- ✓インタビューの目的を1文で定め、オープンな問いを軸にした質問ガイドを独力で設計できる
- ✓誘導質問を避け、実体験と5Whysで動機や真の課題まで独力で深掘りできる
- ✓インタビュー内容を相手(Aさん・Bさん・Cさん)ごとに記録し、事実と解釈を分けて残せる
前回(2-2)では、クライアント役の織田さんにヒアリングしてゴール定義シートを作りました。今回は、リフトを実際に使う人と使いたい人にインタビューします。仕上げる成果物は、相手ごとのインタビュー記録の1点です。
織田さんは新しい若い人にも来てほしいと話していました。ただそれはオーナー側の願望で、実際にリフトへ足を運ぶ人の困りごととは違うかもしれません。作り手やオーナーの想像だけで予約サービスを設計すると、使う人の実感とずれたものができあがります。この章でやるのは、実際に使う人と使いたい人に直接会い、どう思うかという意見ではなく、どう予約してどこで困ったのかという行動と理由を引き出すことです。欲しい答えへ誘導せず、過去の実体験を語ってもらい、聞いた内容は相手(Aさん・Bさん・Cさん)ごとに分けて記録に残します。一人の声だけで決めず、後から複数の声を突き合わせられる形にする、その聞き方と残し方を身につけます。
インタビューを設計する
良いインタビューは、その場の即興ではなく事前の設計で決まります。まず目的を決め、質問ガイドを用意しましょう。
まず知りたいことを1文で決める
目的があいまいだと、質問が散らかって時間だけ使ってしまいます。前回のゴール定義シートを見返し、ユーザー側で知りたいことを1文にします。リフトを予約するとき、どの場面で、なぜ困るのかを知りたい、のように言い切れる形にしておきます。
質問ガイドは台本ではなく地図
用意したオープンな問いを軸にしつつ、相手の答えに応じてその場で問いを足す進め方を半構造化と呼びます。これがUXインタビューの標準です。ガイドを一字一句読み上げると会話が止まり、本音が出にくくなります。
先に決めるのは、知りたいこと(行き先)と、良いオープンな問いを数個だけです。そこへ至る道順は、相手の話に合わせてその場で選びます。地図を持って歩くように進めましょう。
オープンな問いから始める(ファネル)
質問は、広いオープンな問いから始め、後半でクローズドな問いに絞ります。この広から狭への流れをファネルと呼びます。序盤からはい・いいえで聞くと、思いがけない発見が生まれにくくなります。まず自由に語ってもらい、事実の確認は後半に回しましょう。手段から先に決めず、知りたいことに合う進め方を選べると、クライアントへの提案にも説得力が出ます。
問いかけ技術と5Whysで深掘りする
表面の答えで止めず、その裏にある動機や本当の課題まで掘り下げます。掘り下げの前に、答えをゆがめない聞き方を押さえましょう。
誘導質問と二重質問を避ける
聞き方しだいで、返ってくる答えの質は大きく変わります。避けたいのは、答えを一方向へ寄せてしまう聞き方です。
- この予約画面、分かりやすいですよね?
- 予約が面倒で、使いにくいですよね?
- 予約のとき、どこで手が止まりましたか?
- 最近、予約で困った場面を教えてください
「この予約画面、分かりやすいですよね?」のような誘導質問は、聞き手の評価をなぞらせ、本心でない同意を生みます。複数を一度に聞く二重質問も、どの問いへの答えか分からなくなります。質問は評価を含めず、1つずつに分けて聞きましょう。
実感は実体験から引き出す
「もし〇〇ならどうしますか」という仮定の質問には、思い込みが混じりやすくなります。「最近、予約したときのことを順を追って教えてください」と過去の実体験を語ってもらうと、行動にもとづく確かな手がかりが得られます。意見ではなく、実際にあった出来事を話してもらいましょう。
実感は、意見を尋ねても出てきません。具体的な場面を思い出してもらうと、そのときの困りごとや気持ちが自然とにじみ出ます。いつ・どこで・何をしたのかを、順を追って語ってもらいましょう。
5Whysで動機と真因まで掘る
5Whysは、なぜをやさしく繰り返して、表面の事象から根本の理由へたどる技法です。詰問口調にならないよう、相手の言葉を受けとめてから次のなぜを尋ねます。予約が面倒という声も、なぜを重ねると、指導中で電話に出られない、折り返しの時間が読めない、といった具体的な理由が見えてきます。真因まで掘れれば、直すべきは予約画面ではなく空き枠の見せ方だった、というように設計の的を絞れます。
聞いた内容を記録する
集めた声は、後の工程で使う大切な原材料です。後から追える形で残すことが、記録の目的です。
相手ごとに分けて記録する
インタビューは、Aさん・Bさん・Cさんごとに分けて記録します。それぞれのログに案件名と日付を添え、相手が実際に言ったこと(事実)と、そこから自分が考えたこと(解釈)は分けて書いておきます。相手ごとに分かれていれば、複数の人の声を後から突き合わせて共通点を探せます。なお、本来の実務では、Google Meet などの文字起こし(自動キャプション)機能を使って会話を自動で記録するのが一般的です。全文を手で書き起こす必要はありません。
- インタビュアー:最近予約したときのことを、順を追って教えてください。
- ユーザーA:仕事帰りにLINEしたんですが、返事が翌日で…。
- インタビュアー:そのとき、どう感じましたか?
- ユーザーA:空いてるか分からず、予定を決められなくて不安でした。
- LINEの返事が翌日だった
- 空き状況が見えず、予定を決められない
その場で要約してしまうと、後で共通点や違いを追えなくなります。まずは発言をそのまま残し、整理は後からおこないます。AIとのやり取りは文字で残るので、そのままコピーして整えるだけで記録になります。
事実と解釈を分けて書く
記録では、相手が実際に言ったこと・したこと(事実)と、そこから自分が考えたこと(解釈)を分けて書きます。事実に解釈を混ぜると、後で思い込みだけが独り歩きします。この記録が、競合UX分析(2-4)やペルソナ・ジャーニーマップ(2-5)の土台になります。事実と解釈を分けておけば、後でコーチにその解釈の根拠はどの発言かと問われても、元の発言をすぐ示せます。
演習:Gem②(複数ペルソナ)にインタビューする
ここまでの設計・深掘り・記録を、通し課題のリフトで実際にやってみます。相手役は、下のボタンから開く設定済みのAI(Gem② ユーザー役)が演じます。
ユーザー役(Gem②)は、Aさん・Bさん・Cさんの3ペルソナを演じ分けます。下のボタンから開き、演じてほしい人を冒頭で指定してください。ペルソナごとに別のチャットで開くと、人物像が混ざりません。
設定済みのGemが開きます。冒頭で A・B・C の誰を演じるか指定し、ペルソナごとに別チャットで(Googleアカウントのログインが必要)。
実在する個人が特定できる情報や、業務上の機密は入力しないこと。AIが演じるユーザーは、実在ユーザーの代わりではありません。
3人のペルソナ(Aさん・Bさん・Cさん)それぞれにインタビューし、相手ごとに分けたインタビュー記録を作ります。
ステップ1:質問ガイドを用意する
- 前回のゴール定義シートを見返し、ユーザー側で今いちばん知りたいことを1文で書き出す
- オープンな問いを3つ以上そろえる(序盤のファネル用。予約の実体験を順に語らせる問いを含める)
ステップ2:3ペルソナにインタビューする
- Gemとの対話は、音声入力を活用して実際の会話のように進める
- Gem②を、ペルソナごとに別のチャットで開く(AさんはAさん用のチャット、というように分ける)
- チャットの冒頭で、演じてほしい人を指定する(「Aさんでお願いします」のように伝えると、その人物になりきって答えてくれる)
- ファネルで広から狭へ進め、誘導質問・二重質問を避ける
- 一巡したら振り返り、気になった点に5Whysで追加の質問を投げる
ステップ3:記録する
- やり取りを、Aさん・Bさん・Cさんごとに分けて残す(案件名・日付も添える)
- 相手が言ったこと(事実)と、そこで気づいたこと(解釈)を分けて書く
- 実務では、Google Meet などの文字起こし機能で会話をそのまま記録するのが一般的(全文を手で書き起こす必要はない)
AIが演じるユーザーは、学習した傾向から作られた応答で、実在の一次データではありません。この演習は設計・深掘り・記録の型を反復して身につける場です。実務では必ず実ユーザーへの調査をおこないます。インタビューの妥当性は、最後にコーチが評価します。
完了条件(作成物:インタビュー記録)
- 質問ガイド(オープン質問を3つ以上含む)
- Aさん・Bさん・Cさん各1本のインタビュー記録(5Whysの深掘りを1か所以上含む)
- 事実と解釈を分けて書いたメモ
- AI活用メモ:どこをAIに任せ(ペルソナ役)、どこを自分(受講生)が判断したか(質問設計・深掘りの方向・解釈)を2〜3行で書く
進め方のヒント
- 誘導せず、最近の具体的な場面を語らせて、行動から引き出す
- 3人の声を並べて、共通する困りごとと、その人だけの声を見分ける意識を持つ
- スマホやPCの音声入力で、実際に声に出して対話すると、本番のインタビューに近い練習になる
実務でも、案件が始まったら、ユーザーに聞いて記録を残すこの流れをたどります。今日つくったインタビュー記録は、次の競合UX分析(2-4)と、ペルソナ・ジャーニーマップ(2-5)の出発点になります。一人の声で決めず、複数の声を突き合わせる準備がここで整います。