松竹梅・アンカリングでメニュー価格を設計する
CHAPTER 2
松竹梅・アンカリングでメニュー価格を設計する
LESSON 2-1 価格設計の心理効果を理解する ⏱ 所要時間:約12分
GOAL
このレッスンのゴール
  • 松竹梅の3価格戦略とアンカリング効果、集客用のフロントエンド商品と利益を出すバックエンド商品を分けて設計する考え方を理解し、対象店舗のメニュー価格帯をどう設計すべきか判断できる

サロンボードのクーポン一覧を開くと、カラーメニューが8,000円の1種類しか並んでいません。
安いから選ばれるはずだと思っていたのに、値引きした分だけ利益は薄くなっています。
もっと高い技術力やケアの充実を伝えたいのに、それを見せる価格帯がクーポンにひとつも用意されていません。

松竹梅の3価格戦略とは

クーポン一覧に価格帯が1つしかないと、来店客はその価格が高いか安いかを比較する基準を持てません。
松竹梅(同じ施術に低・標準・高の3段階の価格帯を用意する方法のこと)は、この比較の基準そのものを作る考え方です。

人は価格を見るとき、その金額だけを単独で判断しているわけではありません。
他の選択肢と比べて高いのか安いのかを、無意識のうちに比較しながら評価しています。
比較する相手がなければ、その1つの価格が適正かどうかを判断する手がかりがなく、来店を迷っている人ほど決めきれずに離れてしまいやすくなります。

松竹梅の3価格帯の例:カット・カラー・パーマの各施術に梅(低価格)・竹(標準)・松(高価格)の3段階を並べた比較表

3段階の中で最も注文が集まりやすいのは、多くの場合、真ん中の価格帯です。
低価格帯は比較の基準になり、高価格帯は技術力の裏付けとして機能します。

初めて来店を検討している人は、その店の技術やサービスの実際の水準をまだ体感していません。
そのため、極端に安い価格帯を選ぶと物足りなさへの不安が残り、極端に高い価格帯を選ぶと必要以上の出費への抵抗が生まれます。
結果として、両端の間にある価格帯がちょうどよいと感じられ、選ばれやすくなります。
Sourireのカラーメニューが8,000円の1種類しかない状態は、この比較の基準そのものが存在しない状態だといえます。

✓ Point !
松竹梅は安さで選ばせる仕組みではない

松竹梅は比較の基準を作るための設計です。
低価格帯と高価格帯を両端に置き、その間の価格帯を主力メニューに設定すると、多くのお客様が違和感なくその価格を選びます。

Q
確認クイズ
Sourireのカラーメニューは8,000円の1種類だけです。松竹梅の考え方を踏まえると、まず何を追加すべきでしょうか?
正解です!
6,000円のライトプランと10,000円のプレミアムプランを両方追加して8,000円を真ん中に置くと、松竹梅の3段階が揃い、中間価格帯が選ばれやすくなります。
惜しい!
安い価格帯だけを追加すると、安いか同じかという比較の基準しか生まれません。
高価格帯だけにしても、比較の基準がなくなり新規客が選びにくくなります。
上下どちらの価格帯も揃えることで、真ん中の価格帯が選ばれやすくなります。

クーポンが1種類しかないメニューを見つけたときに使える考え方です。
同じ施術の上下の価格帯を1つずつ追加するだけで、比較の基準ができます。
自店のクーポン一覧を確認し、価格帯が1種類しかない施術がないかをまず数えてみましょう。

アンカリング効果で中価格を選ばれやすくする

アンカリング効果(最初に見た価格が基準になり、次に見る価格の印象が変わる心理効果のこと)は、価格帯の並べる順番にも関係します。
先に高い価格を見せると、次に見る価格が割安に感じられます。

一度目にした価格は、意識していなくても基準点として記憶に残ります。
その後に見る価格は、金額そのものの大小ではなく、先に見た基準点との差で評価されるようになるため、同じ数字でも見る順番によって受け取り方が変わります。

見せる順番で価格の印象が変わる:高価格を先に見せる並びと安い価格を先に見せる並びの比較

高価格帯を一覧の上位に配置すると、その下に続く中価格帯がお得に見えやすくなります。
並び順を変えるだけで、価格そのものを変えずに印象を調整できます。

この並び順の工夫は、松竹梅で複数の価格帯を用意したあとに効果を発揮します。
価格帯が1種類しかない状態では、そもそも見せる順番を選ぶ余地がありません。
複数の価格帯を用意できたら、次にどの順番で見せるかを意識することが重要です。

✓ Point !
アンカリングは価格をごまかす方法ではない

高価格帯にも見合う内容(トリートメントやケアの充実等)を用意した上で、並び順を工夫することが前提です。
中身が伴わない高価格帯を置くと、信頼を損ないます。

自店のクーポン一覧で価格の並び順を見直すときに使えます。
高価格帯を上に、中価格帯をその下に配置するだけで、印象が変わることがあります。
並び順を変えるだけで価格を下げずに印象を調整できる点は、値引きに頼らずに予約率を改善したいときの有効な手段です。

フロントエンド商品とバックエンド商品を分ける

集客のために用意する低価格メニューをフロントエンド商品(新規客を集める入り口の役割を持つメニューのこと)と呼びます。
利益を残すための本命メニューはバックエンド商品(来店後に案内する、利益率の高いメニューのこと)です。

新規のお客様は、価格の高さよりもまず来店のハードルの低さを重視する傾向があります。
そのため、集客の入り口には手の届きやすい価格のフロントエンド商品を置き、実際に来店して技術力やケアの効果を体感してもらったうえで、バックエンド商品を案内するという順番が機能します。

新規から利益を残すまでの流れ:新規客からフロントエンド商品、バックエンド商品、2回目以降の導線へ続く4ステップ

新規のお試し価格だけで利益を出そうとすると、値引き競争から抜け出せません。
来店後にセットメニューやケア商品を案内し、2回目以降はLINEなどの自社導線に誘導する設計で利益を残します。

同業のサロンも同じように新規客向けの割引クーポンを出しているため、価格だけで比較されると、より安い店へ流れてしまいます。
値下げだけで対抗しようとすれば、利益はさらに薄くなります。
だからこそ、集客と利益の回収を別のメニューで分担する設計が必要になります。

✓ Point !
入り口と利益の回収先は別物

フロントエンドは入り口、バックエンドは利益の回収先です。
この2つを混同すると、安いメニューだけを増やしてしまい、利益が薄くなります。

Q
確認クイズ
新規客向けの低価格クーポンだけを増やし続けると、サロン経営にどんな影響が出やすいでしょうか?
正解です!
フロントエンド商品ばかり増やすと新規客は集まっても利益は残りにくくなります。
バックエンド商品への案内とセットで設計することが重要です。
惜しい!
松竹梅の中間価格帯やアンカリング効果は、価格帯の見せ方・並び順に関する別の考え方です。
フロントエンド商品を増やすことと、所要時間の記載の要不要も直接は関係しません。

自店のクーポン一覧を確認する際は、フロントエンド商品とバックエンド商品がそれぞれどのメニューに当たるかを言葉にしてみましょう。
どちらかが思い当たらない場合は、集客と利益回収の設計がまだ分かれていない状態です。

Sourireの価格帯をどう設計するか

ここまでの3つの考え方を、Sourireの状態に当てはめて整理します。
3つを同時に考えると混乱しやすいため、今の状態と見直す考え方を1つずつ対応させて確認します。

今の状態 見直す考え方
クーポンが1種類しかない 松竹梅で3段階の価格帯を用意する
価格の安さだけを訴求している アンカリングで高価格帯を上位に配置し、中価格帯を主力にする
新規客の売上に偏り利益が薄い フロントエンド商品とバックエンド商品を分け、2回目以降の導線を用意する

3つの見直し方は、それぞれ独立した工夫ではなく、順番に積み重ねることで効果を発揮します。
松竹梅で複数の価格帯を用意しなければ、アンカリングで並べる順番を工夫する対象自体がありません。
フロントエンド商品とバックエンド商品を分けても、案内できる価格帯の選択肢がなければ、利益を残す設計には結びつきません。

①のクーポンが1種類しかない状態を残したまま②の並び順だけを整えても、比較の基準自体が生まれません。
①→②→③の順に手を付けると、無理なく積み上げられます。

自店のクーポン一覧がどの状態に近いかを確認し、当てはまる対応から着手しましょう。
次のレッスンでは、この価格設計をクーポン名にどう反映するかを見ます。

SUMMARY
  1. 松竹梅は低・標準・高の3段階を用意し、真ん中の価格帯を主力にする設計
  2. アンカリング効果は先に高価格を見せることで、後に見る中価格帯が割安に感じられる心理効果
  3. フロントエンド商品は新規客を集める入り口、バックエンド商品は来店後に利益を残す本命メニュー
  4. Sourireのように価格帯が1種類しかない場合は、まず3段階を用意することから着手する
チェック
理解度チェック
松竹梅の3価格戦略が、なぜ中間価格帯を選ばれやすくするのかを説明できる
低価格帯と高価格帯を両端に置くことで比較の基準ができ、その間にある中価格帯がちょうどよいと感じられやすくなるためです。
1種類の価格だけでは、この比較の基準自体が生まれません。
アンカリング効果を使うときに、価格帯の並び順をどう工夫すればよいか説明できる
高価格帯を一覧の上位に配置し、その下に中価格帯を続けると、中価格帯が割安に感じられやすくなります。
ただし高価格帯には内容が見合っていることが前提です。
フロントエンド商品とバックエンド商品を分ける理由を説明できる
フロントエンド商品(新規客を集める入り口)だけで利益を出そうとすると値引き競争に陥ります。
来店後にバックエンド商品(利益率の高いメニュー)を案内し、2回目以降は自社導線に誘導することで利益を残せます。