第4章
ユーザビリティテスト — 作ったプロトタイプを人に試してもらい、つまずきを見つける
レッスン 4-2 プロトタイピングと検証 ⏱ 所要時間:約150分
GOAL
このレッスンのゴール
⏱ 約150分
  • 検証項目を、第2章で定義した要件(2-6)と価値(2-7)に紐づけて設計できる
  • コーチが被験者役を務めるユーザビリティテストを、タスクと観察の視点を用意して実施できる
  • テスト中のつまずきを観察・記録し、改善につながる課題としてテスト記録にまとめられる
通し課題

前回(4-1)では、第3章で仕上げたリフトのUIを指で操作できるプロトタイプにしました。今回はそれをコーチに試してもらい、どこでつまずくかを見つけます。仕上げる成果物は、検証項目・タスク・観察したつまずき・課題をまとめたテスト記録です。

前回、リフトの予約サービスのプロトタイプが、指で押すと画面が切り替わるところまで動くようになりました。第3章で仕上げたUIを、実際に操作できる形にしたものです。ただ、それが使いやすいかどうかは、作った自分には分かりません。自分はどこを押せばよいかを知っているので、迷わず進めてしまうからです。このレッスンでやるのは、そのプロトタイプを人に試してもらい、どこで手が止まるか、どこで迷うかを観察して、直すべき課題を見つけることです。試してもらう相手は、コーチングでコーチにお願いします。ただ触ってもらうのではなく、第2章で定義した価値と要件から確かめたいことを先に決め、具体的なタスクを渡して観察します。Figma教材では見本をもとに画面を形にしましたが、作ったものを人に試して直す工程はありませんでした。ここが、第1章で学んだUXデザインの7ステップの⑥にあたる検証の工程です。

何を確かめるかを先に決める(要件と価値に紐づける)

ユーザビリティテストは、ただ触ってもらうことではありません。何を確かめたいかを先に決めておくと、観察がぶれず、後で課題を判断しやすくなります。

確かめることは大きく2つです。第2章で定義した価値が、このプロトタイプで本当に体験できるか。そして、予約という目的まで迷わず到達できるか。この2つを、要件定義書(2-6)と価値定義シート(2-7)に立ち返って、具体的な検証項目に落とします。

検証項目は、第2章で定義した要件・価値から生まれる(①→②を軸に設計する)
1
第2章の成果物
要件定義書(2-6)・価値定義シート(2-7)
2
検証項目
価値を体験できるか/迷わず予約に到達できるか
3
タスク
被験者に渡す具体的な指示
4
観察
テスト中に手の動きを見る
5
課題
つまずきの洗い出し
図:検証項目は思いつきでなく、第2章で自分が定義した要件・価値から出す(①→②)。そこからタスク→観察→課題へつなげる。

具体的には、次のように紐づけます。確かめたいことの一つひとつが、2章のどの成果物から来ているかをはっきりさせておきます。

確かめたいこと紐づく第2章の成果物プロトタイプで見る点
定義した価値を体験できるか価値定義シート(2-7)怖くない・続けられそうと感じられる画面や言葉になっているか
迷わず予約に到達できるか要件定義書(2-6)の主要機能日時の選択から予約完了まで、手が止まらずに進めるか
不安なく初回体験を申し込めるか価値定義シート+要件定義書料金や所要時間など、申し込む前に知りたい情報が出ているか
✓ Point !
検証項目は要件と価値から出す

確かめることを、自分が気になる見た目や思いつきで決めないのが要点です。第2章で自分が定義した要件と価値に照らして、それが実現できているかを見ます。こうすると、見つけたつまずきも、どの要件・価値に関わる課題かで判断できます。

Q
確認クイズ 1/3
プロトタイプが完成しました。ユーザビリティテストで確かめる項目は、どこから決めるのが適切でしょう?
正解です!
検証項目は、2章で自分が定義した要件と価値から出します。定義した価値が体験できるか、迷わず予約に到達できるか。ここを確かめると、見つかったつまずきも要件・価値に照らして判断できます。
惜しい!
見た目や競合の機能から決めると、確かめる基準が定まりません。第2章の要件定義書と価値定義シートに立ち返り、それが実現できているかで検証項目を決めるのが正解です(B)。

誰に試してもらうか(コーチが被験者役を務める)

確かめることが決まったら、次は誰に試してもらうかです。このテストは、コーチングの中で、コーチに被験者役をお願いして実施します。

ここまでの演習では、クライアント役やユーザー役をAI(Gem)にお願いしてきました。ただ、ユーザビリティテストは人に見てもらいます。使いやすさは、実際に指で操作する人が、どこで手を止め、どこで迷うかという行動に表れます。画面を前にした人の手の動きや、迷ったときの間は、AIには再現できません。だから、この工程ではAIを使わず、コーチに直接操作してもらいます。

作った自分がテストしないのにも理由があります。作った本人は、どこを押せばよいかを最初から知っています。だから迷わず進めてしまい、初めて使う人がつまずく場所に気づけません。初めてその画面に触れる人の視点が必要です。

✓ Point !
作った本人は被験者にならない

自分は答えを知っているので、どこでも迷わず進めてしまいます。初めて触るコーチに操作してもらうと、説明なしでは伝わらない場所や、思っていた押し方と違う操作が見えてきます。これが、自分ひとりでは見つけられないつまずきの手がかりになります。

Q
確認クイズ 2/3
このユーザビリティテストは、誰に被験者役をお願いするのが適切でしょう?
正解です!
使いやすさは、実際に指で操作する人の行動に表れます。手が止まる様子はAIには再現できず、作った本人は答えを知っていて迷いません。コーチに初めて使う人として操作してもらい、その場で観察します。
惜しい!
作った本人は操作に迷わず、AIは実際の手の動きを再現できません。あとで感想を聞くだけでは、どこで手が止まったかが分かりません。コーチングでコーチに被験者役をお願いし、その場で観察するのが正解です(C)。

タスクを渡して観察の視点を決める

自由に触ってくださいと渡すと、被験者は何をすればよいか定まらず、こちらも何を見ればよいか定まりません。予約という目的に向かう具体的なタスクを渡し、観察する視点を決めておきます。

タスクは、セクション1で決めた検証項目を確かめられる形にします。リフトの営業時間(平日10-21時・土10-18時)の中で、実際に起きそうな予約の場面を指示にします。

#被験者に渡すタスクこのタスクで確かめること
1平日の夜19時に、初回の体験トレーニングを予約してください日時の選択から予約完了まで、迷わず到達できるか(主要フロー)
2土曜の午前で、空いている時間を見つけて予約してください空いている時間が、ひと目で見つけられるか
3予約した日時を、あとから確認してください予約後に内容を確認でき、安心につながるか(価値)

タスクを渡したあとは、口を出さずに観察します。見るのは、どこで手が止まるか、どこで迷って画面を行き来するか、どこを押し間違えるか、どこであきらめそうになるか、の4点です。この4点が、直すべき課題の手がかりになります。

中央にスマホを操作する人の手(予約画面を表示)を大きく描き、その周囲に観察の4視点(手が止まる・迷って行き来する・押し間違える・あきらめそうになる)を放射状に配置した概念図
図:観察者は口を出さず、この4つの様子を見て記録する。
! 注意
テスト中は助け舟を出さない

被験者が迷っても、やり方を教えたり、ここを押してと誘導したりしないでください。教えた瞬間に、そのつまずきは記録できなくなります。困っている様子こそ、直すべき課題そのものです。答えたくなっても、まず黙って観察し、記録することを優先してください。

Q
確認クイズ 3/3
テストが終わりました。観察して見つかったつまずきを、次にどう扱うのが適切でしょう?(このレッスンの前半をふまえて考えましょう)
正解です!
見つかったつまずきは、第2章の要件・価値のどれに関わる課題かを整理してテスト記録に残します。こうすると、次の改善で何を優先するかを判断できます。実際に直すのは、次の4-3の工程です。
惜しい!
操作ミスとして外したり、記憶頼りで書いたりすると、課題を見落とします。どの要件・価値に関わるつまずきかを整理してテスト記録にまとめるのが正解です(B)。直すのは次の4-3で行います。

演習:コーチとテストを実施しテスト記録にまとめる

ここからは実践です。これまで学んだ順に、確かめることを決め、タスクを用意し、コーチに被験者役をお願いしてテストを行い、つまずきをテスト記録にまとめます。使いやすさは実際の人の操作に表れるため、コーチに直接見てもらいます。

演習 4-2
📋 事前準備
  • 前回(4-1)で作ったプロトタイプを、操作できる状態で開いておく
  • 第2章の要件定義書(2-6)と価値定義シート(2-7)を手元に開いておく
  • コーチングの時間を、コーチと合わせておく
  • 観察したことを書き留める記録用のメモを用意する

STEP 1:検証したいことを要件・価値から出す

  • 第2章の要件定義書と価値定義シートに立ち返る
  • 定義した価値を体験できるか、迷わず予約に到達できるか、を軸に検証項目を2〜3個書き出す
  • 各項目が、どの要件・価値から来ているかをメモに添える

STEP 2:タスクを用意する

  • 各検証項目を確かめられる具体的なタスクを用意する(例:平日の夜19時に体験を予約する)
  • タスクは、予約という目的に向かう指示にする(自由に触ってください、にしない)

STEP 3:観察の視点を決めてテストする

  • コーチングで、コーチに被験者役をお願いし、タスクを1つずつ渡す
  • 手が止まる・迷って行き来する・押し間違える・あきらめそうになる、の4点を観察する
  • 迷っても助け舟を出さず、黙って様子と操作を記録する

STEP 4:記録して課題を洗い出す

  • 観察したつまずきを、どのタスクの、どの場面で起きたかとあわせて書き出す
  • 各つまずきが、どの要件・価値に関わる課題かを整理する

完了条件(作成物)

  • テスト記録:検証項目(と紐づく要件・価値)/被験者に渡したタスク/観察したつまずき(どこで手が止まった・迷った等)/そこから洗い出した課題、の4つを含める
  • 課題には、どの要件・価値に関わるかを1行ずつ添える(次の4-3で改善の優先順位を判断するため)

テストを1回行うだけでも、自分では気づけなかったつまずきが必ず出てきます。ここで記録した課題は、次の4-3で改善版のUIに反映します。

CHECK
理解度チェック
検証項目を、第2章の要件と価値に紐づけて決められる
確かめることは、思いつきや見た目ではなく、要件定義書(2-6)と価値定義シート(2-7)から出します。定義した価値を体験できるか、迷わず予約に到達できるか、の2つが軸でした。こうすると、見つけたつまずきも要件・価値に照らして判断できます。
ユーザビリティテストをコーチ(人)に被験者役として実施する理由を説明できる
使いやすさは、実際に指で操作する人が、どこで手を止め、どこで迷うかという行動に表れます。この様子はAIには再現できず、作った本人は答えを知っていて迷いません。だからコーチングで、初めて使う人としてコーチに操作してもらいます。
タスクと観察の視点を用意し、つまずきをテスト記録にまとめられる
予約という目的に向かう具体的なタスクを渡し、手が止まる・迷う・押し間違える・あきらめそうになる、の4点を観察します。テスト中は助け舟を出さず、観察したつまずきと、どの要件・価値に関わる課題かをテスト記録にまとめます。