- ✓3C(顧客・競合・自社)で市場環境を整理できる
- ✓STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の流れを説明できる
- ✓「ターゲットを絞ることが、かえって広く届く」という考え方を説明できる
- ✓3CとSTPを用いて、差別化の方向性を独力で導出できる
Lesson4で提供価値を定義しました。
このレッスンでは、その価値をどのように届けるか(How)を考える前段階として、市場・競合・自社の状況を分析します。
ここで使う道具が3CとSTP分析です。
3C:顧客・競合・自社を整理する
目安の学習時間:20分
3Cは、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3点から現状を分析するフレームワークです。
競合比較を行う際によく使われます。
3Cは、単に3つの箱を埋める作業ではありません。
それぞれの視点で見るべきポイントが異なります。
- Customer(顧客):市場全体の規模、顧客のニーズ、購買行動の変化を見ます。Lesson2で作った調査サマリ・9段階分析がそのまま使えます
- Competitor(競合):競合の数、シェア、強み・弱み、価格帯、差別化の方向性を見ます
- Company(自社):自社が持つ強み・弱み、リソース(人材・資金・ブランド力)、他社にはない独自性を見ます
| 項目 | ファーストフード業界の例 |
|---|---|
| Customer(顧客) | 幅広い年齢層が利用し、安さ・手軽さを求める層と品質を求める層が存在する |
| Competitor(競合) | ハンバーガーを販売する競合店が多数あり、品質重視や期間限定商品で差別化を図る店舗がある |
| Company(自社) | 圧倒的なシェア率、コストを抑えた安価な商品提供、提供スピードの速さが強み |
3つの視点を並べると、顧客が求めていて、競合がまだ手薄で、自社なら実現できる領域が見えてきます。
この重なりを見つけることが、3C分析の最終的な目的です。
3C分析では、Companyの自社分析だけを詳しく書いて満足してしまうケースがよくあります。
しかし本来の目的は3つを比較することです。
顧客が求めているのに競合も自社も応えられていない領域や、競合が弱い領域を見つけるところまで進めましょう。
Competitorの見落とし:代替品も競合になる
競合というと、同じ商品・サービスを提供する会社を思い浮かべがちですが、それだけでは不十分です。
顧客の同じニーズを、まったく別の手段で満たしている代替品も競合として扱う必要があります。
例えば「映画館」の競合は他の映画館だけではありません。
「休日の余暇時間の使い方」という同じニーズを満たす、動画配信サービスやゲーム、外食なども広い意味での競合です。
直接競合だけでなく、こうした間接競合まで視野に入れることで、市場を正しく捉えられます。
STP分析:絞り込みからポジショニングへ
目安の学習時間:25分
STP分析は、企画・提案のポジショニング戦略を練る際に使うフレームワークで、次の3ステップからなります。
| ステップ | 内容 | 都内飲食店の例 |
|---|---|---|
| Segmentation (セグメンテーション) | 顧客をグループに分ける | 単身・カップル・家族連れ・友達同士、性別、年代で分ける |
| Targeting (ターゲティング) | グループごとの評価を把握し、狙う対象を決める | アンケートの結果、単身で来店する30〜40代の男性が多く満足度も高いため、ここをターゲットに決定 |
| Positioning (ポジショニング) | 他社との差別化を決める | 定食メニュー・一人飲みコースを増やし、オープンな雰囲気の店内づくりで他店と差別化 |
Segmentation:どんな軸で分けるか
顧客をグループに分ける軸には、いくつかの種類があります。
- デモグラフィック軸:年齢・性別・職業・年収など
- ジオグラフィック軸:居住地域・都市規模など
- サイコグラフィック軸:価値観・ライフスタイル・興味関心など
- 行動軸:利用頻度・購買のきっかけ・利用シーンなど
Lesson2の9段階分析やLesson3のペルソナで扱った情報は、そのままこれらの軸として使えます。
Targeting:狙う対象をどう選ぶか
分けたグループの中からどこを狙うかは、次のような観点で判断します。
- 市場規模:そのグループの人数・需要はどれくらいあるか
- 成長性:今後そのグループの需要は伸びるか
- 競合状況:そのグループを狙う競合はどれくらい強いか
- 自社との適合度:自社の強みがそのグループのニーズに合っているか
Positioning:どう位置づけるか
ポジショニングでは、狙った相手の頭の中で、自社が競合とどう違って見えるかを決めます。
「軸を2つ選んで図にする」「一文で言い切る」など、方法はいくつかありますが、共通して重要なのは競合が既に占めている位置を避け、自社の強みが活きる位置を選ぶことです。
代表的な方法がポジショニングマップです。
顧客が商品を選ぶ際に重視する2つの軸を選び、自社と競合をその図の上に配置します。
| 軸の例 | 都内飲食店の場合 |
|---|---|
| 縦軸 | 価格帯(低い⇔高い) |
| 横軸 | 雰囲気(にぎやか⇔落ち着いている) |
| 配置結果 | 「低価格×にぎやか」の居酒屋は競合が密集。「中価格×落ち着いている」の一人飲み向け空間は競合が手薄と判明 |
軸は思いつきで決めず、Lesson2の市場調査やLesson4のUSPで見えてきた、顧客が実際に比較検討で重視しているポイントから選びましょう。
図の上で空いている場所が見つかれば、そこが自社のポジショニング候補になります。
なぜターゲットを絞るのか
目安の学習時間:15分
ターゲットを絞ることは、一見すると届く相手を狭めるように感じられます。
しかし実際には、特定のターゲットに向けた明確なメッセージの方が、結果的に広い層に届くことがあります。
曖昧に「みんなに向けて」作ったメッセージより、「単身で来店する30〜40代の男性」に向けて作り込んだメニューや空間づくりの方が、結果的に店の魅力として広く伝わるのはこのためです。
「ターゲットを絞ると、それ以外の人が離れて売上が減るのでは」という不安を持つ方もいますが、これは誤解です。
実際には、誰にでも当てはまる曖昧なメッセージは、誰の記憶にも残りません。
特定の相手に向けた具体的なメッセージのほうが、狙った相手以外にも「自分に近い」と感じさせやすく、結果的に反応する人の総数は増えることが多いのです。
例えば化粧品ブランドが「敏感肌の30代女性」に向けて成分・使用感を具体的に語ると、敏感肌ではない人にも「これだけ丁寧に作られているなら安心できそう」という印象を与えます。
ターゲットを絞ることは、対象を除外することではなく、メッセージの解像度を上げるための手段だと捉えましょう。
3CのCustomerやSTPのSegmentation/Targetingは、Lesson2・3で作った調査サマリ・ペルソナと同じ情報を扱います。
3C・STPは、それらを「市場・競合との関係」という視点から捉え直す作業だといえます。
差別化の方向性をまとめる
3C・STPで見えてきた情報は、最後に「差別化の方向性」として一文にまとめておくと、後のLesson6以降の訴求設計にそのまま使えます。
次のような型に当てはめると整理しやすくなります。
| 型 | 都内飲食店の例 |
|---|---|
| 〔ターゲット〕に対して | 単身で来店する30〜40代の男性に対して |
| 〔競合と違う点〕によって | 定食メニューと一人飲みコースの豊富さによって |
| 〔提供する価値〕を届ける | 気兼ねなく過ごせる一人時間を届ける |
この一文は、Lesson4で定義した提供価値と矛盾しないかを必ず見比べてください。
矛盾がなければ、3C・STPの分析結果とLesson4までの提供価値定義が一本の線でつながっている状態です。
広告費の削減や競合数の減少、顧客の切り捨てが直接の効果ではありません。
習熟度確認課題
知識として理解した状態から、実際の題材に活かせる状態に引き上げるための課題です。
課題 — 3C分析・STP分析(目安の学習時間:30分)
Lesson2〜4と同じ商品・サービスを対象に、次の2項目を分析しましょう。
顧客・競合・自社の3つの視点で状況を整理します。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの手順で絞り込みます。
上記2項目の分析結果と、差別化の方向性をまとめた結論を作成してみましょう。
- 3Cは、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)から現状を分析するフレームワークである
- STP分析は、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順に進める
- ターゲットを絞ることは、対象を狭めるのではなく、メッセージを明確にして結果的に広く届けるための手段である
- 3C・STPは、Lesson2・3の調査サマリ・ペルソナを、市場・競合との関係から捉え直す作業である