- ✓ボタンの状態設計・アフォーダンス・タッチターゲットなど、UIコンポーネントの定石を説明できる
- ✓HIG・Material、ニールセンの10ヒューリスティック、アクセシビリティとUXライティングの基礎を、画面を点検する観点として使える
- ✓前回引き出した参考UIパターンを、これらの原則でなぜこう作られているか言語化できる
第2章では、リフトの案件でゴールを定義し、リサーチから要件と価値までまとめてきました。前回(第3章レッスン1)は、参考にしたアプリのUIを模写し、リフトに合わせて作り変えて、参考UIパターンの引き出しにしました。今回はUIの基礎知識を学び、その引き出しがなぜこう作られているかを原則で言語化できるようにします。仕上げる成果物は、引き出した画面を学んだ原則で解説したメモです。
このレッスンでやるのは、良いUIに共通する基礎知識を身につけ、前回の引き出しを、なぜこう作られているかで説明できるようにすることです。第1章で学んだUXデザインの7ステップのうち、ここはUIを設計する段階にあたります。第2章では、リフトの案件でゴールを定義し、リサーチから要件と価値をまとめてきました。前回(第3章レッスン1)は、参考にしたアプリのUIを模写し、リフトに合わせて作り変えて、UIパターンの引き出しにしました。ただ、形を作り変えられても、なぜその形がよいのかを説明できないと、次の画面で応用できません。今回はその理由を、コンポーネントの定石・アフォーダンス・タッチターゲット・プラットフォームの標準・ニールセンの10ヒューリスティック・アクセシビリティ・UXライティングという順で学びます。ここで身につけた観点は、このあとリフトのUIを設計するとき、なぜこの形にしたかを説明する判断基準になります。
コンポーネントには定石がある
ボタン・フォーム・ナビゲーションのような画面部品(コンポーネント)には、使いやすくするための決まった作り方があります。ゼロから考えるより、この定石を土台にするほうが、利用者が迷わない画面になります。
分かりやすいのがボタンの状態設計です。ボタンには、通常・ホバー(カーソルを重ねた状態)・押下(押している状態)・無効(押せない状態)の4つの状態があり、それぞれ見た目を変えます。見た目が変わることで、いまこのボタンがどういう状態かが画面から伝わります。とくに無効状態は、なぜ今は押せないのかを示す役割を持ちます。必須項目が空のうちは予約ボタンを薄い無効の見た目にし、入力が埋まると押せる見た目に変える、という作り方です。
フォームでは、入力欄が何を入れる場所か分かるラベルを添え、必須項目を示し、入力を間違えたときはどこがどう違うかを伝えます。ナビゲーションでは、利用者がいまどの画面にいるか(現在地)を示し、元の画面へ戻れるようにします。どれも、利用者が迷わないための共通の工夫です。入力欄も、いま操作している欄(フォーカス)や間違い(エラー)を見た目で返します。
押せる・押せない、いまどこにいる、といった状態は、文字で説明しなくても色や形の違いで伝わります。利用者が画面を見た瞬間に判断できるので、操作の迷いが減ります。文章の注意書きに頼るより、見た目そのもので状態を示すのが定石です。
アフォーダンスとタッチターゲット
アフォーダンスとは、形がその使い方を示すことです。少し浮き上がって見えるボタンは押せそうに見え、下線のついた青い文字はリンクだと分かります。利用者は説明を読まなくても、見た目から操作を予想します。逆に、押せないただの飾りを押せそうな見た目にすると、利用者は押しても反応がなく戸惑います。押せるものは押せるように、押せないものはそう見えないように作ります。
ただの文字にしか見えず、押せることが伝わらない(平坦で境界も影もない)。
色・厚み(影)・余白があり、押せそうだと一目で分かる。
スマホでは指で操作するため、押せる部分の大きさも重要です。小さすぎるボタンは狙って押せず、隣を誤って押してしまいます。この押せる領域の大きさをタッチターゲットと呼び、iOSは約44ポイント、Androidは約48dpを最小サイズの目安とします。ボタン同士の間隔も十分に取り、指先はマウスのカーソルより太いことを前提に設計します。
小さく密集し、指では隣を誤って押しやすい。
44pt(iOS)/48dp(Android)を目安に、十分な大きさと間隔で正確に押せる。
押せそうに見えて押せない、押せるのに小さくて押しにくい。こうした見た目と操作のズレが、利用者の迷いや誤操作を生みます。押せるものだけを押せる見た目にし、指で確実に押せる大きさを確保するのが基本です。
プラットフォームの標準に従う(HIG・Material)
スマホアプリのデザインには、OSごとの標準ガイドラインがあります。iPhoneやiPadはAppleのヒューマンインターフェイスガイドライン(HIG)、AndroidはGoogleのマテリアルデザインです。ボタンやアイコン、画面の切り替え方の作法が、それぞれ細かく決められています。
なぜ標準に従うのかというと、利用者はすでに他のアプリで操作を覚えているからです。戻るボタンの位置や共有アイコンの形が標準どおりなら、初めて開いたアプリでも迷わず操作できます。独自の作法にすると、見た目は新しくても使い方を一から覚え直すことになり、利用者の負担が増えます。
| 観点 | HIG(iOS) | マテリアルデザイン(Android) |
|---|---|---|
| 提供元 | Apple | |
| 主な対象 | iPhone・iPad | Androidスマホ・タブレット |
| 見た目の考え方 | 余白とシンプルさを重視し、内容を主役にする | 影と動きで、要素の重なりや階層を示す |
まず標準に従うと、利用者の学習コストを下げられます。そのうえで、ブランドらしさを出したいところだけ、意図を持って変えます。理由なく標準を崩すと、目新しさより使いにくさが残ります。
ニールセンの10ヒューリスティック
できあがった画面が使いやすいかを点検するとき、便利な物差しがあります。ヤコブ・ニールセンがまとめた10のユーザビリティ・ヒューリスティックです。ヒューリスティックとは、経験から導かれた点検の目安のことです。
10項目には、システムの状態を見せる、利用者になじみのある言葉を使う、操作を取り消せるようにする、一貫性を保つ、エラーを予防する、などが含まれます。すべてを暗記する必要はありません。前回作った引き出しの画面を、この10項目で一つずつ点検すると、なぜ使いやすいのか、どこが惜しいのかを言葉にできます。
予約が完了したのか、まだ処理中なのか。画面が何も返さないと、利用者は自分の操作が届いたか分からず不安になります。読み込み中の表示や完了メッセージのように、いまどうなっているかを必ず見せます。これは、セクション1で見たボタンの状態設計と同じ考え方です。
アクセシビリティとUXライティングの基礎
使いやすさは、できるだけ多くの人に届く形で考えます。これがアクセシビリティです。基本は2つあります。1つは色のコントラストで、背景と文字の明るさの差が小さいと読みにくくなります。もう1つは文字サイズで、本文が小さすぎると読めません。スマホの本文は16ピクセル前後を目安にします。
色の使い方にも注意します。エラーを赤い色だけで示すと、色の見え方が異なる人には伝わりません。色に加えて、文字やアイコンでも意味を示すようにします。
赤で必須、緑で完了のように色だけで区別すると、色覚の特性によっては違いが分かりません。色と一緒に、文字やマークでも同じ意味を示してください。これは、後の通し課題でUIを作るときにも守るべき基本です。
画面に出す言葉も設計の一部です。これがUXライティングです。ボタンのラベルは、送信のような一般的な言葉より、予約するのように押した後に何が起きるかが分かる言葉にします。エラーメッセージは、何が起きたかだけでなく、次にどうすれば直るかまで伝えます。短く、利用者の言葉で書くのが基本です。
演習:引き出した画面を原則で解説する
ここからは、学んだ原則を実際に使ってみます。前回(3-1)でまとめた参考UIパターンの引き出しから画面を1つ選び、なぜこう作られているかを原則で解説します。
- ●前回(第3章レッスン1)でまとめた参考UIパターンの引き出しを開いておく
- ●解説する画面のスクリーンショットを1枚用意する
- ●解説を書き込む場所(メモ帳やドキュメント、Figmaの注記など)を用意する
STEP 1:解説する画面を1つ選ぶ
- 引き出しの中から、予約や入力など操作のある画面を1つ選ぶ
- その画面のスクリーンショットを手元に開く
STEP 2:原則ごとに点検する
- コンポーネントの定石:ボタンの状態・フォーム・ナビは、どんな理由でその形か
- アフォーダンス:押せる部分は押せそうに見えるか。押せない飾りを押せそうに見せていないか
- タッチターゲット:指で押せる大きさ・間隔があるか
- プラットフォームの標準:戻る操作やアイコンが、OSの作法に沿っているか
- ニールセンの10ヒューリスティック:気になる項目で点検する(例:システムの状態を見せる・一貫性)
- アクセシビリティ・UXライティング:コントラスト・文字サイズ・色の使い方・画面の言葉はどうか
STEP 3:解説メモにまとめる
気づいたことを、次の観点で1画面ぶんまとめます。良い点だけでなく惜しい点も書くと、自分で設計するときの判断材料になります。
| 観点 | 書くこと |
|---|---|
| コンポーネントの定石 | ボタンの状態・フォーム・ナビが、どんな理由でその形になっているか |
| アフォーダンス・タッチターゲット | 押せそうに見えるか、指で押せる大きさと間隔があるか |
| 標準・ニールセン点検 | OSの作法どおりか。10項目で気づいた良い点・惜しい点 |
| アクセシビリティ・UXライティング | コントラスト・文字サイズ・色の使い方・ボタンやメッセージの言葉 |
完了条件(成果物)
- 解説メモ:選んだ画面1つについて、上の観点でなぜこう作られているかを言語化したもの
- 惜しい点と改善案:1つ以上、こうすればもっと使いやすいという改善案を添える
ここで言葉にした理由は、通し課題で自分のUIを設計するとき、なぜこの形にしたかを説明する根拠になります。良いUIの理由を言葉にできると、そのまま自分の設計にも使えます。