、言葉の段階で方向性の誤りに気づけます。

やり方は、価値とコンセプトを短い説明文にして相手に見せ、悩みが解決しそうか、使いたいか、分かりにくい点はないかを聞きます。誘導せず実感を引き出します。実案件でも、プロトタイプを作る前にこのコンセプトテストを挟めば、言葉で方向性の合意を取ってから設計に入れるので、後半のデザイン工程で大きな手戻りが起きにくくなります。
画面や実装を作った後に方向性が違うと分かると、直す範囲が広がります。言葉だけのいまの段階なら、書き直すだけで方向を変えられます。だからプロトタイプの前にコンセプトを確かめます。
完成イメージ
リフトの価値定義シート(発散の叩き台・収束したコンセプトの核・提供価値の一文・体験コンセプトの一言・根拠)と、コンセプトテスト記録(ユーザー役との対話ログ・響いた点と引っかかった点・方向性の修正メモ)が、1セットそろった状態を目指します。
お題
これまでのリフトの成果物(ヒアリング記録・インタビュー記録・ペルソナ・ジャーニー・要件定義書)を入力に、提供価値と体験コンセプトを定め、ユーザー役に当てて確かめます。
手順
- 発散:ペルソナ・ジャーニーで見えた悩みを1つずつ付箋に書き、解決アイデアを判断せず数多く出す。
- 収束:KJ法で似たアイデアを束ね、見出しをつけ、リフトが向かうコンセプトの核を1つ選ぶ。
- 言語化:核を提供価値の一文(<誰>の・<どんな課題>を・<どのように>解決する)と、体験コンセプトの一言にする。
- コンセプトテスト:下の「使うAI」の案内でユーザー役(Gem②)を呼び出し、価値と体験コンセプトを短い説明文で提示して反応を聞く。誘導しない。
- 記録・修正:反応を記録し、方向性を残すか直すかを判断してメモにする。
使うAI(ユーザー役 Gem②)
ユーザー役(Gem②)は、2-3と同じGemです。下のボタンから開き、3人のうち1人を冒頭で指定して当てましょう。Gemとの対話は、音声入力を活用して実際の会話のように進めましょう。
2-3と同じGem②です。冒頭で1人を指定し、価値・体験コンセプトを提示して反応を聞きましょう(Googleアカウントのログインが必要)。
実在する個人が特定できる情報や、業務上の機密は入力しないでください。
コンセプトテストで聞くこと(例)
- いま説明した内容で、あなたの悩みが解決しそうだと感じますか。どのあたりがそう思わせますか。
- 実際に使ってみたいと思いますか。引っかかる点があれば教えてください。
- 分かりにくい、ピンとこないと感じた言葉はありますか。
完了条件(作成物)
- 価値定義シート:発散の叩き台/コンセプトの核/提供価値の一文/体験コンセプトの一言/根拠となったインサイト。
- コンセプトテスト記録:ユーザー役との対話ログ/響いた点・引っかかった点/方向性の修正メモ。
これで第2章のリサーチと要件定義がそろいました。ヒアリングから価値定義までの成果物が、次の第3章で始める設計の土台になります。
発散と収束を分ける理由と、KJ法の流れを説明できる
提供価値と体験コンセプトを、型に沿って言葉にできる
コンセプトテストの目的と進め方を説明できる
この章で作った次の成果物を、まとめてコーチへ提出します。コーチが確認したら次の章へ進みます。(※途中の作業シート・自己採点の演習は提出不要)