第5章
プレゼンテーションと提出 — 設計判断の根拠を語る資料にまとめて出す
レッスン 5-3 修了制作 ⏱ 所要時間:約180分
GOAL
このレッスンのゴール
⏱ 約180分
  • プレゼンで語るべきものが、画面の見た目ではなく設計判断の根拠(誰のため・何を・どう確かめて直したか)だと説明できる
  • 主要な設計判断を、根拠→結論の順で1判断1枚に整理し、リサーチから改善までのストーリー順に並べられる
  • 提出前のセルフチェックリストで自分で点検し、直したうえでプレゼン資料を提出できる
通し課題

前回(5-2)では、行動データの読解を踏まえて、リリース後の改善提案書を作りました。今回は、リサーチから改善までの成果物一式を、なぜこう設計したかが伝わるプレゼン資料にまとめ、提出します。仕上げる成果物はプレゼン資料で、これが修了制作一式の締めとなり、ルーブリックの評価対象になります。

ここまで、リフトの案件で、織田さんへのヒアリングから始めて、ユーザーインタビュー、要件と価値の定義、情報設計とUIデザイン、プロトタイプでの検証、テスト結果をふまえた改善、そしてリリース後の改善提案までを進めてきました。修了制作の最後にやるのは、その一連の成果を、なぜこう設計したのかが相手に伝わる1つのプレゼン資料にまとめて提出することです。ここで問われるのは画面の美しさではなく、誰のために・何を・どう確かめて直したのかという設計判断の根拠を、順序立てて語れるかどうかです。このレッスンでは、根拠→結論で1枚ずつ組み立て、リサーチから改善までのストーリー順に並べ、提出前にセルフチェックリストで自分で点検してから出す、という手順で進めます。

なぜ根拠を語るプレゼンにするのか

修了制作のプレゼンは、完成した画面を見せる発表会ではありません。相手が知りたいのは、その画面がなぜその形になったのか、という判断の理由です。

語るべき根拠は、これまでの工程がそのまま材料になります。誰のために作ったか(リサーチ)、何をどんな価値として届けるか(要件・価値定義)、なぜこの構造と画面にしたか(情報設計・UIデザイン)、どう確かめてどう直したか(検証・改善)。この流れで説明できれば、聞き手はあなたの設計を理解し、納得できます。

1
誰のために
リサーチ・ペルソナ
2
何を
要件定義
3
どんな価値
価値定義
4
どう設計
情報設計・UIデザイン
5
どう確かめた
プロトタイプ・テスト
6
どう直す・続ける
改善・改善提案
図:プレゼンの背骨となる6つの問い。完成画面の紹介ではなく、この順で設計判断の根拠を語る。各ブロックの下は根拠となる成果物。
✓ Point !
画面の説明で終わらせない

ここに予約ボタンを置きました、という画面の説明だけでは、なぜそうしたのかが伝わりません。その1つ手前にある、どんなユーザーのどんな困りごとに対して、その判断をしたのかまで語ると、設計の根拠になります。

この根拠を語れるかどうかは、修了評価のルーブリックでも見られます。7つの観点のうちプレゼンの観点は、設計判断の根拠を説明できているかを評価するものです。見た目の完成度ではなく、理由を語れることが問われると意識して準備しましょう。

Q
確認クイズ 1/3
リフトのプレゼン資料の1枚目に、完成した予約画面を大きく載せ、きれいに仕上げました、とだけ書きました。この資料に足りないものはどれでしょう?
正解です!
プレゼンで相手が知りたいのは、その画面がなぜその形になったかです。誰のために・何を・どう確かめて直したかの根拠を語ると、設計が伝わります。装飾や見た目の比較は、根拠の代わりにはなりません。
惜しい!
見た目を足しても、なぜその設計にしたかは伝わりません。足りないのは設計判断の根拠(B)です。誰のために・何を・どう確かめて直したかを語ることが、このプレゼンの中心になります。

設計判断を根拠→結論の1枚にまとめる

根拠を語る資料は、1つの設計判断を1枚にまとめると分かりやすくなります。1枚に情報を詰め込まず、まず根拠を示してから結論を置く順で組み立てます。

1枚の型はシンプルです。最初に根拠として、リサーチやテストで分かった事実を示します。次に結論として、その事実にもとづいてどう設計・改善したかを書きます。最後に、直したあとどうなったか、どう確かめたかを添えます。この順だと、聞き手は理由を理解してから判断を受け取れます。

1枚の並びその枚で示すこと(リフトの例)
① 根拠リサーチ・テスト・データで分かった事実(例:Aさんが予約の時間帯を選ぶ画面で、どこを押すか迷った)
② 結論その事実にもとづく設計・改善の判断(例:時間帯を大きなボタンで一覧から選べるようにした)
③ 効果直したあとどうなったか・どう確かめたか(例:再テストで、迷わず時間帯を選べた)
✓ Point !
根拠は成果物でうらづける

根拠は、好みや思いつきではなく、これまで作った成果物とひもづけます。インタビュー記録・ペルソナ・要件定義書・テスト記録・データ読解のどれを根拠にしたかを示すと、判断に説得力が出ます。うらづけのない主張は、憶測に聞こえてしまいます。

どの判断を1枚にするかは、工程ごとに主要なものを拾います。ペルソナから決めたこと、要件と価値から決めたこと、情報設計とUIで決めたこと、検証と改善で直したこと。すべてを載せる必要はなく、伝えたい要点にしぼって選びます。

Q
確認クイズ 2/3
予約画面のボタンを大きくした判断を1枚にまとめます。根拠→結論の型として、最も適した書き方はどれでしょう?
正解です!
Bは、テストで分かった事実(根拠)→だからこう直した(結論)→確かめた効果、の順になっています。好み(A)や結論だけ(C)、他社に合わせただけ(D)では、ユーザーにもとづく根拠になりません。
惜しい!
好みや他社基準、結論だけでは、なぜその判断が正しいかが伝わりません。テストで分かった事実を根拠に置き、そこから結論へつなぐBが、根拠→結論の型です。

リサーチから改善までのストーリー順に並べる

1枚ずつ作れたら、次は並べ方です。バラバラに見せるのではなく、リサーチから改善までの流れに沿って並べると、1本の物語として伝わります。

並べる順は、これまで進めてきた工程と同じです。背景と誰のため(リサーチ・ペルソナ)から始め、何を・どんな価値か(要件・価値定義)、どう設計したか(情報設計・UIデザイン)、どう確かめて直したか(プロトタイプ・検証・改善)、これからどう続けるか(改善提案)へとつなぎます。聞き手が次に知りたくなる順に並んでいるかを、通して読み返して確かめます。

タイトル:案件名と一番伝えたい要点
1
背景と誰のため リサーチ・ペルソナ
2
何を・どんな価値 要件定義・価値定義
3
どう設計したか 情報設計・WF・UI・スタイルガイド
4
どう確かめて直したか プロトタイプ・テスト・改善
5
これからどう続けるか 改善提案
まとめ:設計判断の要点を1本の物語で締める
図:プレゼン資料の章立て。リサーチ→要件→価値→設計→検証→改善のストーリー順に上から並べる。各段の右は見せる成果物。
✓ Point !
伝える相手で要点が変わる

同じ成果物でも、クライアントの織田さんに説明するのか、講師に成果を示すのかで、強調する要点は変わります。相手を先に決め、一番伝えたいことを1つにしぼると、どの根拠を厚く語るかが決まります。

並べ終えたら、資料が根拠→結論の流れで、リサーチから改善までつながっているかを最後に確認します。この一貫した流れが、あなたの設計判断を1本の物語として伝えます。

Q
確認クイズ 3/3
リフトのプレゼン資料を並べます。最初に置く内容として最も適切なのはどれでしょう。前のセクションで学んだ根拠の考え方も思い出してください。
正解です!
誰のためかという根拠を先に示すと、聞き手はその後の設計や改善を理由とともに受け取れます。完成画面や改善提案から始めると、判断の前提が抜けたまま結論だけを聞くことになります。ストーリーはリサーチから始めます。
惜しい!
完成画面(A)やテストの詳細(B)、改善提案(D)から始めると、誰のためという前提が抜けます。根拠を先に置くという考え方どおり、背景と誰のため(C)から始めるのがストーリー順です。

演習:プレゼン資料を作り、セルフチェックして提出する

ここからが修了制作の締めです。これまでの成果物一式を、根拠→結論の1枚を積み重ね、リサーチから改善までのストーリー順に並べたプレゼン資料にまとめます。提出の前には、下のセルフチェックリストで、抜けや弱いところがないかを自分で点検してから出します。

提出前に自分で確認する(セルフチェック)

資料が仕上がったら、提出の前に次の5つを自分で確認します。1つでも「できていない」があれば、その場で直してから提出しましょう。

  • 誰のため・何を・なぜ作ったのかが、資料の最初のほうで相手に伝わるか
  • 各設計判断が、成果物(リサーチ・要件・UI・テスト)で裏づけられているか
  • リサーチ→要件→価値→設計→検証→改善のストーリー順に並んでいるか
  • 専門用語を、伝える相手に合わせて分かる言葉に言い換えているか
  • 想定した時間内(発表の分数)に収まる分量になっているか
! 注意
セルフチェックは自己点検。評価と合否は講師

このセルフチェックは、提出前に自分で抜けや弱いところに気づくための自己点検です。修了評価とルーブリックの採点、合否の判断は、必ず講師が行います。チェックで気づいた点のうち、どこを直すかを決めるのはあなた自身です。

演習 5-3
📋 事前準備
  • 5-1で統合した修了制作の完成一式と、5-2の改善提案書を、手元に開いておく
  • プレゼン資料を作るツールを用意する(Googleスライドやnotionがおすすめ。使い慣れた他のツールでも構いません)

STEP 1:伝える相手と要点を決める

  • 誰に見せる資料かを決める(クライアントの織田さんに説明する想定か、講師に成果を示す想定か)
  • 一番伝えたい要点を1つにしぼる(例:予約の取りづらさを、誰のために・どう解決したか)

STEP 2:各設計判断を根拠→結論で1枚ずつ作る

  • 主要な設計判断を工程ごとに洗い出す(ペルソナ→要件・価値→情報設計・UI→検証・改善)
  • 1判断を1枚にし、根拠(リサーチ・テストで分かった事実)→結論(だからこう設計・改善した)→効果の順で書く
  • 根拠は憶測でなく、インタビュー記録・要件定義書・テスト記録・データ読解などの成果物とひもづける

STEP 3:リサーチから改善までのストーリー順に並べる

  • タイトル→背景と誰のため→何を・どんな価値→どう設計→どう確かめて直したか→これからどう続けるか→まとめ、の順に並べる
  • 聞き手が次に知りたい順になっているか、通して読み返して整える

STEP 4:セルフチェックリストで点検し、直して提出する

  • 上の提出前のセルフチェックの5項目を、資料と各成果物を見ながら1つずつ確認する
  • 「できていない」項目があれば、その場で直す
  • 何を直し、何を今回は見送るかは自分で判断して修正する
  • 整ったら提出する(評価と合否は講師が行う)

完了条件(提出物)

この成果物は、章の最後でまとめてコーチに提出しましょう。

  • プレゼン資料(主要な設計判断を根拠→結論で示し、リサーチから改善までのストーリー順に並べたもの)

本番で人に説明する前に、このセルフチェックを1回はさむと、根拠の抜けや、結論だけになっている箇所に自分で気づけます。自分の目で通して読み返せば、納得いくまで何度でも点検し直せます。

よくあるつまずき Q&A
スライドは何枚くらいにすればよいですか?
枚数の決まりはありません。目安は、1つの設計判断を1枚にすることです。枚数を増やすより、根拠→結論が1枚で伝わっているか、リサーチから改善までの流れがつながっているかを優先してください。
見た目のデザインを凝ったほうが評価は上がりますか?
プレゼンの観点で見られるのは、設計判断の根拠を説明できているかです。資料の装飾に時間をかけるより、なぜその設計にしたかが根拠とともに伝わる構成にする方が効きます。読みやすさが保てていれば十分です。
CHECK
理解度チェック
プレゼンで語るべきものが何かを説明できる
語るのは完成画面の見た目ではなく、設計判断の根拠です。誰のために・何を・どう確かめて直したかを、リサーチから改善までの工程を材料に説明します。修了評価のプレゼンの観点も、設計判断の根拠を説明できているかを見ています。
設計判断を根拠→結論の1枚にまとめられる
1判断を1枚にし、まず根拠(リサーチやテストで分かった事実)を示し、次に結論(だからこう設計・改善した)、最後に効果を添えます。根拠は好みや思いつきでなく、インタビュー記録やテスト記録などの成果物とひもづけるのがポイントでした。
ストーリー順に並べ、セルフチェックしてから提出する流れを説明できる
背景と誰のため→何を・どんな価値→どう設計→どう確かめて直したか→これからどう続けるか、の順に並べます。提出前はセルフチェックリストの5項目で自分で点検し、直すところを自分で判断して修正してから提出します。評価と合否は講師が行います。