- ✓検証項目を、第2章で定義した要件(2-6)と価値(2-7)に紐づけて設計できる
- ✓コーチが被験者役を務めるユーザビリティテストを、タスクと観察の視点を用意して実施できる
- ✓テスト中のつまずきを観察・記録し、改善につながる課題としてテスト記録にまとめられる
前回(4-1)では、第3章で仕上げたリフトのUIを指で操作できるプロトタイプにしました。今回はそれをコーチに試してもらい、どこでつまずくかを見つけます。仕上げる成果物は、検証項目・タスク・観察したつまずき・課題をまとめたテスト記録です。
前回、リフトの予約サービスのプロトタイプが、指で押すと画面が切り替わるところまで動くようになりました。第3章で仕上げたUIを、実際に操作できる形にしたものです。ただ、それが使いやすいかどうかは、作った自分には分かりません。自分はどこを押せばよいかを知っているので、迷わず進めてしまうからです。このレッスンでやるのは、そのプロトタイプを人に試してもらい、どこで手が止まるか、どこで迷うかを観察して、直すべき課題を見つけることです。試してもらう相手は、コーチングでコーチにお願いします。ただ触ってもらうのではなく、第2章で定義した価値と要件から確かめたいことを先に決め、具体的なタスクを渡して観察します。Figma教材では見本をもとに画面を形にしましたが、作ったものを人に試して直す工程はありませんでした。ここが、第1章で学んだUXデザインの7ステップの⑥にあたる検証の工程です。
何を確かめるかを先に決める(要件と価値に紐づける)
ユーザビリティテストは、ただ触ってもらうことではありません。何を確かめたいかを先に決めておくと、観察がぶれず、後で課題を判断しやすくなります。
確かめることは大きく2つです。第2章で定義した価値が、このプロトタイプで本当に体験できるか。そして、予約という目的まで迷わず到達できるか。この2つを、要件定義書(2-6)と価値定義シート(2-7)に立ち返って、具体的な検証項目に落とします。
具体的には、次のように紐づけます。確かめたいことの一つひとつが、2章のどの成果物から来ているかをはっきりさせておきます。
| 確かめたいこと | 紐づく第2章の成果物 | プロトタイプで見る点 |
|---|---|---|
| 定義した価値を体験できるか | 価値定義シート(2-7) | 怖くない・続けられそうと感じられる画面や言葉になっているか |
| 迷わず予約に到達できるか | 要件定義書(2-6)の主要機能 | 日時の選択から予約完了まで、手が止まらずに進めるか |
| 不安なく初回体験を申し込めるか | 価値定義シート+要件定義書 | 料金や所要時間など、申し込む前に知りたい情報が出ているか |
確かめることを、自分が気になる見た目や思いつきで決めないのが要点です。第2章で自分が定義した要件と価値に照らして、それが実現できているかを見ます。こうすると、見つけたつまずきも、どの要件・価値に関わる課題かで判断できます。
誰に試してもらうか(コーチが被験者役を務める)
確かめることが決まったら、次は誰に試してもらうかです。このテストは、コーチングの中で、コーチに被験者役をお願いして実施します。
ここまでの演習では、クライアント役やユーザー役をAI(Gem)にお願いしてきました。ただ、ユーザビリティテストは人に見てもらいます。使いやすさは、実際に指で操作する人が、どこで手を止め、どこで迷うかという行動に表れます。画面を前にした人の手の動きや、迷ったときの間は、AIには再現できません。だから、この工程ではAIを使わず、コーチに直接操作してもらいます。
作った自分がテストしないのにも理由があります。作った本人は、どこを押せばよいかを最初から知っています。だから迷わず進めてしまい、初めて使う人がつまずく場所に気づけません。初めてその画面に触れる人の視点が必要です。
自分は答えを知っているので、どこでも迷わず進めてしまいます。初めて触るコーチに操作してもらうと、説明なしでは伝わらない場所や、思っていた押し方と違う操作が見えてきます。これが、自分ひとりでは見つけられないつまずきの手がかりになります。
タスクを渡して観察の視点を決める
自由に触ってくださいと渡すと、被験者は何をすればよいか定まらず、こちらも何を見ればよいか定まりません。予約という目的に向かう具体的なタスクを渡し、観察する視点を決めておきます。
タスクは、セクション1で決めた検証項目を確かめられる形にします。リフトの営業時間(平日10-21時・土10-18時)の中で、実際に起きそうな予約の場面を指示にします。
| # | 被験者に渡すタスク | このタスクで確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 平日の夜19時に、初回の体験トレーニングを予約してください | 日時の選択から予約完了まで、迷わず到達できるか(主要フロー) |
| 2 | 土曜の午前で、空いている時間を見つけて予約してください | 空いている時間が、ひと目で見つけられるか |
| 3 | 予約した日時を、あとから確認してください | 予約後に内容を確認でき、安心につながるか(価値) |
タスクを渡したあとは、口を出さずに観察します。見るのは、どこで手が止まるか、どこで迷って画面を行き来するか、どこを押し間違えるか、どこであきらめそうになるか、の4点です。この4点が、直すべき課題の手がかりになります。

被験者が迷っても、やり方を教えたり、ここを押してと誘導したりしないでください。教えた瞬間に、そのつまずきは記録できなくなります。困っている様子こそ、直すべき課題そのものです。答えたくなっても、まず黙って観察し、記録することを優先してください。
演習:コーチとテストを実施しテスト記録にまとめる
ここからは実践です。これまで学んだ順に、確かめることを決め、タスクを用意し、コーチに被験者役をお願いしてテストを行い、つまずきをテスト記録にまとめます。使いやすさは実際の人の操作に表れるため、コーチに直接見てもらいます。
- ●前回(4-1)で作ったプロトタイプを、操作できる状態で開いておく
- ●第2章の要件定義書(2-6)と価値定義シート(2-7)を手元に開いておく
- ●コーチングの時間を、コーチと合わせておく
- ●観察したことを書き留める記録用のメモを用意する
STEP 1:検証したいことを要件・価値から出す
- 第2章の要件定義書と価値定義シートに立ち返る
- 定義した価値を体験できるか、迷わず予約に到達できるか、を軸に検証項目を2〜3個書き出す
- 各項目が、どの要件・価値から来ているかをメモに添える
STEP 2:タスクを用意する
- 各検証項目を確かめられる具体的なタスクを用意する(例:平日の夜19時に体験を予約する)
- タスクは、予約という目的に向かう指示にする(自由に触ってください、にしない)
STEP 3:観察の視点を決めてテストする
- コーチングで、コーチに被験者役をお願いし、タスクを1つずつ渡す
- 手が止まる・迷って行き来する・押し間違える・あきらめそうになる、の4点を観察する
- 迷っても助け舟を出さず、黙って様子と操作を記録する
STEP 4:記録して課題を洗い出す
- 観察したつまずきを、どのタスクの、どの場面で起きたかとあわせて書き出す
- 各つまずきが、どの要件・価値に関わる課題かを整理する
完了条件(作成物)
- テスト記録:検証項目(と紐づく要件・価値)/被験者に渡したタスク/観察したつまずき(どこで手が止まった・迷った等)/そこから洗い出した課題、の4つを含める
- 課題には、どの要件・価値に関わるかを1行ずつ添える(次の4-3で改善の優先順位を判断するため)
テストを1回行うだけでも、自分では気づけなかったつまずきが必ず出てきます。ここで記録した課題は、次の4-3で改善版のUIに反映します。