第3章
UIデザインの基礎知識 — なぜそのUIにするかを判断する
レッスン 3-2 情報設計とUI設計 ⏱ 所要時間:約150分
GOAL
このレッスンのゴール
⏱ 約150分
  • ボタンの状態設計・アフォーダンス・タッチターゲットなど、UIコンポーネントの定石を説明できる
  • HIG・Material、ニールセンの10ヒューリスティック、アクセシビリティとUXライティングの基礎を、画面を点検する観点として使える
  • 前回引き出した参考UIパターンを、これらの原則でなぜこう作られているか言語化できる
通し課題

第2章では、リフトの案件でゴールを定義し、リサーチから要件と価値までまとめてきました。前回(第3章レッスン1)は、参考にしたアプリのUIを模写し、リフトに合わせて作り変えて、参考UIパターンの引き出しにしました。今回はUIの基礎知識を学び、その引き出しがなぜこう作られているかを原則で言語化できるようにします。仕上げる成果物は、引き出した画面を学んだ原則で解説したメモです。

このレッスンでやるのは、良いUIに共通する基礎知識を身につけ、前回の引き出しを、なぜこう作られているかで説明できるようにすることです。第1章で学んだUXデザインの7ステップのうち、ここはUIを設計する段階にあたります。第2章では、リフトの案件でゴールを定義し、リサーチから要件と価値をまとめてきました。前回(第3章レッスン1)は、参考にしたアプリのUIを模写し、リフトに合わせて作り変えて、UIパターンの引き出しにしました。ただ、形を作り変えられても、なぜその形がよいのかを説明できないと、次の画面で応用できません。今回はその理由を、コンポーネントの定石・アフォーダンス・タッチターゲット・プラットフォームの標準・ニールセンの10ヒューリスティック・アクセシビリティ・UXライティングという順で学びます。ここで身につけた観点は、このあとリフトのUIを設計するとき、なぜこの形にしたかを説明する判断基準になります。

コンポーネントには定石がある

ボタン・フォーム・ナビゲーションのような画面部品(コンポーネント)には、使いやすくするための決まった作り方があります。ゼロから考えるより、この定石を土台にするほうが、利用者が迷わない画面になります。

分かりやすいのがボタンの状態設計です。ボタンには、通常・ホバー(カーソルを重ねた状態)・押下(押している状態)・無効(押せない状態)の4つの状態があり、それぞれ見た目を変えます。見た目が変わることで、いまこのボタンがどういう状態かが画面から伝わります。とくに無効状態は、なぜ今は押せないのかを示す役割を持ちます。必須項目が空のうちは予約ボタンを薄い無効の見た目にし、入力が埋まると押せる見た目に変える、という作り方です。

見本:リフトの予約ボタンの4状態
① 通常
押せる(濃い色で存在感)
② ホバー
少し明るく・浮く(反応の予告)
③ 押下
濃く・沈む(押している最中)
④ 無効
今は押せない(必須が未入力)
ベースの色:深緑 #2F5D50(リフトのブランドカラー)

フォームでは、入力欄が何を入れる場所か分かるラベルを添え、必須項目を示し、入力を間違えたときはどこがどう違うかを伝えます。ナビゲーションでは、利用者がいまどの画面にいるか(現在地)を示し、元の画面へ戻れるようにします。どれも、利用者が迷わないための共通の工夫です。入力欄も、いま操作している欄(フォーカス)や間違い(エラー)を見た目で返します。

見本:入力欄の3状態(通常・フォーカス・エラー)
① 通常
ラベルと必須の印で、何を入れる欄か分かる
② フォーカス
枠の色とリングで、いま入力中の欄が分かる
③ エラー
「@」が含まれていません。例:name@example.com
✓ Point !
状態や現在地は、見た目で伝える

押せる・押せない、いまどこにいる、といった状態は、文字で説明しなくても色や形の違いで伝わります。利用者が画面を見た瞬間に判断できるので、操作の迷いが減ります。文章の注意書きに頼るより、見た目そのもので状態を示すのが定石です。

Q
確認クイズ 1/3
予約フォームで、必須項目がまだ入力されていません。予約ボタンの扱いとして、コンポーネントの定石に沿っているのはどれでしょう?
正解です!
無効状態を見た目で示すと、今は押せないことと、埋めれば押せることの両方が伝わります。押せる見た目のまま無反応(D)だと故障を疑われ、ボタンを消す(C)と次に何をすればよいかが見えなくなります。
惜しい!
押せる見た目のまま押させてエラー(A)や、無反応(D)では、なぜ進めないかが伝わりません。定石は、無効状態を薄い色などで見せ、条件が整うと押せる見た目に変える(B)ことです。

アフォーダンスとタッチターゲット

アフォーダンスとは、形がその使い方を示すことです。少し浮き上がって見えるボタンは押せそうに見え、下線のついた青い文字はリンクだと分かります。利用者は説明を読まなくても、見た目から操作を予想します。逆に、押せないただの飾りを押せそうな見た目にすると、利用者は押しても反応がなく戸惑います。押せるものは押せるように、押せないものはそう見えないように作ります。

アフォーダンス:押せることが見た目で伝わるか
✗ 悪い例
予約する

ただの文字にしか見えず、押せることが伝わらない(平坦で境界も影もない)。

◯ 良い例

色・厚み(影)・余白があり、押せそうだと一目で分かる。

スマホでは指で操作するため、押せる部分の大きさも重要です。小さすぎるボタンは狙って押せず、隣を誤って押してしまいます。この押せる領域の大きさをタッチターゲットと呼び、iOSは約44ポイント、Androidは約48dpを最小サイズの目安とします。ボタン同士の間隔も十分に取り、指先はマウスのカーソルより太いことを前提に設計します。

タッチターゲット:指で正確に押せる大きさと間隔か
✗ 悪い例

小さく密集し、指では隣を誤って押しやすい。

◯ 良い例

44pt(iOS)/48dp(Android)を目安に、十分な大きさと間隔で正確に押せる。

✓ Point !
見た目とサイズは、操作の合図

押せそうに見えて押せない、押せるのに小さくて押しにくい。こうした見た目と操作のズレが、利用者の迷いや誤操作を生みます。押せるものだけを押せる見た目にし、指で確実に押せる大きさを確保するのが基本です。

プラットフォームの標準に従う(HIG・Material)

スマホアプリのデザインには、OSごとの標準ガイドラインがあります。iPhoneやiPadはAppleのヒューマンインターフェイスガイドライン(HIG)、AndroidはGoogleのマテリアルデザインです。ボタンやアイコン、画面の切り替え方の作法が、それぞれ細かく決められています。

なぜ標準に従うのかというと、利用者はすでに他のアプリで操作を覚えているからです。戻るボタンの位置や共有アイコンの形が標準どおりなら、初めて開いたアプリでも迷わず操作できます。独自の作法にすると、見た目は新しくても使い方を一から覚え直すことになり、利用者の負担が増えます。

観点HIG(iOS)マテリアルデザイン(Android)
提供元AppleGoogle
主な対象iPhone・iPadAndroidスマホ・タブレット
見た目の考え方余白とシンプルさを重視し、内容を主役にする影と動きで、要素の重なりや階層を示す
✓ Point !
標準を土台に、必要なところだけ変える

まず標準に従うと、利用者の学習コストを下げられます。そのうえで、ブランドらしさを出したいところだけ、意図を持って変えます。理由なく標準を崩すと、目新しさより使いにくさが残ります。

ニールセンの10ヒューリスティック

できあがった画面が使いやすいかを点検するとき、便利な物差しがあります。ヤコブ・ニールセンがまとめた10のユーザビリティ・ヒューリスティックです。ヒューリスティックとは、経験から導かれた点検の目安のことです。

1
システムの状態を見せる
読み込み中や完了など、いま何が起きているかを必ず返す。
2
現実の言葉に合わせる
専門用語でなく、利用者になじみのある表現で伝える。
3
取り消し・やり直しができる
間違えても戻れる出口(キャンセル・元に戻す)を用意する。
4
一貫性と標準を保つ
同じものは同じ見せ方にそろえ、世の中の標準に従う。
5
エラーを予防する
そもそも間違えにくい作りにして、ミスを未然に防ぐ。
6
覚えさせず、見て分かる
記憶に頼らせず、選択肢や情報を画面に見せる。
7
効率よく使える近道
慣れた人が速く操作できるショートカットを用意する。
8
最小限で整理された表示
余計な要素を削ぎ、いま必要な要点だけを見せる。
9
エラーから回復できる
何が起きたかと、次にどう直せばよいかまで伝える。
10
必要なときにヘルプを見られる
困ったときに手引きへたどり着ける導線を置く。
図:暗記用ではなく、できあがった画面を点検するチェックリストとして使う10項目。

10項目には、システムの状態を見せる、利用者になじみのある言葉を使う、操作を取り消せるようにする、一貫性を保つ、エラーを予防する、などが含まれます。すべてを暗記する必要はありません。前回作った引き出しの画面を、この10項目で一つずつ点検すると、なぜ使いやすいのか、どこが惜しいのかを言葉にできます。

✓ Point !
システムの状態は、必ず利用者に返す

予約が完了したのか、まだ処理中なのか。画面が何も返さないと、利用者は自分の操作が届いたか分からず不安になります。読み込み中の表示や完了メッセージのように、いまどうなっているかを必ず見せます。これは、セクション1で見たボタンの状態設計と同じ考え方です。

Q
確認クイズ 2/3
予約ボタンを押したあと、画面が数秒変わらず、予約できたのかどうか分かりません。ニールセンの10ヒューリスティックから、まず改善すべき点はどれでしょう?
正解です!
いまどうなっているかを利用者に返すのが、システムの状態を見せるという項目です。読み込み中の表示や完了メッセージがないと、利用者は不安になり、二重に押してしまうこともあります。配色やヘルプでは、この不安は解決しません。
惜しい!
問題は、押した後に何が起きたか分からないことです。ニールセンの1つ目、システムの状態を見せる(A)が該当します。読み込み中や完了を表示すれば、利用者は安心して待てます。

アクセシビリティとUXライティングの基礎

使いやすさは、できるだけ多くの人に届く形で考えます。これがアクセシビリティです。基本は2つあります。1つは色のコントラストで、背景と文字の明るさの差が小さいと読みにくくなります。もう1つは文字サイズで、本文が小さすぎると読めません。スマホの本文は16ピクセル前後を目安にします。

色の使い方にも注意します。エラーを赤い色だけで示すと、色の見え方が異なる人には伝わりません。色に加えて、文字やアイコンでも意味を示すようにします。

! 注意
色だけで意味を伝えない

赤で必須、緑で完了のように色だけで区別すると、色覚の特性によっては違いが分かりません。色と一緒に、文字やマークでも同じ意味を示してください。これは、後の通し課題でUIを作るときにも守るべき基本です。

画面に出す言葉も設計の一部です。これがUXライティングです。ボタンのラベルは、送信のような一般的な言葉より、予約するのように押した後に何が起きるかが分かる言葉にします。エラーメッセージは、何が起きたかだけでなく、次にどうすれば直るかまで伝えます。短く、利用者の言葉で書くのが基本です。

Q
確認クイズ 3/3
ある予約アプリの決定ボタンが、薄いグレーの小さな文字で表示され、背景との明暗差もほとんどありません。改善案として最も適切なのはどれでしょう?
正解です!
読みにくさはコントラスト不足、押しにくさはタッチターゲットの小ささが原因です。両方を直すBが適切です。赤い色だけ(C)は色覚の特性によって伝わらず、ヘルプ頼み(D)は設計での解決を先送りにしています。
惜しい!
原因は、明暗差の小ささ(コントラスト)とボタンの小ささ(タッチターゲット)の2つです。装飾フォント(A)は読みやすさを下げ、赤だけ(C)は色に頼りすぎです。両方を直すBが、アクセシビリティとタッチターゲットの両方に沿っています。

演習:引き出した画面を原則で解説する

ここからは、学んだ原則を実際に使ってみます。前回(3-1)でまとめた参考UIパターンの引き出しから画面を1つ選び、なぜこう作られているかを原則で解説します。

リフト|予約内容の入力
ステップ 2/3 お客様情報
お名前 *必須
山田 太郎
メールアドレス *必須
yamada@example.com
予約を確定する
リフトの予約内容の入力画面
アフォーダンス
予約ボタンは濃い色で押せそう。入力前は薄い無効表示にする
ラベル
各入力欄にラベルと「*必須」を明示し、何を入れるか分かる
現在地
上部の「ステップ 2/3」で今どこにいるか分かる
惜しい点
補助テキストの色が薄く、コントラストが弱い箇所がある
図:原則で画面を読み解いた解説メモが、今回の成果物のゴール。
演習 3-2
📋 事前準備
  • 前回(第3章レッスン1)でまとめた参考UIパターンの引き出しを開いておく
  • 解説する画面のスクリーンショットを1枚用意する
  • 解説を書き込む場所(メモ帳やドキュメント、Figmaの注記など)を用意する

STEP 1:解説する画面を1つ選ぶ

  • 引き出しの中から、予約や入力など操作のある画面を1つ選ぶ
  • その画面のスクリーンショットを手元に開く

STEP 2:原則ごとに点検する

  • コンポーネントの定石:ボタンの状態・フォーム・ナビは、どんな理由でその形か
  • アフォーダンス:押せる部分は押せそうに見えるか。押せない飾りを押せそうに見せていないか
  • タッチターゲット:指で押せる大きさ・間隔があるか
  • プラットフォームの標準:戻る操作やアイコンが、OSの作法に沿っているか
  • ニールセンの10ヒューリスティック:気になる項目で点検する(例:システムの状態を見せる・一貫性)
  • アクセシビリティ・UXライティング:コントラスト・文字サイズ・色の使い方・画面の言葉はどうか

STEP 3:解説メモにまとめる

気づいたことを、次の観点で1画面ぶんまとめます。良い点だけでなく惜しい点も書くと、自分で設計するときの判断材料になります。

観点書くこと
コンポーネントの定石ボタンの状態・フォーム・ナビが、どんな理由でその形になっているか
アフォーダンス・タッチターゲット押せそうに見えるか、指で押せる大きさと間隔があるか
標準・ニールセン点検OSの作法どおりか。10項目で気づいた良い点・惜しい点
アクセシビリティ・UXライティングコントラスト・文字サイズ・色の使い方・ボタンやメッセージの言葉

完了条件(成果物)

  • 解説メモ:選んだ画面1つについて、上の観点でなぜこう作られているかを言語化したもの
  • 惜しい点と改善案:1つ以上、こうすればもっと使いやすいという改善案を添える
不安なところがあれば、コーチに相談してみましょう。

ここで言葉にした理由は、通し課題で自分のUIを設計するとき、なぜこの形にしたかを説明する根拠になります。良いUIの理由を言葉にできると、そのまま自分の設計にも使えます。

CHECK
理解度チェック
UIコンポーネントの定石(ボタンの状態設計・フォーム・ナビ)を説明できる
ボタンには通常・ホバー・押下・無効の4状態があり、見た目を変えることで今の状態を伝えます。無効状態は、なぜ今は押せないかと、埋めれば押せることを示す役割でした。フォームはラベルと必須表示、ナビは現在地と戻り先を示すのが定石です。
アフォーダンス・タッチターゲット・プラットフォーム標準を、画面を点検する観点として使える
アフォーダンスは、形で使い方を示すことです。押せるものは押せる見た目にし、押せない飾りを押せそうに見せません。タッチターゲットは指で押せる大きさ(iOS約44ポイント・Android約48dpが目安)。HIGとマテリアルデザインの標準に従うと、利用者の学習コストを下げられます。
ニールセン10・アクセシビリティ・UXライティングの基礎を押さえ、参考UIパターンを原則で言語化できる
ニールセンの10ヒューリスティックは、画面を点検するチェックリストとして使います。アクセシビリティの基本はコントラストと文字サイズで、色だけに頼らないこと。UXライティングは、押した後が分かるボタンの言葉と、直し方まで伝えるエラーメッセージが基本です。これらの観点で、引き出した画面がなぜこう作られているかを言語化できます。